真夏の生徒たちのお楽しみである夏休みこの劉封のクラスの教室だけ解放されていた。

「はい、そこまで。授業(補修)始めるよ〜
学園ドラマよろしくガラッと引き戸をあけて入ってきた教師の伊籍、犬飼○丈似の所謂かわいいイケメン教師だ。

「え〜っ、もう嫌なのだが…
「松屋に行きたい
感情の窺い知れない瞳をこちらに向ける弟の劉禅と据わった目で牛丼が食いたいというその義兄劉封。

夏の集中補習授業を受ける兄弟は開口一番これである。

やっぱ勉強好きじゃないから安定のバカなんだろうなーと自然と伊籍は思ってしまった。
「私はこれ(教員)でこれ(お金のジェスチャー)貰ってるから。収益貰ってるから。
あけすけな事をつい言ってしまうのもご愛嬌だがそれを気にしないのがこの兄弟のある意味強さか。

「なんで夏休みにこんなこと」
とても不満げな劉封のぼやきを伊籍は聞き逃さなかった、暗愚は暗愚だが大人しく聞いているようにはみえる。
「あんたらがバカだからいけないんでしょうよ」
部活にばかり打ち込んで夏休みまでに最低限学力つけてなかったあんたが悪いとあっさりフィニッシュ。
暗愚は部活もしてないから本当に大丈夫かとちょっとだけ心配になる。
「反論はできない…
「こうも正面切ってバカと言われると頭にくるものがある。」
兄弟のお言葉だ。

クソ生意気だなーと自分の置かれた状況を理解させてやるためにある人物を引き合いに出した。
「それともあの怖ーい法正先生に個別授業して欲しかったのであれば先生は止めないよ劉封お兄ちゃん？
「はい、出席番号一番劉封伯瑠です。」
「よろしい、では授業の前に小テスト始めまーす。

「書ききれてないのだが」
「まだ待ってくれ！もう気持ち3秒だけ」
「ダメでーす終わりでーす！」
小だけどテストだよーっとまだ粘るバカ兄弟から無理くり答案を回収した。
案の定散々だったので速攻で授業に移る、一から授業し直した方が早いと伊籍は判断したのだ。

「全く分からん…」
「私もだ義兄上…」
「どっちも重症だね〜…」

伊籍の脳裏にあの浅黒い肌でおおよそ教師とはかけ離れたなりの法正がふと過ぎる。
法正先生にはお義兄ちゃんの主に学力面での尻叩きを頑張ってもらおうかななどと思ったわけで。

「今日できなくてもお義父さん権限で法正センセーを家庭教師につけてもいいのよ？
「それは嫌だマジで嫌だガチで嫌なので頑張る見捨てないで伊籍先生後生だから」

［保健体育だけはやたら平均以上取ってるんだよねぇ劉封くんは、悪党な先生のおかげかな］
内心、期末テストの結果を見返した伊籍は爆笑したい衝動にかられるのであった。

「どうでした？劉封の様子は」
「あんたの名前だした途端に若干マシになったよね」
「そうでしたか、ですが次から補習俺が変わりましょうか」
にんまりと豹のような笑みを浮かべたこっそり職員室にやってきた法正と雑談を交わす。