虹の贈り物

 「アカバ。人だ。」
 イリウスはエアロックの扉が1センチも開かないうちに、開きかけた扉のすき間に口を近づけてアカバに向かって大声で叫んだ。

 「なにぃ?」
 アカバは相変わらず頭を抱えて考えこんでいたが、イリウスの言葉にまさかそんなことはなかろうと思い聞き返した。

 「なんだって?」
 イリウスは、無駄とわかっていながらもエアロックの扉を手で押開けながら繰り返した。
 「外に少年がいるんだ。話しをした。とにかく、すぐに来てくれ。」

 アカバは、植民星CDF294の大きめの重力の下にしては信じられないくらいの速度で立ち上がった。もし重たい宇宙服を着ていなければ、操縦席から1メートルぐらい飛び上がっていただろう。

 アカバは無理に立ち上がったために足が痛んだが、そんなことにはかまわずエアロックへ駆け込んだ。先程から、アカバの頭の中はいくつもの解決策が堂々巡りしており、考えこんでいるようで実は何も考えていない状態となっていたので、この出来事は堂々巡りを断ち切ることができる唯一の可能性であるかも知れなかった。

 アカバはエアロックへ駆け込むや否や、走ったせいでせき込みつつも、エアロックの内扉を閉め、外扉の解除レバーを無造作に操作した。アカバはハアハアと息を切らせながら、イリウスに尋ねた。
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