モニュメント
Neo Lunatics 35号 (1982年5月22日発行) 掲載
モニュメント
-修.
T氏は激しく扉を叩く音に目を覚ました。T氏はまだ眠たそうにあくびをし、けだるそうに答えた。
「何か用か ?」
「課長、大変です。会社が倒産しかかっているそうです。たった今報告が入りました。」
「えっ、・・・ハハハ、こんな朝早くから冗談はやめてくれないか。」
外の男は突然扉を開けた。まだ三十にもならない若い社員である。
「こんなことが冗談を言えますか。僕たちはこの惑星に置いてけぼりになるんですよ。どうするつもりです。」
T氏はやっとことの重大さに気付き、表情をこわばらせた。若い社員はかまわず続けた。
「だいたい、この仕事は初めから失敗することがわかってたんだ。いくら旅行ブームの今世でも、こんな辺境の、あの柱のほかに見る物もない惑星にだれが来るもんですか。こんな観光コースにカネをつぎ込んだりするから会社がつぶれるんだ。さあ、ぼくらはどうなるのか教えてもらいましょうか。」
T氏は返す言葉もなくうつむいていた。T氏は若い社員とは、ある旅行会社の調査員である。彼らは、このモニュメントがそそり立つ惑星に小型基地とともに降ろされ、気候、風土、そして観光性を調べていた。そのモニュメントはジオイドに対して垂直に立つ、一辺500mの六角形の柱であった。その高さは6000mをゆうに超え、表面は黒っぽい物質でつくられていた。
その物質には面白い特徴があった。それは、手で触れても何となく温かい感じのするただの平面だが、金属を表面に当てると何の抵抗もなく吸収されていき、二度と外へ取り出すことはできなかった。このため、彼らは相当額の測定器や資料を失っていた。
モニュメント
-修.
T氏は激しく扉を叩く音に目を覚ました。T氏はまだ眠たそうにあくびをし、けだるそうに答えた。
「何か用か ?」
「課長、大変です。会社が倒産しかかっているそうです。たった今報告が入りました。」
「えっ、・・・ハハハ、こんな朝早くから冗談はやめてくれないか。」
外の男は突然扉を開けた。まだ三十にもならない若い社員である。
「こんなことが冗談を言えますか。僕たちはこの惑星に置いてけぼりになるんですよ。どうするつもりです。」
T氏はやっとことの重大さに気付き、表情をこわばらせた。若い社員はかまわず続けた。
「だいたい、この仕事は初めから失敗することがわかってたんだ。いくら旅行ブームの今世でも、こんな辺境の、あの柱のほかに見る物もない惑星にだれが来るもんですか。こんな観光コースにカネをつぎ込んだりするから会社がつぶれるんだ。さあ、ぼくらはどうなるのか教えてもらいましょうか。」
T氏は返す言葉もなくうつむいていた。T氏は若い社員とは、ある旅行会社の調査員である。彼らは、このモニュメントがそそり立つ惑星に小型基地とともに降ろされ、気候、風土、そして観光性を調べていた。そのモニュメントはジオイドに対して垂直に立つ、一辺500mの六角形の柱であった。その高さは6000mをゆうに超え、表面は黒っぽい物質でつくられていた。
その物質には面白い特徴があった。それは、手で触れても何となく温かい感じのするただの平面だが、金属を表面に当てると何の抵抗もなく吸収されていき、二度と外へ取り出すことはできなかった。このため、彼らは相当額の測定器や資料を失っていた。
1/2ページ