虹の贈り物

 アカバは、船長として決断をする必要があった。しかしその決断には、母船の1000名の乗組員の命がかかっており、簡単にできるものではなかった。

 アカバは葛藤した。今、離陸して空から都市を見つけ出さないと、危険を冒して母船からこの植民星CDF294に来た甲斐がない。
 しかし、コンピューターの全く使えない状態で、今度離陸して再度母船に向かって離陸できるかどうか、いやそれ以前にまた無事に着陸できるかどうか。母船まで燃料がもつかどうか。様々な不安が胸をよぎった。

 いくらでも失敗のシナリオは描けたが、成功のシナリオは描けなかった。
 「そうだな。」
 アカバは場を持たせるために口を開いたが、後の言葉は何も続かなかった。
 「アカバ、何を考えているんだ。考えても仕方ないだろう。」

 イリウスはアカバの煮え切らない態度にじれったい思いが隠せなかった。アカバが慎重派であるのに対して、イリウスはどちらかと言えば行動派と言える。考えるよりもまず動くというのがイリウスのポリシーであった。

 それは変化の乏しい移民用大型航宙船での活動の中でも遺憾なく発揮されていた。これに対し、アカバは、行動は遅いが判断が正確であった。このように各々の長所が認められて今回の志願が通ったのだった。
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