次の日、私は師範の声で目が覚めた。

「おい、いい加減おきろ」

目を開けると、鬼のような形相の師範が既に隊服をきて、立っていた。

「早く準備しねえと置いてくぞォ」

「･･･ん･･･今日も任務一緒なんですか･･･？」

「･･･」


無言を貫き通す師範に？と首を傾げると、早くしろォ･･･といい、部屋から出ていった。

ふわあと欠伸をすると、衣紋掛けにかかった鮮やかな色の羽織が目に入る。
それはこの前師範に買ってもらった羽織だった。
今日こそ！！！
私は決心し、即座に起き上がった。





実弥は玄関で草履を履き、準備をする。しかし、名前は来ない。

なにやってんだァ･･･二度寝でもしたのかァ･･･

そう思っていると名前がパタパタと音を立てて来た。


「ごめんなさい、お待たせしました」

「おせ･･･」

おせぇと言おうとしたつかの間、名前が俺の買った羽織を着ているのが一目瞭然でわかり、思わず目を見開いた。

「これすごく軽くて、でもあったかくて、可愛いし、最高です･･･！！ありがとうございます！！」

ニコリと笑う名前の笑顔は、初めて見せてくれたあの時の笑顔と変わらない。

それなのに、自分の動悸が早くなっているのを感じた。

「･･･おう」

言葉が出てこなかった。

どんどん綺麗になりやがってェ･･･そう思い口をつぐむ。

俺に隠れて怯えて、泣いてた名前は、新しく派生した虹の呼吸を使って、鬼を斬り、人を守っている。
無表情で呆然と俺についてきた名前は、もういない。

いつの間にか強くなりたいと志し、強くなっていた。

いつの間にか、人の雰囲気をよんで、すっかり笑うようになっていた。

いつの間にか、自分のことを師範と呼び、慕ってくれていた。

今の名前は、1人で寝るのを嫌がり、人の布団に紛れ込むほどの寂しがり屋で、鬼に同情するぐらい優しい女の子だ。

思わず感慨深い気持ちになり、背を向けて

「行くぞォ」

と言うと

「はい！」

と元気な声が俺の背中を押した。