第三章【秋季大会・地区大会編】
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秋晴れの空の下、本日は泥門高校体育祭。
ヒル魔にとって、そんな行事は次の試合に向けた貴重な練習時間を削る厄介なイベントでしかなかった。
「体育祭なんざ出てる暇……ん?」
朝練の片付けの最中、体育祭の組み分け表を鬱陶しそうに眺めていたヒル魔の動きがピタリと止まった。
「……俺と糞マネと糞ハゲ以外は、赤組か」
泥門デビルバッツの主力である悟、セナ、モン太、そしてラインの十文字や黒木、戸叶たち。そのほとんどが「赤組」に偏っていた。対して、ヒル魔、まもり、雪光の三人が「白組」だ。
その極端な偏りを見た瞬間、ヒル魔の口角が耳元まで裂けんばかりに吊り上がった。
「……ケケケ、こりゃあ面白ェ。この体育祭使って、西武対策、キッドの『ショットガン』封じだ……!」
その背後から、ドス黒く禍々しい妖気が立ち込めた。
体育着に着替えた泥門アメフト部一同は、ヒル魔の周囲に立ち込める邪悪なオーラに身震いをしていた。
具体的に何を画策しているのかは分からずとも、あの悪魔が学校行事を純粋に楽しむはずがない。この体育祭を利用して、何か良からぬ計画を立てていることだけは明白だった。
「ケケケケ!!!」
グラウンドにヒル魔の凶悪な高笑いが響き渡る。
開会式を待つ各組は、アメフト部のみならず、急にやる気をみなぎらせた悪魔の姿に震え上がっていた。
「いかにも体育祭なんて興味なさそうなのに……何か企んでるのは間違いないね…」
赤組のハチマキを締めた悟が、怪訝な表情でヒル魔を窺う。
すると、ヒル魔が同じ白組のまもりと雪光に歩み寄り、何やらコソコソと耳打ちをした。
次の瞬間――。
「おほほ! 赤組なんて蹴散らしてあげるわ!!」
「ガッテンダ! わはは!」
普段の穏やかで常識的な二人からは想像もつかない、異様なテンションの雄叫びが上がった。
「えええええ……!!」
ヒル魔の脅し、あるいは洗脳に等しい「何か」によって、あの二人の人格が完全に書き換えられてしまったのだ。
「……全力で勝ちにいくべきっていう事だけは、わかった」
悟がこめかみに一筋の冷や汗を流しながら呟くと、セナも顔面を蒼白にして震え上がった。
「き、きっと負けたら恐ろしいことが……!! 」
打倒白組。生存本能から来る強烈な恐怖によって、図らずも赤組のアメフト部員たちの結束は、鋼のように固まっていた。
「でもよぉ……あの『泥門頭良いトリオ』、敵に回すと厄介そうだよな……」
緊急ミーティングの中、モン太がぽつりと核心を突く。
ヒル魔の卓越した頭脳、まもりの完璧なサポート能力、そして雪光の豊富な知識量。力やスピードというフィジカル面では赤組が上回っていても、競技のルールの裏をかく頭脳戦に持ち込まれれば、いいように弄ばれてしまうのは火を見るより明らかだった。
「赤組のメンツで、頭が良いやつってーと……」
モン太が腕を組み、赤組のメンバーをぐるりと見渡す。そして、全員の視線が、ある二人の人物に一斉に集中した。
「悟! 十文字! 作戦立案は任せたからな!」
「「は!?」」
突然の指名に、悟と十文字の素っ頓狂な声が重なる。
「ど、どう考えても荷が重すぎるよ!」
慌てて手を振る悟。勤勉で学業においても好成績を納める彼女だが、日頃からヒル魔に戦術を叩き込まれているからこそ、得体の知れない妖気を放つその悪魔を相手に頭脳戦で立ち向かうなど、あまりに恐れ多いと拒否を示す。
「ヒル魔の思考を理解してる悟と、人をまとめるっつー意味での十文字のペアは理にかなってるかもな……」
戸叶が冷静な声で分析を下すと、黒木がバンッと十文字の背中を叩いた。
「ヨシ! 赤組の命運はお前らに任せた!」
「マジかよ……!!」
逃げ道を塞がれ、悟と十文字はじっとりと冷たい汗をかきながら、お互いの顔を見合わせた。
「……やるしかない雰囲気だよね」
悟が引きつった笑みを浮かべる。
対する十文字は、観念したかのように深く、長いため息を一つ吐き出した。
「……やるからには全力だ。悟、勝ちに行くぞ!!」
腹を括った十文字の、頼もしい声が、赤組の空気をビリッと引き締める。普段はヒル魔の陰に鳴りを潜めているが、十文字には持ち前のリーダーシップがあるのだ。
その男気に引っ張られるように、悟が声を震わせながらも、ヒル魔に立ち向かう覚悟を決めた。
「う、うん! 頑張ろう!!」
かくして、得体の知れない邪悪な計画を企む悪魔に対抗すべく、優等生と不良、悟と十文字による赤組の即席「凸凹コンビ」が誕生した。波乱に満ちた泥門高校体育祭の火蓋が、今、切って落とされようとしていた。
ヒル魔にとって、そんな行事は次の試合に向けた貴重な練習時間を削る厄介なイベントでしかなかった。
「体育祭なんざ出てる暇……ん?」
朝練の片付けの最中、体育祭の組み分け表を鬱陶しそうに眺めていたヒル魔の動きがピタリと止まった。
「……俺と糞マネと糞ハゲ以外は、赤組か」
泥門デビルバッツの主力である悟、セナ、モン太、そしてラインの十文字や黒木、戸叶たち。そのほとんどが「赤組」に偏っていた。対して、ヒル魔、まもり、雪光の三人が「白組」だ。
その極端な偏りを見た瞬間、ヒル魔の口角が耳元まで裂けんばかりに吊り上がった。
「……ケケケ、こりゃあ面白ェ。この体育祭使って、西武対策、キッドの『ショットガン』封じだ……!」
その背後から、ドス黒く禍々しい妖気が立ち込めた。
体育着に着替えた泥門アメフト部一同は、ヒル魔の周囲に立ち込める邪悪なオーラに身震いをしていた。
具体的に何を画策しているのかは分からずとも、あの悪魔が学校行事を純粋に楽しむはずがない。この体育祭を利用して、何か良からぬ計画を立てていることだけは明白だった。
「ケケケケ!!!」
グラウンドにヒル魔の凶悪な高笑いが響き渡る。
開会式を待つ各組は、アメフト部のみならず、急にやる気をみなぎらせた悪魔の姿に震え上がっていた。
「いかにも体育祭なんて興味なさそうなのに……何か企んでるのは間違いないね…」
赤組のハチマキを締めた悟が、怪訝な表情でヒル魔を窺う。
すると、ヒル魔が同じ白組のまもりと雪光に歩み寄り、何やらコソコソと耳打ちをした。
次の瞬間――。
「おほほ! 赤組なんて蹴散らしてあげるわ!!」
「ガッテンダ! わはは!」
普段の穏やかで常識的な二人からは想像もつかない、異様なテンションの雄叫びが上がった。
「えええええ……!!」
ヒル魔の脅し、あるいは洗脳に等しい「何か」によって、あの二人の人格が完全に書き換えられてしまったのだ。
「……全力で勝ちにいくべきっていう事だけは、わかった」
悟がこめかみに一筋の冷や汗を流しながら呟くと、セナも顔面を蒼白にして震え上がった。
「き、きっと負けたら恐ろしいことが……!! 」
打倒白組。生存本能から来る強烈な恐怖によって、図らずも赤組のアメフト部員たちの結束は、鋼のように固まっていた。
「でもよぉ……あの『泥門頭良いトリオ』、敵に回すと厄介そうだよな……」
緊急ミーティングの中、モン太がぽつりと核心を突く。
ヒル魔の卓越した頭脳、まもりの完璧なサポート能力、そして雪光の豊富な知識量。力やスピードというフィジカル面では赤組が上回っていても、競技のルールの裏をかく頭脳戦に持ち込まれれば、いいように弄ばれてしまうのは火を見るより明らかだった。
「赤組のメンツで、頭が良いやつってーと……」
モン太が腕を組み、赤組のメンバーをぐるりと見渡す。そして、全員の視線が、ある二人の人物に一斉に集中した。
「悟! 十文字! 作戦立案は任せたからな!」
「「は!?」」
突然の指名に、悟と十文字の素っ頓狂な声が重なる。
「ど、どう考えても荷が重すぎるよ!」
慌てて手を振る悟。勤勉で学業においても好成績を納める彼女だが、日頃からヒル魔に戦術を叩き込まれているからこそ、得体の知れない妖気を放つその悪魔を相手に頭脳戦で立ち向かうなど、あまりに恐れ多いと拒否を示す。
「ヒル魔の思考を理解してる悟と、人をまとめるっつー意味での十文字のペアは理にかなってるかもな……」
戸叶が冷静な声で分析を下すと、黒木がバンッと十文字の背中を叩いた。
「ヨシ! 赤組の命運はお前らに任せた!」
「マジかよ……!!」
逃げ道を塞がれ、悟と十文字はじっとりと冷たい汗をかきながら、お互いの顔を見合わせた。
「……やるしかない雰囲気だよね」
悟が引きつった笑みを浮かべる。
対する十文字は、観念したかのように深く、長いため息を一つ吐き出した。
「……やるからには全力だ。悟、勝ちに行くぞ!!」
腹を括った十文字の、頼もしい声が、赤組の空気をビリッと引き締める。普段はヒル魔の陰に鳴りを潜めているが、十文字には持ち前のリーダーシップがあるのだ。
その男気に引っ張られるように、悟が声を震わせながらも、ヒル魔に立ち向かう覚悟を決めた。
「う、うん! 頑張ろう!!」
かくして、得体の知れない邪悪な計画を企む悪魔に対抗すべく、優等生と不良、悟と十文字による赤組の即席「凸凹コンビ」が誕生した。波乱に満ちた泥門高校体育祭の火蓋が、今、切って落とされようとしていた。