第一章【春季大会編】
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
王城戦の翌日、悟の体は悲鳴を上げていた。
トライデントタックルの衝撃で負った打ち身が、動くたびに鈍く痛む。それでも不思議と彼女の足取りは軽かった。あの進清十郎という圧倒的な壁に一矢報いたからだ。
「……あ」
悟の携帯に届いた一通のメール。
『今すぐ部室に来い。逃げたら殺す。』
送り主は言うまでもなくヒル魔である。
通い慣れ始めた部室で待っていたのは筋トレの器具ではなく、山のようなビデオテープと書類の束だった。
「目標はクリスマスボウル、本番は秋大会だ。休んでる暇なんかねぇんだよ。悟、テメーどうせ筋肉痛と打撲でまともに練習できやしねぇんだ。資料整理に付き合え。」
「……はい、わかりました」
悟は彼の指示の元、データを整理し始めた。
隣ではヒル魔が、パソコンのモニターを眺め、どこかのチームの偵察データを確認しながら複雑な戦略図を組み立てている。
(……すごい。本当に一人で全部やってるんだ)
ヒル魔は「悪魔」と呼ばれ、皆に恐れられている。だが、こうして隣で作業をしているとよく分かる。誰よりも勝利に誠実で、誰よりも泥臭い努力を積み重ねているのは、ヒル魔なのだ。
「……ヒル魔さんって、本当は誰よりもチームのことを考えてるんですね」
思わず悟の口から漏れた言葉に、ヒル魔の手が止まる。
「ケケッ、余計なこと考えてる暇があったら手を動かせ」
「あ……すみません」
乱暴に頭を小突かれるが、その手はちっとも痛くない。むしろ、少しだけ温かい温度が伝わってきた気がして、悟は上機嫌で作業に戻った。
夕方。足りなくなった備品を買いに、悟とヒル魔の二人で街へ出た。
重いスポーツドリンクの入った袋を抱えようとした悟の手から、ヒル魔が無造作に荷物を奪い取る。
「あ、私が持ちます! 荷物持ちですから」
「効率が悪ィんだよ。テメーがトロいせいで無駄に時間かかンだろうが」
毒づきながらも、ヒル魔は半分以上の荷物を片手で軽々と運んでいる。
悟がその背中を追いかけていると、ゲーセンの入り口で十文字らハァハァ三兄弟と鉢合わせた。
「おい、悟! またヒル魔にこき使われてんのかよ!」
十文字が眉を吊り上げ、ヒル魔を睨みつける。
「ううん!違うよ十文字くん。これは部の買い出し。……私、アメフト部が楽しくて仕方ないよ」
悟が柔らかく笑うと、十文字は少し安心したように、そして仕方がないなというように息をついた。
沈黙を続けていたヒル魔が、悟の襟首をひょいと掴んで自分の傍へ引き寄せる。
「遊んでる暇はねぇんだよ。行くぞ」
何故か不機嫌そうなヒル魔に引きずられながら、悟は「またね」と十文字たちに手を振った。
二人が部室に戻ると、自主トレをしていたセナと栗田、そして差し入れを持ってきたまもりがいた。
「お前ら全員、遊んでる余裕があるなら死ぬまで練習しろ!」
ヒル魔の銃声が響くが、誰も逃げ出さない。
机の上に並べられたまもりイチオシのシュークリームを囲み、反省会という名の賑やかな雑談会が始まる。
(……暖かいな)
ここでは皆が笑い、ぶつかり合い、同じ目標を見つめている。
帰り際。
ヒル魔と悟を除き誰もいなくなった部室で、ヒル魔がふと呟いた。
「……悟。秋は負けねぇぞ」
その声は、悪魔の命令ではなく、一人の戦友への誓いのように聞こえた。
「はい、ヒル魔さん!」
悟が力強く頷く。
この悪魔の隣で、もっと強くなりたい。悟は心からそう願った。
トライデントタックルの衝撃で負った打ち身が、動くたびに鈍く痛む。それでも不思議と彼女の足取りは軽かった。あの進清十郎という圧倒的な壁に一矢報いたからだ。
「……あ」
悟の携帯に届いた一通のメール。
『今すぐ部室に来い。逃げたら殺す。』
送り主は言うまでもなくヒル魔である。
通い慣れ始めた部室で待っていたのは筋トレの器具ではなく、山のようなビデオテープと書類の束だった。
「目標はクリスマスボウル、本番は秋大会だ。休んでる暇なんかねぇんだよ。悟、テメーどうせ筋肉痛と打撲でまともに練習できやしねぇんだ。資料整理に付き合え。」
「……はい、わかりました」
悟は彼の指示の元、データを整理し始めた。
隣ではヒル魔が、パソコンのモニターを眺め、どこかのチームの偵察データを確認しながら複雑な戦略図を組み立てている。
(……すごい。本当に一人で全部やってるんだ)
ヒル魔は「悪魔」と呼ばれ、皆に恐れられている。だが、こうして隣で作業をしているとよく分かる。誰よりも勝利に誠実で、誰よりも泥臭い努力を積み重ねているのは、ヒル魔なのだ。
「……ヒル魔さんって、本当は誰よりもチームのことを考えてるんですね」
思わず悟の口から漏れた言葉に、ヒル魔の手が止まる。
「ケケッ、余計なこと考えてる暇があったら手を動かせ」
「あ……すみません」
乱暴に頭を小突かれるが、その手はちっとも痛くない。むしろ、少しだけ温かい温度が伝わってきた気がして、悟は上機嫌で作業に戻った。
夕方。足りなくなった備品を買いに、悟とヒル魔の二人で街へ出た。
重いスポーツドリンクの入った袋を抱えようとした悟の手から、ヒル魔が無造作に荷物を奪い取る。
「あ、私が持ちます! 荷物持ちですから」
「効率が悪ィんだよ。テメーがトロいせいで無駄に時間かかンだろうが」
毒づきながらも、ヒル魔は半分以上の荷物を片手で軽々と運んでいる。
悟がその背中を追いかけていると、ゲーセンの入り口で十文字らハァハァ三兄弟と鉢合わせた。
「おい、悟! またヒル魔にこき使われてんのかよ!」
十文字が眉を吊り上げ、ヒル魔を睨みつける。
「ううん!違うよ十文字くん。これは部の買い出し。……私、アメフト部が楽しくて仕方ないよ」
悟が柔らかく笑うと、十文字は少し安心したように、そして仕方がないなというように息をついた。
沈黙を続けていたヒル魔が、悟の襟首をひょいと掴んで自分の傍へ引き寄せる。
「遊んでる暇はねぇんだよ。行くぞ」
何故か不機嫌そうなヒル魔に引きずられながら、悟は「またね」と十文字たちに手を振った。
二人が部室に戻ると、自主トレをしていたセナと栗田、そして差し入れを持ってきたまもりがいた。
「お前ら全員、遊んでる余裕があるなら死ぬまで練習しろ!」
ヒル魔の銃声が響くが、誰も逃げ出さない。
机の上に並べられたまもりイチオシのシュークリームを囲み、反省会という名の賑やかな雑談会が始まる。
(……暖かいな)
ここでは皆が笑い、ぶつかり合い、同じ目標を見つめている。
帰り際。
ヒル魔と悟を除き誰もいなくなった部室で、ヒル魔がふと呟いた。
「……悟。秋は負けねぇぞ」
その声は、悪魔の命令ではなく、一人の戦友への誓いのように聞こえた。
「はい、ヒル魔さん!」
悟が力強く頷く。
この悪魔の隣で、もっと強くなりたい。悟は心からそう願った。