【大学生時代のオーナー＋大学生時代の総支配人←←←大学生時代のメンヘラ婚約者】


「あ、あの、おはようございます」

サッと挨拶だけをして、俯いて立ち去っていく、絵に書いたようなお嬢様に。隣でiPhoneを弄りながら、昨日合コンで知り合った女に返信でもしているだろう後輩が、興味も無さげに聞いてきた。

「誰だ、伯瑠。知り合いか？」
「…多分オレが覚えていないだけで、講義とか結構被ってるんじゃねえかな？ それで、声をかけてきたとか？」
「ふうん…。可愛いけど、オレはああ言う世間知らず過ぎるのも、苦手かな」
「話が、噛み合わなさそうだよな…。雲の上の！人ってのも」
「見るからに処女だろ、アレ」
「おい、健(公然)…」
「面倒臭そうなお嬢様より、慣れているヤリマンの方がまだマシかな。まあ、許嫁がいる伯瑠先輩には分からないか」
「お前、やめろって」
品がねえだろ、と苦言を呈せば。はいはいと、ニタニタ笑ってiPhoneから視線を逸らさない。二浪して入ってきた苦学生と言う設定を、コイツは自分から破っている気がしてならなかった。本当は美容学校を卒業して、そのまま美容師になりたかったと、本人が言うように。洒落ているけどチャラついた格好と髪型で名門大学に通うコイツは、入学当初から注目の的だった。
軽口ばかり叩いているヤツだったが、いつもニコニコと愛想だけは良いので。周囲からは、健(封)ちゃん健(封)ちゃんと、なんだかんだ慕われていた。
顔も男前で上背もあって、色々とセンスが良いんだから。これでとんでもなく遊び人じゃなきゃ…と、オレはそこだけが、とても残念だと感じていた。
「伯瑠、今日クラブに行かないか？ イベントやるんだと」
「クラブかぁ…。たまには、踊りに行きたいけど。劉紗と今日は、先約が有るんだよ」
「はいはい。分かったよ」
「ラブラブで羨ましいよ」と、軽口だけはまた叩いてくる。「お前も落ち着けよ」と仕方なく返すが、「あともう少しで150人達成なんだよ」と言われて。注意する気も失せた。

「今の内に少ない自由を満喫したいんだよ、オレはね」