鬼滅の刃リクエスト
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こんなに怒りが湧いたのはいつぶりだろうか。
「ふぅぅぅぅぅぅ・・・」
蟲柱こと胡蝶しのぶは深く息を吐いた。
遡ること数時間前。
部屋にある金魚に餌をあげて、安らいでいれば、蝶屋敷の玄関が開く音が耳に入ってきた。
誰かと思い、立ち上がり、玄関先に行けば
「しのぶちゃん・・・!」
「・・・・・・。」
やつれきった柚さんと腕に怪我を負った冨岡さんが立っていた。
「名前さん・・・冨岡さん・・・」
「しのぶちゃん、朝早いのにごめんなさい。」
名前さんはぺこりと頭を静かにさげた。
「それはいいんですよ。ただ・・・」
「・・・?」
名前さんは青色の瞳を大きく開き、きょとんとした顔をして、しのぶを見つめた。
「名前さん、冨岡さん、どうしてもっと早く来なかったんですか?」
笑顔で言ったものの、怒っているのが伝わってしまったのであろう、名前さんからはゴクリと喉を鳴らす音が聞こえた。
「・・・胡蝶、それは俺達が約束をしていたからであって」
「冨岡さんは黙っていてください。」
あくまで笑顔で冨岡さんに告げる。
私は、ムッとした冨岡さんをよそに、名前さんの手を掴んだ。
「まずは、名前さんからですね、さあ、行きますよ」
「へ・・・し、しのぶちゃん、私は大丈夫です。それより、義勇さんの腕の治療を・・・」
「アオイたちを呼んでくるので大丈夫ですよ。あ、冨岡さんはそこで待っていてくださいね。」
ずるずるずるずると、名前さんをベッドまで連れていき、半ば強制的にベッドに寝かせた。
「さあ、蝶屋敷でゆっくりと休んで行ってくださいね。」
今にも怒りだしたい気持ちを抑え、あくまで笑顔で名前さんに伝える。
「しのぶちゃん、私はだいじょうぶです。それより義勇さんの腕の治療を・・・」
「・・・何が大丈夫なんですか?」
あなたはいつもそう。冨岡さんのことばっかりで、自分のことは二の次。
確かに名前さんは、鬼で人間よりも体力があるし、薬草を調合するだけじゃなくて、能力で傷と怪我の治療もできる。
でもそれは、永続的ではない。
鬼であろうとも、身体を休めることも、血を取り込むことだって名前さんにとっては必要不可欠なのだ。
身体が欲していることをしないのは、本人が気づいてないだけで、心身ともに削れていくのだ。
それを名前さんは気づいていない。
「・・・しのぶちゃん?」
「・・・輸血の準備してきますね。」
名前さんは休んでてくださいと告げ、部屋を出た
名前さんは、日光も藤の花も日輪刀も効果がなく、人も食べない鬼舞辻無惨とは違う鬼の一族だ。
そう分かっていても、"鬼であるものの、人を食べない、事実に、恐怖すら感じた。
ある時、冨岡さんから、名前さんが薬剤を調合できることを聞いて、お互い知っている薬剤調合の情報交換をしないか提案すれば、とても嬉しそうにわらった。
薬剤調合の話をするだけだったはずが、優しく目を細めて笑う名前さんが姉さんと重なり、恐怖なんて吹っ飛んでしまった。いつの間にかおすすめの本まで紹介される話に発展するほど、楽しく談笑していた。
話を通して、名前さんは一族を守るため、冨岡さんのため、 誰かの役に立つために鬼殺隊に入隊していることを知った。誰かのことを考えて行動できるのはすごいことだと思った。
名前さん、あなたは私にとって姉のような存在であり、友人のような存在なんです。
だから、あなたが自分のことを無下にして、他人を優先して無理しているのを見ると、怒りが湧いてくる。
「ふぅぅぅぅぅ・・・」
気を落ち着かせるために、呼吸をし、輸血の準備をして、名前さんのところに戻れば、すぅすぅと寝息をたてて眠っていた。
やっぱり疲れてるんじゃないですか、と内心思い、輸血を施して、玄関先に向かえば、冨岡さんの姿があった。
「冨岡さん、すみません、アオイたちを呼ぶの忘れていました。」
「・・・・・名前はどうしてる。」
「・・・名前さんなら、先程輸血をして、今は休んでますよ」
「・・・輸血?」
「はい。かなり無理をしたみたいですよ。気づかなかったんですか?」
処置室の扉を開けながら、思わず刺々しい言い方をしてしまったことに気づき、ちらりと冨岡さんを見やれば、拳を握る姿があった。
「・・・。」
無言で処置室に入り、処置に必要な道具を準備して、
冨岡さんの傷をみれば、化膿もしておらず綺麗に包帯が巻かれており、名前さんがしっかりと処置したことがわかった。
すると冨岡さんが前触れもなく口を開いた。
「・・・名前がいつの間にか包帯を巻けるようになっていた。胡蝶が教えたのか。」
その言葉を聞いて、名前さんが『しのぶちゃん!私に応急処置の方法教えて欲しい』と言われたのを思い出す。
「そうですね。厳密に言うと、名前さんが私に教えて欲しいと頼まれたので。」
そう告げると、冨岡さんの頭にはたくさんのはてなが浮かんでいた。
「・・・名前は薬剤を調合することも、自分自身で傷を治すことをできるから、いらないだろう」
名前さんがどれだけ冨岡さんのことを考えているのかわからない鈍感さに少しイラッとくるものの、拳を握りしめてグッと堪える。
「少なくとも名前さんはそうは思わなかったみたいです。」
そう告げても、冨岡さんは不思議そうに、首を傾げるばかりで、言葉を続けた。
「名前さんは、自分のことなんて後回しでいつも冨岡さんのことばかり考えていますよ。だから冨岡さんには名前さんをしっかりと見て貰わないと気が気じゃないです。」
「・・・・・・」
「・・・傷はこれで大丈夫だ思います。くれぐれも無理しないようにしてくださいね。」
そう告げるとああ、と一言告げて、冨岡さんは足早に名前さんのいる方向に向かっていった。
「・・・少し言い過ぎてしまいましたね」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
右手がほんのりとあったまる感覚。誰かが手を握っているのだろうか。
「・・・名前」
あ、この声・・・義勇さんだ。
そう思いつつも、まだ眠っていたい感覚に瞼は重かった。
なんだかいつもよりも元気の無い義勇さんの声が気にかかる。
早く起きなきゃと思うものの、眠気が強くなかなか瞼を開けられなかった。
すると、髪の毛を梳かれ頭を優しく撫でられたと思えば、唇に柔らかい感覚が触れた。
「・・・」
それは紛れもなく、義勇さんからのキスだった。
予想だにしない出来事にすっかり眠気なんて吹き飛んでしまい、3度目のキスで瞼を開いた。
「・・・義勇さん・・・」
目を開ければ思った以上に近くに義勇さんの顔があり、顔が熱くなるのを感じた。
「・・・名前、起きてたのか」
そう言いながらゆっくり離れた義勇さんの耳は少し赤かった。
「い、いえ、今起きました。」
バレバレな嘘に鈍い義勇さんにもさすがに気づかれてしまい、二人の間に沈黙が走った。
「あ、あの腕の傷、どうでしたか?痛くないですか?」
そう尋ねると義勇さんの青い瞳が驚いたように大きく開かれ、抱きしめられ、腕の中にいた。
「!!」
義勇さんが私を抱きしめることは珍しくない。珍しくないのだが、こんなふうに強く抱きしめられることはまれだった。
「・・・なにかありましたか?」
「・・・無理をさせてしまってすまなかった。」
「え・・・」
「胡蝶に名前はいつも俺のことを考えていると聞いた。」
「!?」
そんな恋話のようなことを義勇さんががしのぶちゃんから聞いたのかも、それがどうして義勇さんが謝罪する理由になるのかが全く持って繋がらなかった。
ただただ、いつも義勇さんのことを考えているのは事実で、それがしのぶちゃんに知られていて、義勇さんに伝わったことに恥ずかしく感じた。
「胡蝶に気付かされて、俺は情けない。」
「・・・?」
「だから俺ももっと名前のことを考えようと思う」
真っ直ぐに目を見て伝えられ、話が繋がらないにも関わらず、胸がぎゅうといっぱいになるのをを感じた。
「ふ、ふふ・・・義勇さんありがとうございます。」
笑ってそう伝えれば義勇さんも少し笑っていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
少し感情的になりすぎましたね、冨岡さんにも名前さんにも。感情が制御できないのは未熟者ですと私は言い聞かせ、深呼吸を繰り返した。
そして、名前さんのいる療養場所に入ろうとすると、名前さんの幸せそうに笑う声が耳に入ってきた。
その声を聞いてそばに冨岡さんがいることは明白だった。正直冨岡さんは鈍いし、人のために、冨岡さんのために無理をする名前さんのそばにいるのは、名前さんに負担がかかるのではないかと、心配だった。
でも名前さんが1番幸せそうに笑うのは冨岡さんの隣で。
「・・・名前さんにとってはそれが1番幸せなのかもしれませんね。」
それなら心配でも私が口を挟むのは無粋ですね。
そう思い立ち、もう少し入るのを待とうと戻ろうとすれば、「じゃあ、もしかして蝶屋敷に早く来なかったから・・・」という名前さんの声と、「ああ。怒らせてしまったんだと思う。」という冨岡さんの声が耳に入った。
そうですよ、とても心配したんですよ、名前さん。
と心の中で告げる。
しかし、続けて聞こえてきたのは「・・・そうですよね。早く来ればこんなに手間がかかることもなかったですし・・・悪いことしてしまいました。」という名前さんの声と、「確かに、手間をかけさせてしまったな。・・・そうか、やはりそれで怒らせてしまったのか」と頓珍漢なことを言う声が聞こえてきて。
どうして2人には私が名前さんを心配して怒ったという発想がないんでしょうか。
名前さんには伝えてないからともかく、冨岡さんには、名前さんを心配する旨を伝えたのだけれど。
そう思うと、やはり、無粋でも、少し感情的になってしまっても、名前さんは他人、主に冨岡さんを優先する悪い癖があり、それをとても心配していること、冨岡さんは鈍くて名前さんを任せるのは心配なことを直球で伝えなければならないと思い、扉に手をかけたのだった。
「ふぅぅぅぅぅぅ・・・」
蟲柱こと胡蝶しのぶは深く息を吐いた。
遡ること数時間前。
部屋にある金魚に餌をあげて、安らいでいれば、蝶屋敷の玄関が開く音が耳に入ってきた。
誰かと思い、立ち上がり、玄関先に行けば
「しのぶちゃん・・・!」
「・・・・・・。」
やつれきった柚さんと腕に怪我を負った冨岡さんが立っていた。
「名前さん・・・冨岡さん・・・」
「しのぶちゃん、朝早いのにごめんなさい。」
名前さんはぺこりと頭を静かにさげた。
「それはいいんですよ。ただ・・・」
「・・・?」
名前さんは青色の瞳を大きく開き、きょとんとした顔をして、しのぶを見つめた。
「名前さん、冨岡さん、どうしてもっと早く来なかったんですか?」
笑顔で言ったものの、怒っているのが伝わってしまったのであろう、名前さんからはゴクリと喉を鳴らす音が聞こえた。
「・・・胡蝶、それは俺達が約束をしていたからであって」
「冨岡さんは黙っていてください。」
あくまで笑顔で冨岡さんに告げる。
私は、ムッとした冨岡さんをよそに、名前さんの手を掴んだ。
「まずは、名前さんからですね、さあ、行きますよ」
「へ・・・し、しのぶちゃん、私は大丈夫です。それより、義勇さんの腕の治療を・・・」
「アオイたちを呼んでくるので大丈夫ですよ。あ、冨岡さんはそこで待っていてくださいね。」
ずるずるずるずると、名前さんをベッドまで連れていき、半ば強制的にベッドに寝かせた。
「さあ、蝶屋敷でゆっくりと休んで行ってくださいね。」
今にも怒りだしたい気持ちを抑え、あくまで笑顔で名前さんに伝える。
「しのぶちゃん、私はだいじょうぶです。それより義勇さんの腕の治療を・・・」
「・・・何が大丈夫なんですか?」
あなたはいつもそう。冨岡さんのことばっかりで、自分のことは二の次。
確かに名前さんは、鬼で人間よりも体力があるし、薬草を調合するだけじゃなくて、能力で傷と怪我の治療もできる。
でもそれは、永続的ではない。
鬼であろうとも、身体を休めることも、血を取り込むことだって名前さんにとっては必要不可欠なのだ。
身体が欲していることをしないのは、本人が気づいてないだけで、心身ともに削れていくのだ。
それを名前さんは気づいていない。
「・・・しのぶちゃん?」
「・・・輸血の準備してきますね。」
名前さんは休んでてくださいと告げ、部屋を出た
名前さんは、日光も藤の花も日輪刀も効果がなく、人も食べない鬼舞辻無惨とは違う鬼の一族だ。
そう分かっていても、"鬼であるものの、人を食べない、事実に、恐怖すら感じた。
ある時、冨岡さんから、名前さんが薬剤を調合できることを聞いて、お互い知っている薬剤調合の情報交換をしないか提案すれば、とても嬉しそうにわらった。
薬剤調合の話をするだけだったはずが、優しく目を細めて笑う名前さんが姉さんと重なり、恐怖なんて吹っ飛んでしまった。いつの間にかおすすめの本まで紹介される話に発展するほど、楽しく談笑していた。
話を通して、名前さんは一族を守るため、冨岡さんのため、 誰かの役に立つために鬼殺隊に入隊していることを知った。誰かのことを考えて行動できるのはすごいことだと思った。
名前さん、あなたは私にとって姉のような存在であり、友人のような存在なんです。
だから、あなたが自分のことを無下にして、他人を優先して無理しているのを見ると、怒りが湧いてくる。
「ふぅぅぅぅぅ・・・」
気を落ち着かせるために、呼吸をし、輸血の準備をして、名前さんのところに戻れば、すぅすぅと寝息をたてて眠っていた。
やっぱり疲れてるんじゃないですか、と内心思い、輸血を施して、玄関先に向かえば、冨岡さんの姿があった。
「冨岡さん、すみません、アオイたちを呼ぶの忘れていました。」
「・・・・・名前はどうしてる。」
「・・・名前さんなら、先程輸血をして、今は休んでますよ」
「・・・輸血?」
「はい。かなり無理をしたみたいですよ。気づかなかったんですか?」
処置室の扉を開けながら、思わず刺々しい言い方をしてしまったことに気づき、ちらりと冨岡さんを見やれば、拳を握る姿があった。
「・・・。」
無言で処置室に入り、処置に必要な道具を準備して、
冨岡さんの傷をみれば、化膿もしておらず綺麗に包帯が巻かれており、名前さんがしっかりと処置したことがわかった。
すると冨岡さんが前触れもなく口を開いた。
「・・・名前がいつの間にか包帯を巻けるようになっていた。胡蝶が教えたのか。」
その言葉を聞いて、名前さんが『しのぶちゃん!私に応急処置の方法教えて欲しい』と言われたのを思い出す。
「そうですね。厳密に言うと、名前さんが私に教えて欲しいと頼まれたので。」
そう告げると、冨岡さんの頭にはたくさんのはてなが浮かんでいた。
「・・・名前は薬剤を調合することも、自分自身で傷を治すことをできるから、いらないだろう」
名前さんがどれだけ冨岡さんのことを考えているのかわからない鈍感さに少しイラッとくるものの、拳を握りしめてグッと堪える。
「少なくとも名前さんはそうは思わなかったみたいです。」
そう告げても、冨岡さんは不思議そうに、首を傾げるばかりで、言葉を続けた。
「名前さんは、自分のことなんて後回しでいつも冨岡さんのことばかり考えていますよ。だから冨岡さんには名前さんをしっかりと見て貰わないと気が気じゃないです。」
「・・・・・・」
「・・・傷はこれで大丈夫だ思います。くれぐれも無理しないようにしてくださいね。」
そう告げるとああ、と一言告げて、冨岡さんは足早に名前さんのいる方向に向かっていった。
「・・・少し言い過ぎてしまいましたね」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
右手がほんのりとあったまる感覚。誰かが手を握っているのだろうか。
「・・・名前」
あ、この声・・・義勇さんだ。
そう思いつつも、まだ眠っていたい感覚に瞼は重かった。
なんだかいつもよりも元気の無い義勇さんの声が気にかかる。
早く起きなきゃと思うものの、眠気が強くなかなか瞼を開けられなかった。
すると、髪の毛を梳かれ頭を優しく撫でられたと思えば、唇に柔らかい感覚が触れた。
「・・・」
それは紛れもなく、義勇さんからのキスだった。
予想だにしない出来事にすっかり眠気なんて吹き飛んでしまい、3度目のキスで瞼を開いた。
「・・・義勇さん・・・」
目を開ければ思った以上に近くに義勇さんの顔があり、顔が熱くなるのを感じた。
「・・・名前、起きてたのか」
そう言いながらゆっくり離れた義勇さんの耳は少し赤かった。
「い、いえ、今起きました。」
バレバレな嘘に鈍い義勇さんにもさすがに気づかれてしまい、二人の間に沈黙が走った。
「あ、あの腕の傷、どうでしたか?痛くないですか?」
そう尋ねると義勇さんの青い瞳が驚いたように大きく開かれ、抱きしめられ、腕の中にいた。
「!!」
義勇さんが私を抱きしめることは珍しくない。珍しくないのだが、こんなふうに強く抱きしめられることはまれだった。
「・・・なにかありましたか?」
「・・・無理をさせてしまってすまなかった。」
「え・・・」
「胡蝶に名前はいつも俺のことを考えていると聞いた。」
「!?」
そんな恋話のようなことを義勇さんががしのぶちゃんから聞いたのかも、それがどうして義勇さんが謝罪する理由になるのかが全く持って繋がらなかった。
ただただ、いつも義勇さんのことを考えているのは事実で、それがしのぶちゃんに知られていて、義勇さんに伝わったことに恥ずかしく感じた。
「胡蝶に気付かされて、俺は情けない。」
「・・・?」
「だから俺ももっと名前のことを考えようと思う」
真っ直ぐに目を見て伝えられ、話が繋がらないにも関わらず、胸がぎゅうといっぱいになるのをを感じた。
「ふ、ふふ・・・義勇さんありがとうございます。」
笑ってそう伝えれば義勇さんも少し笑っていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
少し感情的になりすぎましたね、冨岡さんにも名前さんにも。感情が制御できないのは未熟者ですと私は言い聞かせ、深呼吸を繰り返した。
そして、名前さんのいる療養場所に入ろうとすると、名前さんの幸せそうに笑う声が耳に入ってきた。
その声を聞いてそばに冨岡さんがいることは明白だった。正直冨岡さんは鈍いし、人のために、冨岡さんのために無理をする名前さんのそばにいるのは、名前さんに負担がかかるのではないかと、心配だった。
でも名前さんが1番幸せそうに笑うのは冨岡さんの隣で。
「・・・名前さんにとってはそれが1番幸せなのかもしれませんね。」
それなら心配でも私が口を挟むのは無粋ですね。
そう思い立ち、もう少し入るのを待とうと戻ろうとすれば、「じゃあ、もしかして蝶屋敷に早く来なかったから・・・」という名前さんの声と、「ああ。怒らせてしまったんだと思う。」という冨岡さんの声が耳に入った。
そうですよ、とても心配したんですよ、名前さん。
と心の中で告げる。
しかし、続けて聞こえてきたのは「・・・そうですよね。早く来ればこんなに手間がかかることもなかったですし・・・悪いことしてしまいました。」という名前さんの声と、「確かに、手間をかけさせてしまったな。・・・そうか、やはりそれで怒らせてしまったのか」と頓珍漢なことを言う声が聞こえてきて。
どうして2人には私が名前さんを心配して怒ったという発想がないんでしょうか。
名前さんには伝えてないからともかく、冨岡さんには、名前さんを心配する旨を伝えたのだけれど。
そう思うと、やはり、無粋でも、少し感情的になってしまっても、名前さんは他人、主に冨岡さんを優先する悪い癖があり、それをとても心配していること、冨岡さんは鈍くて名前さんを任せるのは心配なことを直球で伝えなければならないと思い、扉に手をかけたのだった。