虹の贈り物

 「さてと…。」
 ルーリはあたりを見回し、座るのに手ごろな岩を探した。いつもは草原に寝転んで1時間ほど時間をつぶすことにしていたが、辺境の少年といえどもずぶぬれの草原に寝転ぶのはさすがにはばかられた。

 ほどなくルーリは手ごろな岩を見つけ、無造作に腰掛けた。岩は雨に濡れていたが、ルーリはお尻が濡れるのを気にしなかった。

 ルーリはかなり着込んだ薄手のシャツのポケットからおもむろに小さな銀色のカードを取り出した。そのカードは、ルーリのやや古ぼけたシャツや色褪せた黒っぽいズボンと対照的に全くの新品のように磨かれたなめらかな表面をしており、また雨上がりのすがすがしい草原の自然の景色にもまったくそぐわないものであった。

 そのカードは太陽の光を反射して虹色に輝いていた。「空の虹とおんなじだ。」ルーリは、霧が晴れていくにつれだんだん消えかかっている空の虹とカードの光沢を交互に見比べながら微笑んだ。
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