第三章【秋季大会・地区大会編】
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独播スコーピオンズを退け、部室は祭りのような熱気に包まれていた。
テーブルには注文したばかりのピザが広げられている。セナやモン太、三兄弟たちが声を上げて笑い合い、秋大会の快進撃を祝して盛り上がっている。
その騒がしさの中で、部屋の隅にあるソファに座るヒル魔と悟の間にだけは、張り詰めた空気が漂っていた。
「……チームの主軸はやはり筧駿ですね。冷静さ、責任感の強さ……能力のみならず会話からリーダーとしての資質の高さが窺えました。正義感が強く生真面目な面があるので、ブラフは効かずとも、挑発や煽りでの精神的な揺さぶりは有効かもしれません」
悟はノートを見つめながら、ヒル魔に「スパイ」で得た情報を報告する。ヒル魔はノートパソコンに映る巨深の試合映像を眺めながら耳を傾けていた。
「あと、ラインの水町健吾ですが……小結くんの小柄さを『穴』と評してました。確実にマッチアップしてくるかと」
「ケケッ、水町と糞デブJrの身長差は40センチ以上あっからな。『高身長』はアドバンテージだ」
悟は小結の顔をチラリと見て、深く息を吐いた。小結にとっても、そして悟にとっても、「体格差」は乗り越えるべき高い壁だ。
つい先日、セナと話した「本物」のアイシールド21の話が脳裏に浮かぶ。
「……巨深戦は、『体格差』が間違いなく勝敗のキーになりますね」
二人が戦略を練っていると、ファイルを複数抱えたまもりが声をかけてきた。
「対賊学の巨深の試合データ! まとめた分、とりあえず渡しちゃうね!」
ドサリと分厚いファイルが積まれる。悟はその仕事の速さに、思わず目を丸くした。
「ありがとうございます! ……あの、これ、早すぎませんか……!?」
「ふふ、まだ全部じゃないから、残りは明日渡すね! 録画した映像も、明日までに選手ごとに編集しておくから!」
まもりは笑顔で答えると、悟の傍を離れ、すぐさま作業へとりかかった。
驚愕する悟をよそに、ヒル魔は当然だと言わんばかりに資料を捲る。
「そんな顔してる暇はねぇぞ。貴重なデータだ。一字一句逃さず全て頭に叩き込め」
二人が勝利の余韻に浸る間もなく巨深攻略に勤しんでいると、急に視界に影が落ちた。モン太とセナが目の前に立っている。
「難しい話は一旦それくらいにして、悟も食べよーぜ! お前がいないと始まらないだろ!」
「はい、お皿! コーラもあるよ、飲む?」
セナにニコニコと紙皿とコップを差し出され、悟は強引に輪の中心へ引きずり込まれる。
「私は今日試合に出てないんだけどね……」
「細かい事は良いんだよ! 仲間なんだからさ!」
モン太の無邪気な笑顔に、悟は「もう……」と苦笑する。
悟が席につくと、待ってましたと言わんばかりに彼女に椅子を寄せる人物が2人。
「おい、悟!独播の焦りっぷり見たかよ! ヒル魔さんの作戦通りに動かされてるのも気づかねぇで、必死に癖読んでやんの!」
「な!それに俺たちの壁 も完璧だったろ?」
黒木と戸叶は、悟に独播戦での武勇伝を聞い欲しくてたまらないといった様相だ。
「俺のキャッチも見せ場だっただろ!なぁ悟、見てたよな!」
モン太が割って入り、いよいよ収拾がつかなくなりそうだと思った悟が、暴れ馬を嗜めるようにストップをかける。
「一人ずつ聞かせて!確かにすごかったし、皆、かっこよかったよ」
仲間の手柄話を聞きながら、悟が楽しげに笑う。対面に座り、穏やかに悟を眺めていた十文字がふと、話を切り出す。
「悟。お前、例のスパイ活動の方はどうだったんだよ。巨深の連中、何かボロは出したのか?」
「……ボロが出たのは私の方というか」
気まずそうに視線をそらしながら出た悟の言葉に、十文字は眉をひそめた。
「あ?まさかバレたのか?大丈夫だったのかよ」
「巨深を怒らせちゃったかな…、まあ、多少なりとも情報的な収穫はあったし、問題無いよ」
十文字は「本当かよ」とでも言いたげな訝しげな顔を浮かべた。
勝利の余韻が冷めやらぬ空気の中、悟はピザを手に取り、肩の力を抜く。
「やっぱり私も試合、出たかったな」
悟はこの騒がしくも温かい場所にずっといたいと願う。負ければトーナメントは終わってしまう。この場所を守るために、自分は巨深という強敵に立ち向かうのだ。
ヒル魔にに手を引かれたあの日から。泥門デビルバッツというチームに居られる幸せを、彼女は改めて噛み締めていた。
テーブルには注文したばかりのピザが広げられている。セナやモン太、三兄弟たちが声を上げて笑い合い、秋大会の快進撃を祝して盛り上がっている。
その騒がしさの中で、部屋の隅にあるソファに座るヒル魔と悟の間にだけは、張り詰めた空気が漂っていた。
「……チームの主軸はやはり筧駿ですね。冷静さ、責任感の強さ……能力のみならず会話からリーダーとしての資質の高さが窺えました。正義感が強く生真面目な面があるので、ブラフは効かずとも、挑発や煽りでの精神的な揺さぶりは有効かもしれません」
悟はノートを見つめながら、ヒル魔に「スパイ」で得た情報を報告する。ヒル魔はノートパソコンに映る巨深の試合映像を眺めながら耳を傾けていた。
「あと、ラインの水町健吾ですが……小結くんの小柄さを『穴』と評してました。確実にマッチアップしてくるかと」
「ケケッ、水町と糞デブJrの身長差は40センチ以上あっからな。『高身長』はアドバンテージだ」
悟は小結の顔をチラリと見て、深く息を吐いた。小結にとっても、そして悟にとっても、「体格差」は乗り越えるべき高い壁だ。
つい先日、セナと話した「本物」のアイシールド21の話が脳裏に浮かぶ。
「……巨深戦は、『体格差』が間違いなく勝敗のキーになりますね」
二人が戦略を練っていると、ファイルを複数抱えたまもりが声をかけてきた。
「対賊学の巨深の試合データ! まとめた分、とりあえず渡しちゃうね!」
ドサリと分厚いファイルが積まれる。悟はその仕事の速さに、思わず目を丸くした。
「ありがとうございます! ……あの、これ、早すぎませんか……!?」
「ふふ、まだ全部じゃないから、残りは明日渡すね! 録画した映像も、明日までに選手ごとに編集しておくから!」
まもりは笑顔で答えると、悟の傍を離れ、すぐさま作業へとりかかった。
驚愕する悟をよそに、ヒル魔は当然だと言わんばかりに資料を捲る。
「そんな顔してる暇はねぇぞ。貴重なデータだ。一字一句逃さず全て頭に叩き込め」
二人が勝利の余韻に浸る間もなく巨深攻略に勤しんでいると、急に視界に影が落ちた。モン太とセナが目の前に立っている。
「難しい話は一旦それくらいにして、悟も食べよーぜ! お前がいないと始まらないだろ!」
「はい、お皿! コーラもあるよ、飲む?」
セナにニコニコと紙皿とコップを差し出され、悟は強引に輪の中心へ引きずり込まれる。
「私は今日試合に出てないんだけどね……」
「細かい事は良いんだよ! 仲間なんだからさ!」
モン太の無邪気な笑顔に、悟は「もう……」と苦笑する。
悟が席につくと、待ってましたと言わんばかりに彼女に椅子を寄せる人物が2人。
「おい、悟!独播の焦りっぷり見たかよ! ヒル魔さんの作戦通りに動かされてるのも気づかねぇで、必死に癖読んでやんの!」
「な!それに俺たちの
黒木と戸叶は、悟に独播戦での武勇伝を聞い欲しくてたまらないといった様相だ。
「俺のキャッチも見せ場だっただろ!なぁ悟、見てたよな!」
モン太が割って入り、いよいよ収拾がつかなくなりそうだと思った悟が、暴れ馬を嗜めるようにストップをかける。
「一人ずつ聞かせて!確かにすごかったし、皆、かっこよかったよ」
仲間の手柄話を聞きながら、悟が楽しげに笑う。対面に座り、穏やかに悟を眺めていた十文字がふと、話を切り出す。
「悟。お前、例のスパイ活動の方はどうだったんだよ。巨深の連中、何かボロは出したのか?」
「……ボロが出たのは私の方というか」
気まずそうに視線をそらしながら出た悟の言葉に、十文字は眉をひそめた。
「あ?まさかバレたのか?大丈夫だったのかよ」
「巨深を怒らせちゃったかな…、まあ、多少なりとも情報的な収穫はあったし、問題無いよ」
十文字は「本当かよ」とでも言いたげな訝しげな顔を浮かべた。
勝利の余韻が冷めやらぬ空気の中、悟はピザを手に取り、肩の力を抜く。
「やっぱり私も試合、出たかったな」
悟はこの騒がしくも温かい場所にずっといたいと願う。負ければトーナメントは終わってしまう。この場所を守るために、自分は巨深という強敵に立ち向かうのだ。
ヒル魔にに手を引かれたあの日から。泥門デビルバッツというチームに居られる幸せを、彼女は改めて噛み締めていた。