第一章【春季大会編】
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「………………」
放課後のグラウンド。過去の重い記憶に飲み込まれそうになっていた悟の耳を、至近距離で放たれた衝撃音が貫いた。
ババババァン!!
「テメーいつまでボサッとしてやがる! ターゲット練習だ!」
「 す、すみませんヒル魔さん!」
悟は謝りながら、慌ててポジションにつく。ヒル魔の無茶苦茶なシゴキが、彼女を「過去」から「グラウンド」へと引き戻す。
「ケケッ、動き出しが1秒遅ぇぞ。ご自慢の反射速度はどうした……行くぞ、死ぬ気でキャッチしやがれ!」
投げられた鋭いパスを、悟 は泥まみれになりながらも掴み取る。その様子を見て、ヒル魔が僅かに口角を上げたのを悟は見逃さなかった。
春季大会2回戦、王城ホワイトナイツ戦。
現実は甘くなかった。
最強の守備、そして天才・進清十郎。
悟の「神速のインパルス」を持ってしても、彼の超人的な動きは捉えきれなかった。視えていても、彼が繰り出すタックル「トライデントタックル」からは逃れられず、悟の体は弾き飛ばされた。
スコアは圧倒的な差。チームの負けは、誰の目にも明らかだった。
ヒル魔が「勝てる見込みのない試合」と判断し、助っ人たちが戦意を喪失する中、泥まみれで立ち上がったのはセナだった。
「ヒル魔さん……もしかしたら。もしかしたら、進さんを抜けるかもしれないな…、なんて…」
その瞳に宿る強い光に、悟は息を呑んだ。
「勝ちてぇのか、進に」
ヒル魔はニヤリと笑い、アサルトライフルを空へ向けてぶっ放す。
「ケケケ、面白ぇ……! 全員死ぬ気でアイシールド21の道をこじ開けやがれ!」
ラストプレイ。点差をひっくり返すことはできない、無意味な悪足掻き。
けれど、「勝つため」の足掻き。
「悟、テメーは盾だ!アイシールドが進にぶつかるまでの動く盾だ。……できるな?」
「……はい! !」
悟はセナと共に全力で走り出した。
セナを先導し、彼の道を阻まんとする王城ディフェンスに食らいつく。
セナと進の真っ向勝負を、他の誰にも邪魔させないために。
(勝って!セナくん…アイシールド21!)
セナが光速の世界に到達し、進清十郎を抜き去る。
ただ一度だけ。
試合は完敗だ。それでも一矢報いたその瞬間は、間違いなくセナが「勝った」瞬間だった。