鬼滅の刃リクエスト
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黒く染まっている日輪刀を静かに鞘にしまう。
頬に血が伝いズキズキと痛む。
迂闊だった。十二鬼月ではなかったから少し油断してしまった。
首を切ったあと、終わったとホッと油断した時に、爪で引っかかれてしまった。
しかも、倒される直前に"鬼のくせに・・・人間地味たことしやがって笑えるぜ・・・"と恨み言を言われてしまった。
「・・・」
鬼を滅しているし、自身は鬼舞辻無惨から生まれた鬼でないにしろ、腕飾りで鬼の姿を封じていても、鬼は鬼。
だから、一族を鬼舞辻無惨から守るために、義勇さんと一緒にいるために、誰かの役に経つために、みんなに認めてもらうために、鬼殺隊に入り、柱にまでなったというのに・・・
疲れているからだろうか、小さい傷を負っただけなのに、自身の情けなさににため息をついた。
自身の鬼の能力で傷の治療をするなり、薬草を探せばよいのだが、2週間出ずっぱりで任務をしていてさすがに少し疲れてしまったらしく、そんな気にはならず、ぼんやりとしながら、義勇さんの御屋敷に足を運んでいた。
私の頭上で、鎹鴉の蓮がうろうろと飛んでいる。
きっと私が傷をしていても治さないぐらい疲弊していることを察して、心配してくれているのだらう。
「蓮、大丈夫です。これぐらいの怪我なんともありません。」
微笑みながらそう言うと肩に止まり、頬に擦り寄ってくる。
なんて可愛いのだろう。
・・・でも無理をしたらしのぶさんにまた怒られてしまう・・・とぼんやりと思い、この前無理をしすぎて、疲労で倒れた時のことを思い出す。
「・・・いくら名前さんが鬼と言えど、休む時はきちんと休まなければいけませんよ。無理をしすぎです。」
いつも笑っているしのぶさんの顔はそこにはなく、心配してくれたのがとても嬉しくて涙が滲んだのを昨日のことのように覚えている。
でも時刻は、もう丑の刻を示していて、こんな夜分に行くのは少し気が引ける。
それに、何より・・・
今日は、今日だけはどうしても義勇さんのところに帰りたいのだ。
屋敷に入るとまだ義勇さんはおらず、ふぅと一息ついて隊服と黒色の羽織りを脱ぎ、黒色に白の柚の花模様が入った着物に身を包んでいく。
すると、ガタンと玄関先からドアの開ける音が聞こえた。
「!」
玄関先まで小走りで走れば、腕に怪我をした義勇さんの姿があった。
「・・・!義勇さん!」
「・・・名前」
「どうしたんですか・・・この怪我・・・」
腕の傷は深くはないものの、動脈部分に触れたのだろうか、血が多く滲んでいて痛ましい。
「・・・問題ない」
義勇さんは床の方に目を伏せたまま答えた。
「え?いや、でも血が・・・なんで蝶屋敷に行かなかったんですか・・・?」
「・・・・・・・・・。」
だんまりである。こうなると義勇さんはしばらく話さない可能性が高いことを私はよく知っている。
「とりあえず、手当をしましょう」
応急処置ぐらいはできるだろうと考え、そう声をかけると、義勇さんは静かに屋敷にあがり、パタパタと歩く私の後を静かについてくる。
すると突然後ろの足音が止まった。
「義勇さん・・・?」
振り向けば、自分よりも少し大きい義勇さんの中に抱きしめられていた。
「!」
突然のことに顔が熱くなるのを感じ、言葉が出ない。
背中から、義勇さんの体温が伝わってきて、恥ずかしく少し体を捩らせるものの、義勇さんの腕の力は増すばかりでなかなか離して貰えない。
「あの・・・」
「・・・・名前、お前こそどうして蝶屋敷に行かなかったんだ。」
「!」
「頬の傷も治せないくらい疲弊してたんじゃないのか」
どうして。どうしてと言われれば、答えとして出てくるのは、"約束をしていたから。"
数日前に、
「その日は2人でゆっくり過ごさないか」
と言われたからで。
確かに少しの傷を治すために薬草を探す気力も、ましてや自身の能力で傷を治す気力も全くなかった。
心身ともに疲れてきっていて、今すぐ少しでも近い蝶屋敷のほうに行って休みたい気持ちは確かにあった。
でも・・・
それよりも義勇さんに会いたかったのだ。
というかそんなことより、
「・・・義勇さん、それは私のセリフです。そんな怪我、しのぶさんのところでしか根治治療はできません・・・義勇さんだって、そんなのわかってるじゃないですか・・・」
私は、何とでもなる。だって人間の姿をした正真正銘の鬼だもの。
少しぐらい怪我をしても、血が吸えなくても休めば誤魔化しは聞く。
でも、義勇さんは紛れもなく人間で、その怪我からもし、もし万が一のことがあったらと思うと、不安と恐怖でどうしようもなくなる。
なのにどうして・・・。
「・・・っ・・・」
涙が目からポロポロと溢れた。
「・・・!すまない・・・。」
私が泣いているのを察してくれた義勇さんは、私の体を反転して今度は正面から抱きしめられていた。
「どうしても、名前に会いたかった。・・・それに、約束もした」
静かにいつもと変わらない声色で義勇さんははっきりとそういった。
「・・・!っ・・・私も・・・私もです、義勇さん・・・」
私からぎゅうと抱き締めれば、少しびっくりしたのか義勇さんの身体が硬直した。
私と同じ気持ちでいたくれたことに対して、嬉しいという気持ちでいっぱいになっていくのを感じた。
上を向き、目が合うと、目を細めて優しく笑い、私の頬の傷に義勇さんは優しく触れた。
「名前・・・」
そのまま、そう静かに呟いたと思えば、唇を重ねられた。
「っ・・・」
そのまま、頬、おでこ、鼻、唇至る所に優しく唇が触れる。
義勇さんが動く度に、ふわり、と甘い匂いが鼻を伝う。
義勇さんの血液の匂いが傷口から香ってくる。
疲れている時に、この匂いは毒だ。
義勇さんを心配しているのに、こんな時でさえ、本能に抗えず血を吸いたくなる。
「・・・はぁ・・・ぎ、義勇さん、少し離れてください・・・。腕、手当しちゃうましょう・・・?」
我慢しよう、また今度義勇さんが元気な時に、吸わせてもらおう。
私をじっ・・・と青く透き通った目で見つめると、義勇さんは、隊服のボタンをポチポチと外しはじめた。
すると、白く綺麗なうなじを外気中に晒した。
「・・・!な、なにして・・・」
「?吸わないのか」
「・・・っ・・・」
今すぐにでも、うなじに噛みつきたい衝動を、自身の手を握ることにより、ぐっと抑える。
自身の爪が食い込み、手のひらには血が滲んだ。
「ぎ、義勇さんが、怪我してる時にもらうなんて・・・そんなの・・・だめです・・・。」
「俺の血を吸って、名前が元気になれるのなら問題ない。むしろそれは本望だ。」
義勇さんは真っ直ぐと私の目を見て、そう言い放った。
そして、私が固く握った手を取り優しく開いて、今しがたできた傷口に優しくキスをした。
「・・・っ・・・」
義勇さんの優しさに涙が滲む。
すると義勇さんは、少し微笑み、私の頭を自身のうなじに抱き寄せた。
私は泣きながら、うなじを噛み、義勇さんの甘い血を吸った。
義勇さんは私が血を吸っている間、いつものように頭を優しく撫でた。
それから少し元気になった私は、義勇さんの応急処置をした。
義勇さんが呼吸で止血していたので、血は止まっており消毒して包帯で保護するだけで済んだ。
おそらくしのぶさんのところに行って、化膿止めの薬剤をもらうだけで済むだろう。
何事もなくてよかった、とホッとし、久しぶりに2人で同じ布団に入った。
「夜が明けたら念の為、蝶屋敷へ向かう。心配かけてすまない。」
そう言って、義勇さんは私の頬を撫でた。
「はい、私もご一緒します。」
私が笑ってそう言えば、義勇さんはこくりと頷いた。
次の日、私たちが揃って、しのぶさんに、「冨岡さん、名前さん、どうしてもっと早く来なかったんですか?」と満面の笑みで怒られ、とても怖い思いをするのだった。
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