虹の贈り物

 ルーリが見つめる上空には、ある使命を帯びた人々が必死の努力を続けていた。
 「アカバ、16番姿勢制御バーニア沈黙。3番逆噴射モーター出力低下。いや、2番もだめだ。速度が殺せない。」

 シャトルの機関士であるイリウスはエンジンと空気を切り裂く騒音の充満したコクピットで、宇宙服のヘルメットの内部のマイクに悲痛な声で叫んだ。

 惑星探査用でもあり、また荷物運搬用でもあるシャトルは、言わば瀕死の状態であった。そもそも、母船である長さ数キロに及ぶ移民用大型航宙船から発進した時点で、着陸用のコンピュータは動作不能の状態であったのだ。それが、手計算と目視と勘でまがりなりにも、ほぼ正常な進入角度と速度をもって大気圏突入できただけでもそれは奇蹟に近かった。

 イリウスと同じ宇宙服を着込んだ船長のアカバは、汗のにじんだ手で制御捍を握り締め、高度計と角度計と理想着陸時の高度や速度などの数字の並んだノートを交互に見比べながら、イリウスを励ますように大きな声で指示を与えた。
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