お好みで変換してください
seacret
お名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
親父殿が亡くなり、ひと月も経たぬうちに私の母は病を患ってしまった。
目の前の病に臥せった母の色はもはや向こうが透けてしまいそうだ。
もともと色の白い人であったのだがもうこの世の人でなくなることを嫌でも確信させてくれた。
雨が桃や梅の花を散らして行く音がやけにうるさい。
この春雨がやんでしまえば母の命も終わりを告げそうで耳に入れたくない。
「母殿、加減はいかがですか?」
「いつもよりはマシですわよ。」
以前のようなハリをなくしてしまった母の声が胸を刺す。
マシなんてことなどあるか。
「もうすぐであなたの生まれた月ね」
「そうでありましたか、巷は喧騒に溢れいつまた戦が起こるか戦々恐々としてまるで忘れていました」
私は自分の生まれた月日など言われるまで忘れてしまってたよ母殿。
「あなたに渡して置かなければならないものがあるの」
母の視線を辿れば寝台のそばに上等な木でできた箱がある。
「その箱は差し上げますわ、中身は今すぐ開けてくださっても結構ですので」
「はぁ…」
あれからすぐに母は永遠の眠りについた途方もなく遠いところへそして私はあの箱をあける勇気は持ち合わせていない。
【まぁ、もう迎えにいらしたの。偏屈のくせに寂しがりやなのは相変わらずね】
親父殿がそこにいたのか、それとも母殿が夢でも観ているのかとでも思いたかった。
【あなたを置いていくことを本当に申し訳なく思います。】
[私はもう成人しておりますよ、母殿。相変わらず心配性ですね]
あの箱を開けたのは何年か経った後だった。
親父殿が首から下げていた蜘蛛の巣の首飾りと母殿がつけていた髪飾りとともに小さな竹簡ひとつ。
私はそれを広げた。
竹簡には母の癖のある文字でこう記されていた。
【生まれた時から定められた道などあるはずもない。あなたが凍える夜にはふたつの翼で暖めましょうそして眠りについて夜が明けるまで歌いましょう。息子よ、待ち続けなさい命が芽吹く季節まで。】
あれだけ根性のある母が夫の死程度で病にかかるなど今となってはわからない、だが母殿が親父殿が迎えに来たと口にしたときとても嬉しそうだったのであれで良かったのだろう。
目の前の病に臥せった母の色はもはや向こうが透けてしまいそうだ。
もともと色の白い人であったのだがもうこの世の人でなくなることを嫌でも確信させてくれた。
雨が桃や梅の花を散らして行く音がやけにうるさい。
この春雨がやんでしまえば母の命も終わりを告げそうで耳に入れたくない。
「母殿、加減はいかがですか?」
「いつもよりはマシですわよ。」
以前のようなハリをなくしてしまった母の声が胸を刺す。
マシなんてことなどあるか。
「もうすぐであなたの生まれた月ね」
「そうでありましたか、巷は喧騒に溢れいつまた戦が起こるか戦々恐々としてまるで忘れていました」
私は自分の生まれた月日など言われるまで忘れてしまってたよ母殿。
「あなたに渡して置かなければならないものがあるの」
母の視線を辿れば寝台のそばに上等な木でできた箱がある。
「その箱は差し上げますわ、中身は今すぐ開けてくださっても結構ですので」
「はぁ…」
あれからすぐに母は永遠の眠りについた途方もなく遠いところへそして私はあの箱をあける勇気は持ち合わせていない。
【まぁ、もう迎えにいらしたの。偏屈のくせに寂しがりやなのは相変わらずね】
親父殿がそこにいたのか、それとも母殿が夢でも観ているのかとでも思いたかった。
【あなたを置いていくことを本当に申し訳なく思います。】
[私はもう成人しておりますよ、母殿。相変わらず心配性ですね]
あの箱を開けたのは何年か経った後だった。
親父殿が首から下げていた蜘蛛の巣の首飾りと母殿がつけていた髪飾りとともに小さな竹簡ひとつ。
私はそれを広げた。
竹簡には母の癖のある文字でこう記されていた。
【生まれた時から定められた道などあるはずもない。あなたが凍える夜にはふたつの翼で暖めましょうそして眠りについて夜が明けるまで歌いましょう。息子よ、待ち続けなさい命が芽吹く季節まで。】
あれだけ根性のある母が夫の死程度で病にかかるなど今となってはわからない、だが母殿が親父殿が迎えに来たと口にしたときとても嬉しそうだったのであれで良かったのだろう。
1/1ページ