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『かっこいい人』(出会い編)
真央は私立フォルモーント学園に通う、ごくごく普通の——いや、とても引っ込み思案な女子高校生。彼女曰くキラキラしてる同級生のみんなとは常に離れたところで、ただひっそりと学校生活を送っている。
卒業まではずっとそんな調子で行くはず——だったのだが。
「よろしくな、真央!」
三年生に進級してから、初めて同じクラスになった男子のおかげで、真央の日常は目まぐるしく変わってしまった。
カイン・ナイトレイ。精悍で整った顔立ち、一つに結われた長い赤髪。色々と事情があって、その片目は前髪で隠されているが、彼は運動神経が良ければ顔も良く、体格もがっしりとしていて。ミュージシャンを目指す特大級のインフルエンサーで、学内だけでなく学外の人間たちの間でも超有名人、そして何よりその異常なコミュ力の高さと陽気さから男女問わずモテる、モテる、モテる。
つまるところ、地球が何億周したって自分と仲良くなることなんてないはずの、とてもかっこいい人。
そんな彼が今、真央の隣の席で、白い歯を見せて眩いほどの笑顔を浮かべている。
(……いきなり呼び捨てされた)
明るく挨拶してもらえたにもかかわらず、真央はカチコチに固まってしまった。目の前にある、弾けんばかりのキラキラスマイルに、思考が停止しているのである。
「えっと……よろしく……?」
カインが自分なんぞに話しかけている事実を信じ切れぬまま、真央はぎこちなく言葉を返した。
「ははっ、なんで疑問形なんだ?」
「す……すみません」
「なんで謝るんだ。それに、敬語は使わなくていいよ。俺は敬語を使うのが苦手なんだ」
「はあ……」
朗らかに笑うカインを、いつまでも見つめ続けるのが辛かった。だって、真央にとって、彼はあまりにも眩しすぎる。
「あんたは確か、去年オーエンと同じクラスだったんだろ?」
「!? ……っ、うん」
「去年、あんたが中庭でオーエンに話しかけられてるのをよく見かけていたんだ。大丈夫だったか?」
カインは少し、険しい顔色で尋ねた。真央はブンブン激しく音を鳴らして、首を横に振る。
「全然、大丈夫……」
——じゃ、なかったが。そんなことを今彼に話したところで、どうにもならない。
真央は、答えたきり俯いてしまった。それ以上、カインに何か尋ねられるのを拒むように。
カインは真央の返答を聞いて、「そうか」と眉をひそめた。
「あいつには気をつけろよ。あいつと話してると、心を乱される」
「うん、よく知ってる」
「ああ。……でも、あんたがあいつに何かされそうになったら、その時は俺が守ってやるからな」
「……はい?」
まるでどこぞの国の騎士様のようなセリフを口にして、カインは真剣な表情で真央を見つめた。
「……今、なんて?」
聞き間違いかと思って、真央は恐る恐る顔を上げた。瞳が合わさると、カインは一瞬、ふっと瞳を緩めて。それでもまた凛々しい顔つきに戻ると、再びはっきりと告げた。
「俺が、あんたを守るよ」
愛の告白をされているわけでもないのに、真央の胸は早鐘を打ち始めた。目がしばしばして、胸の辺りが熱くなる。
「……ありがとう」
そう告げた真央もう一度、俯いてしまった。カインは、下を向いた彼女の耳の赤さに気づいた。胸の奥が、どこかむず痒くなる心地がした。
(……なんかかわいいな。この子)
カインは直感的にそう思って、長い指の先で頬をぽりぽりと掻く。今まで関わってきた人間たちとはどこか一線を画した雰囲気に、彼自身、惹かれる部分があったようだ。
(2021/10/16)
(加筆修正:2021/12/3)
真央は私立フォルモーント学園に通う、ごくごく普通の——いや、とても引っ込み思案な女子高校生。彼女曰くキラキラしてる同級生のみんなとは常に離れたところで、ただひっそりと学校生活を送っている。
卒業まではずっとそんな調子で行くはず——だったのだが。
「よろしくな、真央!」
三年生に進級してから、初めて同じクラスになった男子のおかげで、真央の日常は目まぐるしく変わってしまった。
カイン・ナイトレイ。精悍で整った顔立ち、一つに結われた長い赤髪。色々と事情があって、その片目は前髪で隠されているが、彼は運動神経が良ければ顔も良く、体格もがっしりとしていて。ミュージシャンを目指す特大級のインフルエンサーで、学内だけでなく学外の人間たちの間でも超有名人、そして何よりその異常なコミュ力の高さと陽気さから男女問わずモテる、モテる、モテる。
つまるところ、地球が何億周したって自分と仲良くなることなんてないはずの、とてもかっこいい人。
そんな彼が今、真央の隣の席で、白い歯を見せて眩いほどの笑顔を浮かべている。
(……いきなり呼び捨てされた)
明るく挨拶してもらえたにもかかわらず、真央はカチコチに固まってしまった。目の前にある、弾けんばかりのキラキラスマイルに、思考が停止しているのである。
「えっと……よろしく……?」
カインが自分なんぞに話しかけている事実を信じ切れぬまま、真央はぎこちなく言葉を返した。
「ははっ、なんで疑問形なんだ?」
「す……すみません」
「なんで謝るんだ。それに、敬語は使わなくていいよ。俺は敬語を使うのが苦手なんだ」
「はあ……」
朗らかに笑うカインを、いつまでも見つめ続けるのが辛かった。だって、真央にとって、彼はあまりにも眩しすぎる。
「あんたは確か、去年オーエンと同じクラスだったんだろ?」
「!? ……っ、うん」
「去年、あんたが中庭でオーエンに話しかけられてるのをよく見かけていたんだ。大丈夫だったか?」
カインは少し、険しい顔色で尋ねた。真央はブンブン激しく音を鳴らして、首を横に振る。
「全然、大丈夫……」
——じゃ、なかったが。そんなことを今彼に話したところで、どうにもならない。
真央は、答えたきり俯いてしまった。それ以上、カインに何か尋ねられるのを拒むように。
カインは真央の返答を聞いて、「そうか」と眉をひそめた。
「あいつには気をつけろよ。あいつと話してると、心を乱される」
「うん、よく知ってる」
「ああ。……でも、あんたがあいつに何かされそうになったら、その時は俺が守ってやるからな」
「……はい?」
まるでどこぞの国の騎士様のようなセリフを口にして、カインは真剣な表情で真央を見つめた。
「……今、なんて?」
聞き間違いかと思って、真央は恐る恐る顔を上げた。瞳が合わさると、カインは一瞬、ふっと瞳を緩めて。それでもまた凛々しい顔つきに戻ると、再びはっきりと告げた。
「俺が、あんたを守るよ」
愛の告白をされているわけでもないのに、真央の胸は早鐘を打ち始めた。目がしばしばして、胸の辺りが熱くなる。
「……ありがとう」
そう告げた真央もう一度、俯いてしまった。カインは、下を向いた彼女の耳の赤さに気づいた。胸の奥が、どこかむず痒くなる心地がした。
(……なんかかわいいな。この子)
カインは直感的にそう思って、長い指の先で頬をぽりぽりと掻く。今まで関わってきた人間たちとはどこか一線を画した雰囲気に、彼自身、惹かれる部分があったようだ。
(2021/10/16)
(加筆修正:2021/12/3)
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