第一章【春季大会編】
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
練習後の校門。夕闇が迫る中、悟は一人、家路につこうとしていた。
ふと、背筋を凍りつかせるような、刺すような殺気が悟の肌を撫でた。
「……あ」
そこに立っていたのは、ドレッドヘアを揺らし、不機嫌そうに眉間にシワを寄せている悟の兄、金剛阿含だった。
「あ゛〜、出涸らしが。……テメー、何をしてる」
阿含の声は低く、逃げ場を奪うような重圧を持って響く。彼は悟を見て、嫌悪感を隠そうともせずに鼻を鳴らした。彼女がアメフト部に入部したことを聞きつけてきたのだ。
「あれほど、二度とアメフトなんて口にするなと言ったはずだ。泥門のカス共に混じって、アメフトごっこかよ。俺のツラに泥を塗る気か?」
阿含の指が、悟の左腕――かつて彼自身が刻んだあの傷跡を、乱暴に掴み上げた。
「っ……痛い」
「痛ぇ? 笑わせんな。出来損ないが戦場 にあがって何ができる。テメーは一生、俺の影で死んでりゃいいんだよ」
阿含の瞳の奥には、冷酷な拒絶と同時に、ドロリとした執着が渦巻いていた。
危険な場所に立たせたくない。比較され、他人に揶揄され傷つく姿を見たくない。戦う資格などないと思い込ませて、二度と傷つかない場所に閉じ込めておきたい。それは、あまりにも歪で一方的な阿含の「保護欲」。
過去の記憶が蘇り、悟の足が震える。しかし彼女の脳裏には、泥にまみれながら笑うセナや栗田、微笑むまもり、そして不敵に笑うヒル魔の顔が浮かんでいた。
「私は……、……ここで、戦いたい。…今の場所で、自分の価値を見つけたい」
絞り出した微かな声。阿含の眉がピクリと跳ねた。
忌々しい左腕の傷の件以降、今まで一度も逆らわなかった「出来損ない」の反抗。阿含がさらに指に力を込めた、その時だった。
ババババババァン!!
耳を劈く銃声。アスファルトに数発の弾丸が撃ち込まれ、硝煙の香りが漂う。
「ケケケ、うちの選手に勝手に触ってんじゃねぇよ、糞 ドレッド」
悟が振り返ると、そこにはアサルトライフルを肩に担いだヒル魔が立っていた。
彼は阿含の放つ圧倒的な威圧感を、まるで日常の騒音のように鼻で笑って受け流すと、迷うことなく悟の隣へと歩み寄る。
「……ゴミ溜めの主が、何の用だ。死にてぇのか」
阿含の目が据わる。だがヒル魔はニヤリと笑うと、悟の肩を力強く抱き寄せ、自分の方へと引き寄せた。
「えっ……!?」
しっかりと、拒むことのできない強さで抱え込まれる。
ヒル魔の体温と、火薬の香りが間近に迫る。
それは、誰にも渡さないと主張するような、傲慢で無自覚な独占欲の形だった。
「こいつは俺が見つけた『最高のカード』だ。今更テメーに返す義理はねぇんだよ。……コイツは俺のもんだ。勝手に弄るんじゃねぇよ、糞 ドレッド」
「……チッ」
阿含は忌々しそうに悟とヒル魔を見比べ、大きく舌打ちをした。
「雑魚同士、馴れ合ってろ。……いずれその汚ねぇ居場所ごと潰してやる」
阿含はそれだけを残し、背中を向けた。
二人、残された校門の前。
阿含の気配が消えた途端、悟の全身の力が抜け、膝から崩れ落ちそうになる。
「……ぁ……」
「ケケッ、いつまで震えてやがる」
ヒル魔はそう言いながらも、悟の腕を支え、ゆっくりと立ち上がらせた。
いつも通りの毒舌。けれど彼女の震えが止まるまで、無言で、ずっと側を離れない。
「……ヒル魔さん、ありがとうございます。……助けてくれて」
「勘違いすんな。手持ちのカードを奪われて、黙ってるプレイヤーはいねぇってだけだ」
ぶっきらぼうな答え。阿含の支配から救い出し、「一人の人間」として肯定するヒル魔の温かさに、悟の胸にじわじわと安堵の気持ちが広がる。
早くなる鼓動にふと気付く。ヒル魔の横顔を見つめながら、悟の胸に温かく、けれど切ない感情が灯り始めていた。
「……ケケケ、礼なら試合で返しやがれ。行くぞ」
「はい、ヒル魔さん!」
悟は彼の背中を追いかけ、歩き出す。
悪魔の腕の中に、安らぎを見つけた自分に、戸惑いながら。
ふと、背筋を凍りつかせるような、刺すような殺気が悟の肌を撫でた。
「……あ」
そこに立っていたのは、ドレッドヘアを揺らし、不機嫌そうに眉間にシワを寄せている悟の兄、金剛阿含だった。
「あ゛〜、出涸らしが。……テメー、何をしてる」
阿含の声は低く、逃げ場を奪うような重圧を持って響く。彼は悟を見て、嫌悪感を隠そうともせずに鼻を鳴らした。彼女がアメフト部に入部したことを聞きつけてきたのだ。
「あれほど、二度とアメフトなんて口にするなと言ったはずだ。泥門のカス共に混じって、アメフトごっこかよ。俺のツラに泥を塗る気か?」
阿含の指が、悟の左腕――かつて彼自身が刻んだあの傷跡を、乱暴に掴み上げた。
「っ……痛い」
「痛ぇ? 笑わせんな。出来損ないが
阿含の瞳の奥には、冷酷な拒絶と同時に、ドロリとした執着が渦巻いていた。
危険な場所に立たせたくない。比較され、他人に揶揄され傷つく姿を見たくない。戦う資格などないと思い込ませて、二度と傷つかない場所に閉じ込めておきたい。それは、あまりにも歪で一方的な阿含の「保護欲」。
過去の記憶が蘇り、悟の足が震える。しかし彼女の脳裏には、泥にまみれながら笑うセナや栗田、微笑むまもり、そして不敵に笑うヒル魔の顔が浮かんでいた。
「私は……、……ここで、戦いたい。…今の場所で、自分の価値を見つけたい」
絞り出した微かな声。阿含の眉がピクリと跳ねた。
忌々しい左腕の傷の件以降、今まで一度も逆らわなかった「出来損ない」の反抗。阿含がさらに指に力を込めた、その時だった。
ババババババァン!!
耳を劈く銃声。アスファルトに数発の弾丸が撃ち込まれ、硝煙の香りが漂う。
「ケケケ、うちの選手に勝手に触ってんじゃねぇよ、
悟が振り返ると、そこにはアサルトライフルを肩に担いだヒル魔が立っていた。
彼は阿含の放つ圧倒的な威圧感を、まるで日常の騒音のように鼻で笑って受け流すと、迷うことなく悟の隣へと歩み寄る。
「……ゴミ溜めの主が、何の用だ。死にてぇのか」
阿含の目が据わる。だがヒル魔はニヤリと笑うと、悟の肩を力強く抱き寄せ、自分の方へと引き寄せた。
「えっ……!?」
しっかりと、拒むことのできない強さで抱え込まれる。
ヒル魔の体温と、火薬の香りが間近に迫る。
それは、誰にも渡さないと主張するような、傲慢で無自覚な独占欲の形だった。
「こいつは俺が見つけた『最高のカード』だ。今更テメーに返す義理はねぇんだよ。……コイツは俺のもんだ。勝手に弄るんじゃねぇよ、
「……チッ」
阿含は忌々しそうに悟とヒル魔を見比べ、大きく舌打ちをした。
「雑魚同士、馴れ合ってろ。……いずれその汚ねぇ居場所ごと潰してやる」
阿含はそれだけを残し、背中を向けた。
二人、残された校門の前。
阿含の気配が消えた途端、悟の全身の力が抜け、膝から崩れ落ちそうになる。
「……ぁ……」
「ケケッ、いつまで震えてやがる」
ヒル魔はそう言いながらも、悟の腕を支え、ゆっくりと立ち上がらせた。
いつも通りの毒舌。けれど彼女の震えが止まるまで、無言で、ずっと側を離れない。
「……ヒル魔さん、ありがとうございます。……助けてくれて」
「勘違いすんな。手持ちのカードを奪われて、黙ってるプレイヤーはいねぇってだけだ」
ぶっきらぼうな答え。阿含の支配から救い出し、「一人の人間」として肯定するヒル魔の温かさに、悟の胸にじわじわと安堵の気持ちが広がる。
早くなる鼓動にふと気付く。ヒル魔の横顔を見つめながら、悟の胸に温かく、けれど切ない感情が灯り始めていた。
「……ケケケ、礼なら試合で返しやがれ。行くぞ」
「はい、ヒル魔さん!」
悟は彼の背中を追いかけ、歩き出す。
悪魔の腕の中に、安らぎを見つけた自分に、戸惑いながら。