〜サンジ〜
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「幻夢」
「後で君に伝えたい事がある」
そう言葉を残して飛び出して行った彼が、やっと帰ってきた
あちこちに傷を作って、生きてるのが不思議に思えてしまうくらいボロボロで…
それでも絶対に帰って来てくれると信じていたから、待っていることができた
「もう、またこんなに怪我して…!」
無茶をしてほしくないのに…
手当をしながらも心配故に出てしまう文句に、彼は苦笑いをしながら謝ってくる
確かに私は怒っていた
でも…それよりも
彼の顔を見れた喜びが、安心感が私の胸いっあぱに広がっていくのが分かる
「あ…ご、ごめんっ…痛かった?」
消毒液が傷口に染みたらしく、声にならない悲鳴をあげている
その様子がどうにも可笑しくて小さく笑い声をあげてしまった
ちょっと申し訳ないけれど、心配させたんだからこれくらいの小さな仕返しは許されるよね…?
「どうせまた、相手が女性でー…って言うんでしょう?」
ビクリと肩が跳ねたのが視界の隅で見える
どうやら図星らしい
「ふふふっ、分かっちゃうんだな〜」
ちょっと意地悪に笑ってみせると、彼も困った様に頭を掻いて言葉を探している
言い訳なんてしなくていいのに…
どんな女性にも優しいのが貴方の素敵な所
良い所でもあり悪い所なのだけれど…
たまにヤキモチを妬いてしまう時もある
それでも貴方が私を1番に想ってくれている事を…誰よりも私がよく知っている
「そうだ…!あの時、伝えたい事があるって言ってたけど…なんだったの?」
何を言おうとしていたか…なんて事は分かっていた
でも、私は貴方の口から聞きたい
直接…貴方から…
彼が真剣な顔をして口を開こうとした時、お腹の鳴る音が聞こえた
予期せぬ間抜けな音に、2人で顔を見合わせて笑ってしまう
「あははっ、待ってて!サンジが好きな物作ってくるから!」
いつも皆のお腹を満たしているのは彼
彼が料理をしている時の姿が好き
生き生きとしていて、見ているこっちまで心が温かくなる…陽だまりのような笑顔
本当に好きでなければあんな笑顔はできない…
そんな彼の腕に敵うわけないけれど…こういう時くらい彼の為に何かしたかった
キッチンへ入るとお茶をしていたナミ達と目が合う
「あら、どうしたの…?」
「サンジがお腹空いてるみたいだったから、何か作ろうかなって!」
「そういう事ね」
「何作るんだ?」
「海鮮パスタ!」
「またそれかよ!」
「またって言わないでよウソップー!」
確かにここ何回か、お試しで作っていたのは事実だけれど…またって言われるのは心外だった
彼に出すのは初めてなんだから
「…なんだか嬉しそうね?」
「ふふっ、そう見える?」
「えぇ、何かいい事でもあったのかしら?」
「違うよロビン、これからいい事があるの!」
この後のことを考えるだけで、胸がいっぱいになる
鼻歌を歌いながら出来上がった料理を医務室へ運ぼうとすると、ルフィに呼び止められた
「なぁ、それ…」
「ルフィストップ!」
「ダメだぞルフィ!」
きっとルフィも食べたかったのだろう…すごい顔をしている
ナミとチョッパーが止めに入ってくれていなかったら、今頃お皿ごと持っていかれていたかもしれない
2人に心の中でありがとうと手を合わせ足早に彼の元へ向かう
「お待たせ…!口に合うといいんだけど…どう、かな?」
恐る恐る聞いてみると、優しく微笑んでくれる
美味しいよ
その言葉と、止まらないフォークに私の頬は緩んでしまう
「良かった…」
あっという間に空っぽになってしまったお皿
片付けようと立ち上がると、彼に腕を引かれた
「どうしたの…?」
真剣な顔つき…きっと、さっきの続きだろう
そう感じ取りちゃんと向かい合う
暫くの沈黙…どんな言葉が紡ぎ出されるのかと待っていると、ゆっくりと口が開かれた…
君の事が好きだった
君を…君だけを愛してる
「私も…ね、サンジが好き、ずっとずっと好きだったの…えへへ、やっと伝えられた…!」
分かっていたのにお互いに伝えられなかったこの気持ち
やっと…やっとその想いが叶った…
好き、好きだよ…大好き…
貴方が1番で…貴方だけを愛してるよ
サンジ…
・
・
・
・
・
「おいナミ!どうして止めたんだよ!」
「だって…!あんなの可哀想すぎるじゃない…!」
ナミの啜り泣く声が響くキッチンで、皆が苦悶の表情を浮かべている
「ブルック…今日で何日目になる?」
「今日で丁度、10日ですよ…フランキーさん…」
その短いようで長い数字に、思わず誰かが溜息をつく
「なぁ、そろそろ止めさせねえとダメだろ?!毎日こうなんだぞ、毎日毎日…同じ話して、同じ飯作ってよ…!!サンジだって…こんなの嫌なはずだ!!」
「分かってる…分かってるけど…!」
「ルフィ…あの子にはもう少し時間が必要なのよ…例え、あの子だけが存在するはずのない時間…サンジが居る時間を繰り返していようともね…」
「ロビンの言う通りだぞルフィ、ああいう心の治療は…難しいんだ…長い目で見ないと…」
「だけど…だけどよ…!」
サンジはもう死んじまってるんだぞ
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