虹の贈り物

 シャトルの使命は、母船である移民用大型航宙船を救うことであった。母星を出発して70年。約1000名の乗務員を乗せた世代型植民船は、2回の世代交代を経て目的地へ到達する。

 その目的地までまで残り30年、出発当時の第1世代の大人たちはすでに死に絶え、その子供たち、即ち出発した母星の記憶のほとんどない第2世代もそろそろ第3の世代へ主導権を譲り渡しつつあるころだった。

 100年の長い行程の半ばにおいて、大型航宙船は平安無事に航宙しているかに思えた。しかし、完全とも思える航宙は突然破綻を来した。それは、大型航宙船の航宙システム、生命維持システム、食料生産システム、通信システムなどすべてのシステムを管理する中央コンピュータのフリーズであった。

 何重ものフェールセーフ機構、バックアップシステム、補完システムがあるにもかかわらず、そのフリーズは起こった。バグ、ウイルス、オーバーロードなど、原因はいくつか考えられたが、明確にはならなかった。

 そして何よりも最悪なことに、そのフリーズはすべてのバックアッププログラムをクリアーし、最後に動作中の自分自身をクリアーしてしまった。そういう意味ではフリーズというより、膨大な管理システムのイニシャライズということもできた。

 そしてすべての管理システムが動作しないということは、即ち航宙失敗、そしてほとんどの場合全滅を意味していた。
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