第一章 非日常へ

荷物が軽かったとはいえ全力で駅まで走ったからか息切れしてしまっているが、なんとか駅に着いた。

「お兄ちゃん間に合ってよかった!次の電車乗らないと学校に間に合わないからね」

「まっててくれてありがとう…」

「あ、ほら。電車きた。乗るよ」

いつもはもっと学生が乗ってるはずなのだが、今日は遅刻ぎりぎりの時間だからか学生は僕たち以外ほとんどいなかった。
座席に二人とも座ることができた。すいてるし学校にもぎりぎり間に合うから普段からこの時間に通学しようかなぁ。

僕とピチューが電車で通っている学校は初等部から高等部まである私立学園だ。
僕は今年から中等部の三年生で、ピチューは初等部の五年生。
小学生で電車通学だなんて!と思うかもしれないが、ここセントラルシティでは割と普通のことだ。

「そういえばさ、お兄ちゃんは最近流行ってるあの噂知ってる?」

ぼんやりと電車の中に貼ってある広告を眺めているとピチューが話しかけてきた。

「あの噂って?」

「知らないの?半年前くらいから噂の秘密結社SMASHの話」

秘密結社SMASH。
ここ最近セントラルシティを騒がせている謎の集団だ。
なんでも非科学的な能力を使って暴れまわっているとか、最近多発している神隠し事件と関りがあるとか言われているが詳しいことは何もわかっていない。
そもそも本当に集団であるのかどうかすら謎だ。

「でね、その秘密結社がまた行方不明になってた人を助けたらしいの!」

ピチューはこういう都市伝説みたいな噂話が好きなようで、顔を輝かせながら話している。

「その人は自分が行方不明になってた時のことは全然覚えてないんだけど、助けられた時のことだけは覚えてて、秘密結社SMASHのおかげです!っていったんだって。」

「ふーん」

「あれ?ヒーロー大好きなお兄ちゃんならこの話に興味あると思ったんだけどなぁ」

「だって助けられた時のことしか覚えてないだなんて変じゃん。秘密結社の自作自演かもしれないしそれに秘密結社ってどっちかというとヒーローより悪って感じするし」

「お兄ちゃん普段は非現実的なことばっか言ってるのにこういうときだけ夢のないこと言うんだね。あ、学校の最寄り駅着いたよ!降りなきゃ」

僕とピチューは電車から降りた。







3/16ページ
スキ