最強の呪術師と
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学校に向かうために寮から外に出れば、耳を塞いでも聞こえてくるセミの鳴き声とむわとする気温が嫌でも夏であることを主張してくる。
「暑い・・・。」
ゆったりと教室に向かえば、既に傑が席に座って携帯を見ていた。
「おはよう、名前」
さらりと挨拶をする傑とは正反対に私は、だらりと席に着いた。
「暑い・・・暑すぎる・・・」
「夏だからね」
「なんでそんな涼しげなの・・・?」
「・・・」
ガラッと音がなり、硝子が来た。
「あ〜・・・むり、暑い・・・。」
頬に机をくっつければ、ひんやりとしていて少し気持ちいい。
「はは、だらしな」
朝からさらりと辛辣な硝子とくっくっという笑いを堪えきれていない傑を横目で見た。
「・・・だって暑いんだもん。仕方ないじゃん。」
ひんやりとしていた机もだんだん生暖かくなってきて、気持ち悪いなあと思っていれば、
「あっちい〜、あ〜・・・」という声が耳に入り、声で悟だとわかった。
「うわあ・・・」
窓側を向いてるから姿は見えなくても、声色からだらりと座っている私をみて、悟はドン引きしているのがわかった。
「悟・・・バカにしていられるのも今のうちだからね。机はね、ひんやりしてて気持ちいいんだよ・・・。」
「はあ?暑さで頭でも湧いた?」
「人が親切に教えてあげてるのに、可愛くないなあ」
「・・・」
「アイス1つ賭けてもいいよ。」
「・・・ハーゲン〇ッツな」
ちゃっかり高いアイスをチョイスしてくるあたり、ほんといい性格してる。
余程暑かったのか、アイスに釣られたのか、賭けに勝てると思ったのか、先程ドン引きしていたのに、席につく音が聞こえた。
「・・・嘘だろ」
「ね、悟、言ったでしょ。私の勝ち」
窓側を向いていた顔を、廊下側に向けて笑えば、夏にやられて私と同じ無様な姿勢になった悟が真っ直ぐにこちらを見つめていた。
私と悟の机の間は、ほぼないに等しく、昨日机をくっつけてボードゲームをしてそのまま帰ったことを思い出した。
普段見ることの無い悟の青い瞳に吸い込まれた。
「・・・」
「・・・」
悟と話していると時折、悟が黙ってしまい沈黙が走ることがある。
いつもならここで、傑の「悟、名前、公共の場でイチャイチャするのはよくないよ。」という微塵も納得できない発言が聞こえて、私も悟も否定して終わるのだけど。
なぜかその声も、悟以外の人の気配すら感じられず、傑と硝子は教室からいなくなっていたことに今更気づいた。
悟は私のことを真っ直ぐに見つめてきて、いったい何を考えてるかわからない。
机はもう生暖かく、傑も硝子もおらず、悟に見つめられ続けるよく分からない状態に、汗が吹き出ていて、髪の毛が顔にくっついているのを感じた。
すると悟の手がふいに私の顔に近づき、汗で顔についた髪の毛に触り、耳にかけた。
「・・・っ」
急に顔から耳にかけて触れられ、くすぐったいし、恥ずかしいしで、顔が熱くなるのを感じた。
チラリと悟と目線を合わせれば、顔色ひとつ変えずにこちらを見つめ、そのまま悟は頬を優しく撫でた。
なんだか、今日の悟は変だ。いつもなら頬を引っ張り私をからかうくせに、目の前にいる悟はそれをしない。
悟相手に頭が混乱していて、なんだか悔しく、頬に当てられた悟の手に、自分の手を重ねた。
「!」
悟の青色の瞳が大きく開かれ、揺れた。
「・・・・・・」
悟の手から悟の体温が伝わってきて暑い。暑いのに心地よいのはなんでなんだろう。
悟を驚かせたくて対抗して、こんなことをしてしまったけれど、離すタイミングがわからないから、あっちいとか言ってくれないだろうか。
そう願ってやまないのに、そんな願いとは反対に悟は頬から手を離し、するりと私の手を握った。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
理由も分からず、さすがに心臓は限界を教えていて、私はなんとか口を開いた。
「さ、悟どうしたの??どーせ、またなんか企んでるんでしょ?!そーゆー手には引っかからないよ!」
そう言って手を離そうとすれば、離れるなと言わんばかりに、強く握られる。
「・・・!?」
悟の顔を見つめれば、なんだか真剣な顔をしていて。
心臓の音が耳元で聞こえたような感覚が身体を支配した。
「・・・名前、俺さお前のこと」
「ただいまー」
悟が何か言おうとしたと同時に、教室のドアが開き、傑と硝子が入ってきて、慌てて私たちは起き上がり、手を離した。
「おおおおおかえり、硝子、傑」
「・・・どこ言ってたんだよ」
「悟と名前が暑い暑いってうるさかったから、硝子と飲み物買いに言ってたんだよ」
「そそそうだったんだー!!2人ともありがとう!」
「・・・なんで名前そんなに挙動不審なの?」
「・・・そ、んなことないよー!」
ニコニコ笑って言っても、硝子は怪訝な顔をされて、ああ全然信用されてないなあと思う。
硝子が私を怪訝な目で見つめながら、プシュッという音を立てて、缶ジュースを開ける。
傑もごくごく飲み始めている。
横にいる悟を見れば、メロンクリームソーダを開けようとしているところだった。
「え?!私の分は?!」
「え?なんか君たちいつもお互いの飲みあっこしてるから、1本でいいかなと思って、それしか買ってこなかったよ。」
「「は?」」
「まあ手持ちもなかったしねー」
うわ、暑いって言ってたから飲み物買ってきたって、自分の分はちゃっかり買ってきて、私たちは2人で半分こしろということか。
いやそれにしても、1口ちょうだいって言い合って、相手に飲み物あげるのと、ひとつの飲み物2人でシェアするのはなんか違くない??
ていうか悟もう口つけちゃってるし!!
そんなことを内心思いながら、バレないようお金をスカートに忍ばせ、立ち上がった。
「?買いに行くの?」
立ち上がった私を見て、硝子がすぐさま察して、ん。と今にも飲み物を差し出そうとしてくれたのに。
「別に半分すればいーじゃん」
ん。と悟がメロンクリームソーダ私に渡そうとする。
今日の悟はなんだか変だ。いつもの悟なら、こんな時、俺に渡されたから俺のだし。とかしれっと言いそうなのに。
暑さで頭でもやられたのだろうか。
・・・それなら、私の鼓動がうるさいのも、暑さのせいにならないだろうか。
「悟がいいならいいや。ありがとう」
と悟への気持ちを自覚する前と同じく見えるようにポーカーフェイスで言いのけ、口をつけた。
ふと悟は何を言いかけてたんだろう、なんて思いながら、悟の気持ちとこれから流れ出てくるメロンソーダ、これから始まるであろう夏、全てに期待を寄せた。