虹の贈り物

 少年の名はルーリ。9歳。
 この植民星CDF294はまだ植民が始まってから100年も経っておらず、比較的大きな都市であっても人々は快適と呼べるには程遠い生活を強いられていた。

 この辺境の地にあってはなおさらであり、産業や文明といったものは皆無で、人々は自然と共に暮らしていた。少年ルーリの住む村はこの山あいからなだらかな斜面を3時間ほど下った谷あいにある。

 村には電気もなければ水道もない。村からかなり離れた町へ続く道も荷車がやっと通れる程度のものである。もちろん店など一軒もなく、ルーリの家族も他の人々も牧畜と農業で自給自足の生活を営んでいた。

 町で市が開かれるとき、友達と一緒に荷車に乗ってでこぼこ道を通って町に遊びに行くが子供達にとっての、いや村人にとっても唯一の娯楽であった。
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