虹の贈り物

 「しかし。」
 アカバはまだ決断がつかなかった。イリウスはあきらめ顔で言った。
 「わかったよ。じっくり考えてくれ。おまえが船長なんだから。俺は外の点検をしてくるよ。」

 イリウスはすでに機関士席から立ち上がり、ヘルメットを外していた。そして、外部温度計を確認し、外が平常な温度になっていることを確認すると、母船内の重力よりやや大きい重力に多少ふらふらしながらエアロックの方へと歩いて行った。

 「すまない。気をつけてな。」
 アカバはすでにエアロックへ向かう通路に姿を消したイリウスに声をかけた。イリウスが立ち去った直後、アカバは頭を抱えた。アカバは、シャトルの着陸がこんなにシビアであることは想像していなかった。

 今のような芸当は二度とできないということをほとんど確信しつつあった。かといって、シャトルから降りて歩いて首都を探すなどできる話ではないし、アカバにしては珍しく頭の中は真っ白になっていた。
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