虹の贈り物

 しかしながら、フリーズ発生から3ヵ月、乗務員はまだ生きていた。それは宇宙空間を慣性航宙するこのタイプの移民用大型航宙船にあってはほとんど奇蹟でさえあった。

 子供を除いて乗務員はすべて、コンピューター代わりとなった。何百ものパラメータを手計算し、あるいは勘と経験で判断し、何とか最低限の生命維持システムと食料生産のみを維持していた。教育や娯楽、快適というようなものは全く無視され、生き延びることのみに全力が注がれていた。

 しかしながら、それも限界に近づいていた。乗務員の疲労は極限に達し、いつ致命的誤りが起きてもおかしくなかったし、だれかが発狂してもおかしくなかった。

 そんな追い詰められた状況で、大型航宙船は植民星CDF294に最接近しようとしてしたのだ。これは最後のチャンスだった。しかも、そのチャンスは、大型航宙船が接近し、離脱していくわずか数十時間しかなかった。そして生死を賭けたいくつかの案が検討された。
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