未だ梅雨が明けていない七月の事、劉封の不快感指数は天元突破である。

雨もそうだが不快感指数を底上げする原因は来月に控えた夏フェスである。
A-n○tionまたはイナズ○ロックフェスなどアレを思い浮かべてくれれば分かりやすい同じ事務所の歌手やタレントを集めてやるアレである。
事務所代表である糜竺が企画した際に劉封はまず断った、なぜクソ暑い中そんなことしなきゃならないんだと200枚程度のオブラートに包んでそれを伝わったはずだ。
「えー、俺はまだ撮影とかクランクアップすらしてない映画の撮影が…。」

「いいんじゃないですか？まだ時間はありますし一曲だけ参加してみてはどうですか」
そのはずが同伴してきたマネージャーの法正が片方の唇だけで笑いながら承諾してしまった。

「おいおい…」
不服そうな劉封をしたで待たせていた馬超の車に押し込み次の現場に向かう。

そのころ会議室で事務所所属のバンドたちがセットリストで四苦八苦していた。
「セトリ…セトリとは一体何なんだ？」
セットリストを煮詰めに煮詰め練りに練ってきたベース担当かつバンドリーダー黄権が壊れ出した。
「ゲシュタルト崩壊してんじゃねーか！」
バンドメンバーの中でギターを背負った若手の張苞が嘆く。


何食わぬ顔してスタジオに連絡したり忙しいであろう同じく後部座席に座るマネージャーとも呼びたくもないクソ野郎を視界に入れないようにする。

［本当は俺だってバンドで心置きなく馬鹿騒ぎしたかったんだがこれじゃあなあなあ］
よほど俺の事を目玉商品かなんかだと思っているマネージャーにギリギリで回せるスケジュールを組まれた絶世の青年が少しの晴れ間を照りつけるアスファルトを睨んだ。