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夜も更け皆が寝静まった頃、そっと女部屋を抜け出して甲板へ出る
辺りを見回し彼の姿を探すと、いつもの様にお酒を飲んでいるゾロの姿が目に入った
「こんな時間まで起きてるなんて珍しいな」
静かに後ろから近付いたつもり…だったのだけれど、振り向いた彼と目が合ってしまった
どうやら部屋を出た時点で気付かれていたらしい…
たまには驚かせてみようかな?
なんて考えは諦めて、大人しく正面に座り込んで彼を見つめる
「伝えたい事があったから…」
「どうした」
今日、誰よりも最初に伝えたい
私が…私が一味の誰よりも先に…
「は、ハッピーバースデー」
「…は?」
緊張した私の様子から、それはもう真剣な話なんだと思い込んでいた彼
予想の斜め上の言葉に、その口からは気の抜けた素っ頓狂な声が漏れた
「そんな事かよ」
「大事な事だよ?」
「忘れてた」
「もう、昔からそうなんだから…」
そう言うと頭を捻って遠くを見つめる
暫くすると、あぁ!と声を出して、そうだったとばかりに手を叩いて納得している
「いっつも自分の誕生日は忘れるんだから…」
「そういやそうだな」
「くいなと私で毎年お祝いしてるのに、毎回忘れてるから…サプライズじゃないのにサプライズになっちゃって」
「祝ってもらった事は覚えてるんだがな」
「えぇ〜、本当かな〜?」
昔、シモツキ村でお互いの誕生日をお祝いしていた頃を思い出し、とても懐かしくなる
毎年、3人でお祝いして贈り物をして…
「ねぇ、ゾロ」
「ん?」
「また…来年もやっていい?」
「そんなの別に…」
“しなくてもいい”
彼ならそう言うかもしれない…
そう思ったら、何故か胸が締め付けられて…自然と視界がぼやけた
私のそんな様子を見てか、彼はその続きを言葉にする事はなかった
「来年だけじゃなくて毎年、ずっと…昔みたいに…くいなは居ないけど、それでも…」
「お前…」
「私、またゾロと一緒に居たい…10年会えない時間があったけど…その分これからもゾロの傍で、お祝いさせてくれますか?隣に居てもいいですか…?」
「あぁ、そうだな…お前が居ねえとまた忘れるからな」
そう言って私の頭を撫でる彼の手は、少し乱暴で不器用で…
でも、凄く優しくて温かかった
「一緒に居られるうちに…伝えられて良かった…」
「はあ?何言ってんだお前、一緒に居られるうちにだぁ?」
「だ…だって…何があるか分からないし…!もしも、また…」
またゾロと離れ離れになったら…1人になってしまったら…
そんな…起きるかどうかも分からない未来に対して怯えてしまう
「1人になんかさせねぇよ」
「え…?」
「じゃなかったら、こうやって城から連れ出したりなんかしてねぇ」
そうだった
彼らと自分の国へ戻った時…私は別れを告げた
それも一方的に…
それでも彼は…迎えに来てくれた
私に再び、貴方と共に歩む道を与えてくれた
「そう…だったね」
「不安か?」
「ううん、ゾロを信じてるもの」
「…ほらよ」
彼が小指を差し出す
何も言わないけれど…それだけで十分だった
それに応えるように自分の指を重ね、しっかりと互いの指を絡める
“俺がユリアを護る…だから、これからも一緒だ”
“私もゾロを護るから…これからも一緒に居てね”
それは無言の約束
なのに、彼が何を誓ってくれたのか伝わって…安心できた
「ありがとう…改めて、お誕生日おめでとうゾロ…ゾロにとって幸せな1年になりますように」
流れそうになる涙を拭い、そっと彼の額に唇を落とす
「お母様に教えて貰った幸せになれるお呪い」
「なっ…!」
「プレゼントは皆とお祝いする時にまた後で!じ、じゃあおやすみなさい!」
呆気にとられている彼を置いて足早に部屋へ戻る
泣いているのに笑っている
もう少し側に居たかったけれど…こんな顔、恥ずかしくて見せられなかった
これが、今の私に出来る照れ隠し…
ユリアのその姿を見送ると、参ったというように天を仰いだ
「これ以上何を寄越すってんだ…十分すぎるくらいお前からは色々貰ってんだよ…なぁ、くいな…ユリアに会わせてくれてありがとな」
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