‧✧̣̥̇‧追憶篇‧✧̣̥̇‧
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3歳の誕生日を迎えて半月ほど経った頃、私はお父様に初めて国の外へと連れ出された
「お父様…どこに行くの?」
「俺の友達が居るところだよ」
「外の…お友達…」
知らない場所に知らない人
それに不安を覚えた私の頭を、暖かく大きな手が撫でてくれる
「いい奴だからそう怖がらなくて大丈夫、ユリアと歳の近い子もいるしな!確か…3つ位上だったかな?」
「むぅ…」
「はははっ!そろそろ人見知りプリンセスを卒業しないと、またピエトにオモチャにされるぞ?こーんな風にっ!」
「あははっ!やーめーてー!」
人と会うのが苦手なのを知っているのに、どうしてそんな意地悪をするの…?
そう不貞腐れていた私をお父様お得意の擽り攻撃が襲う
笑い疲れてきた頃にようやくその手から解放され息を整える
「はぁ…はぁ…なんでこちょこちょしたの?!」
「こうして疲れきったら連れて行きやすいかなーってな」
「えぇー!?」
「ていうのは嘘…俺はな、ユリアには笑っていてほしいんだよ」
「いっぱい笑ったよ?」
「今だけじゃない、大人になってからもずっとだ…だからその為にはあの国だけじゃなく外の世界を見て、色んな人と触れ合ってほしい…なんでか分かるか?」
その問いの意味が理解できず頭を横に振る
そんな私に返してくれたのはふわりと浮かべた優しい微笑み
「あそこには居ない、ちゃんとユリアを見てくれる人が居るからだよ…俺達以外の…な」
「…?」
「安心しろそのうち分かるから…さっ、少し急ぐか!日が暮れる前に着かないとな」
手綱を引くと私達を乗せた鳥は大きく羽ばたく
水平線へ沈んでゆく夕日を眺めているうちに、目的地が見えて来てしまった
それは小さな村…どことなく雰囲気がシュピーラ王国に似ているような気がする
そんな村の外れにある丘に人影が1つ、ポツンと立っている
「久しぶりだなー!」
お父様は大きく手を振って叫ぶと、居ても立っても居られないとばかりに飛び降りていった
「元気そうで何よりです」
「そっちも変わりないようで安心した」
「変わらないのは君の方でしょうルフト…たまにはのんびり船旅でもしたらどうです?また護衛も付けずに…」
「こっちの方が早いし楽しいんだよ!自由な空の旅は良いぞ〜?」
親しげな2人
その様子から、あの人が話に出て来たお友達なのだと分かった
少しばかり疎外感を感じながら立ち尽くしていると、その人と目が合った
「おや、もしかしてあの子が?」
「あぁ、ユリア!」
こっちへおいで
と、手招きをされる
素直に駆け寄るものの、どうしても見知らぬ人というのは怖いもので
そんな人ではないのだろうと分かってはいても、お父様の後ろに隠れてしまった
「悪い、ちょっと色々あって…かなり人見知りなんだ」
「気にしてないですよ」
「ほら」
そっと背中を押され一歩前へと出る
真っ直ぐに見つめられ、恥ずかしさや緊張で顔が上げられない
それでもその人は、黙ったまま俯く私を急かす事なく待ってくれていた
話さなきゃ…
震える手でスカートの裾を握りしめ、やっとのことで口を開く
「あの…」
「うん?」
「お、お初にお目にかかります…シュピーラ王国から参りました…り、リズロット・ユリア…ですっ…!お会い、できて…光栄ですっ…」
これで大丈夫かな?相手に失礼になっていないかな?
お辞儀をしながらも、そんな不安が頭の中で駆け巡る
心配になって見上げると、優しい笑顔で手を差し出してくれる
「はじめましてユリア、私はコウシロウと言います、君のお父さんの古い友人です…遠い所からこのシモツキ村によく来てくれましたね、君とこうして会えて嬉しいですよ」
国の外で初めて会った人…
それがコウシロウ様…先生だった