第三章【秋季大会・地区大会編】
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泥門デビルバッツ秋季大会2回戦。
逆シードをでないほとんどのチームにとって大会初戦となるこの日。
瀧夏彦の長身を活かしたパスキャッチと、セナの切り札「デビルバッドゴースト」の鮮烈なお披露目により、泥門デビルバッツは危なげなく勝利を収めた。
会場の観客席では、王城や西部が厳しい眼差しを向けている。
試合後、会場を出たところで、悟はセナの表情がどこか浮かないことに気が付いた。
「……セナ。快勝だったのに浮かない顔だね」
セナは、少し視線を落としながら小声で告白した。
「……会場で、巨深ポセイドンの筧って人に聞いたんだけど。……『アイシールド21』は実在してるって」
「……ノートルダム大学付属で活躍した日本人ランニングバッグが実在するって事…?」
唐突に判明した、「本物のアイシールド21」の存在。
「『本物』は長身で体格もいいって……。僕みたいな小柄な体格じゃ、本物の足元にも及ばないって……」
「『本物』……ね…」
女性という制約を抱える悟にとって、「生まれ持った体格」という悩みは他人事ではなかった。
悟はセナの肩に手を置き、真っ直ぐに見つめる。
「セナ。自分に無いものについてあれこれ悩むより、今あるもので闘う方法を考える……っていうのはどう?」
「今、あるもので……」
「そう。弱点は弱点だと認めたうえで…。やれることはたくさんあるよ。勝つために、何でもやろう」
悟の力強い言葉に、セナの瞳から迷いが消える。
弱気になっている暇なんてない――二人は改めて、勝利のために誰よりも貪欲である覚悟を決めた。
勝利を収めた泥門一同は、打ち上げとして焼き肉店を訪れた。店内は肉の焼ける香りと熱気に包まれている。偶然にも同じく打ち上げの王城と鉢合わせ、成り行きで合同打ち上げ会のような盛り上がりに。
「選手で付き合ってる人とか、そういうのは全然ないですよー!」
女性陣の集まる席では王城のマネージャー若菜の言葉を皮切りに、鈴音の主導で恋バナが加速する。
「いや〜、うちは悟が最近かなり怪しいんだよねぇ?実際どうなの?進展あるなら教えなさいよー!」
「鈴音……!」
いたたまれなくなった悟が席を立ち、逃げ出すように移動した先は、王城クォーターバッグ、高見が腰を下ろすテーブルだった。
「やぁ、良かったら一緒にどうだい?」
高見が穏やかに微笑む。
「網乃戦見させてもらったよ。『悪魔の予言 』…だったかな?」
その眼鏡が、照明を反射してキラリと光った。
「あれはどういうカラクリなんだい?君が神龍寺の金剛兄弟の妹で、『神速のインパルス』を持っている事を前提に、その派生であるとは推測しているんだけど」
「それは……」
悟が言葉に詰まったその時。ヒル魔の鋭い声が二人の会話を遮った。
「バカ正直にペラペラ話そうとしてんじゃねーよ。情報集めようっつー魂胆丸見えじゃねぇか」
「人聞きの悪い…少し話してただけさ。他愛もない話をね」
そう言いながら眼鏡を押し上げる高見。
「ケケ、その他愛もない話とやらに俺も混ぜてくれよ。……『巨大弓 』ってぇのは王城のディフェンスの新作戦だったか?」
「さぁ…西洋の古代兵器のことじゃないかな?」
ヒル魔と高見、二人の知将の間で、探り合い、カマの掛け合いが勃発する。
「悟! そんな怖ぇ卓にいねぇでこっち来いよ!」
その緊張感から悟を引き剥がすように、十文字が声を上げる。呼ばれるがまま移動した先では、泥門と王城による「焼き肉大食い勝負」が勃発していた。
「お! 悟! どこほっつき歩いてたんだよ、ほらもっと食え!」
戸叶が豪快に笑いながら、肉が山盛りの取り皿を悟に押し付ける。
「ありがと…って、え、あ、ちょっと、これはさすがに……!」
「焼き肉代賭けて王城と勝負してんだ! お前も協力しろよ!」
黒木が有無を言わさぬ勢いで網の上に肉を並べていく。
「……自信ないなぁ」
「四の五の言うな! 限界まで食え!」
悟は目の前の肉の山と、勝負に殺気立った男たちの狭間で、ため息をつきながらも箸を握りしめた。
黙々と肉を口に運ぶ悟の隣に、十文字がどかりと座る。
「隣座んぞ。……ホラ、それ寄越せ」
悟に押し付けられた肉が山盛りの皿を、十文字はさりげなく自分の席に寄せる。悟はその気遣いにお礼を言おうとするも、肉を飲み込めず、モグモグと口を動かし続ける。その様子を見た十文字が、新しいおしぼりを彼女に手渡しながら、心底愉快そうに笑みを溢した。
「ははっ、口の端拭けよ。いっぺんに詰め込みすぎだろ、リスみたいになってんぞ」
悟はようやく口内の肉を飲み込み、口元をおしぼりで拭いながら羞恥に少しだけ頬を赤く染めた。
「皆が急かすから…!」
秘密の女子会合、知将たちの情報戦、意地の張り合いの大食い勝負。
泥門デビルバッツの宴は、トーナメントの過酷さをひととき忘れさせるような、どこまでも騒がしい夜となった。
逆シードをでないほとんどのチームにとって大会初戦となるこの日。
瀧夏彦の長身を活かしたパスキャッチと、セナの切り札「デビルバッドゴースト」の鮮烈なお披露目により、泥門デビルバッツは危なげなく勝利を収めた。
会場の観客席では、王城や西部が厳しい眼差しを向けている。
試合後、会場を出たところで、悟はセナの表情がどこか浮かないことに気が付いた。
「……セナ。快勝だったのに浮かない顔だね」
セナは、少し視線を落としながら小声で告白した。
「……会場で、巨深ポセイドンの筧って人に聞いたんだけど。……『アイシールド21』は実在してるって」
「……ノートルダム大学付属で活躍した日本人ランニングバッグが実在するって事…?」
唐突に判明した、「本物のアイシールド21」の存在。
「『本物』は長身で体格もいいって……。僕みたいな小柄な体格じゃ、本物の足元にも及ばないって……」
「『本物』……ね…」
女性という制約を抱える悟にとって、「生まれ持った体格」という悩みは他人事ではなかった。
悟はセナの肩に手を置き、真っ直ぐに見つめる。
「セナ。自分に無いものについてあれこれ悩むより、今あるもので闘う方法を考える……っていうのはどう?」
「今、あるもので……」
「そう。弱点は弱点だと認めたうえで…。やれることはたくさんあるよ。勝つために、何でもやろう」
悟の力強い言葉に、セナの瞳から迷いが消える。
弱気になっている暇なんてない――二人は改めて、勝利のために誰よりも貪欲である覚悟を決めた。
勝利を収めた泥門一同は、打ち上げとして焼き肉店を訪れた。店内は肉の焼ける香りと熱気に包まれている。偶然にも同じく打ち上げの王城と鉢合わせ、成り行きで合同打ち上げ会のような盛り上がりに。
「選手で付き合ってる人とか、そういうのは全然ないですよー!」
女性陣の集まる席では王城のマネージャー若菜の言葉を皮切りに、鈴音の主導で恋バナが加速する。
「いや〜、うちは悟が最近かなり怪しいんだよねぇ?実際どうなの?進展あるなら教えなさいよー!」
「鈴音……!」
いたたまれなくなった悟が席を立ち、逃げ出すように移動した先は、王城クォーターバッグ、高見が腰を下ろすテーブルだった。
「やぁ、良かったら一緒にどうだい?」
高見が穏やかに微笑む。
「網乃戦見させてもらったよ。『
その眼鏡が、照明を反射してキラリと光った。
「あれはどういうカラクリなんだい?君が神龍寺の金剛兄弟の妹で、『神速のインパルス』を持っている事を前提に、その派生であるとは推測しているんだけど」
「それは……」
悟が言葉に詰まったその時。ヒル魔の鋭い声が二人の会話を遮った。
「バカ正直にペラペラ話そうとしてんじゃねーよ。情報集めようっつー魂胆丸見えじゃねぇか」
「人聞きの悪い…少し話してただけさ。他愛もない話をね」
そう言いながら眼鏡を押し上げる高見。
「ケケ、その他愛もない話とやらに俺も混ぜてくれよ。……『
「さぁ…西洋の古代兵器のことじゃないかな?」
ヒル魔と高見、二人の知将の間で、探り合い、カマの掛け合いが勃発する。
「悟! そんな怖ぇ卓にいねぇでこっち来いよ!」
その緊張感から悟を引き剥がすように、十文字が声を上げる。呼ばれるがまま移動した先では、泥門と王城による「焼き肉大食い勝負」が勃発していた。
「お! 悟! どこほっつき歩いてたんだよ、ほらもっと食え!」
戸叶が豪快に笑いながら、肉が山盛りの取り皿を悟に押し付ける。
「ありがと…って、え、あ、ちょっと、これはさすがに……!」
「焼き肉代賭けて王城と勝負してんだ! お前も協力しろよ!」
黒木が有無を言わさぬ勢いで網の上に肉を並べていく。
「……自信ないなぁ」
「四の五の言うな! 限界まで食え!」
悟は目の前の肉の山と、勝負に殺気立った男たちの狭間で、ため息をつきながらも箸を握りしめた。
黙々と肉を口に運ぶ悟の隣に、十文字がどかりと座る。
「隣座んぞ。……ホラ、それ寄越せ」
悟に押し付けられた肉が山盛りの皿を、十文字はさりげなく自分の席に寄せる。悟はその気遣いにお礼を言おうとするも、肉を飲み込めず、モグモグと口を動かし続ける。その様子を見た十文字が、新しいおしぼりを彼女に手渡しながら、心底愉快そうに笑みを溢した。
「ははっ、口の端拭けよ。いっぺんに詰め込みすぎだろ、リスみたいになってんぞ」
悟はようやく口内の肉を飲み込み、口元をおしぼりで拭いながら羞恥に少しだけ頬を赤く染めた。
「皆が急かすから…!」
秘密の女子会合、知将たちの情報戦、意地の張り合いの大食い勝負。
泥門デビルバッツの宴は、トーナメントの過酷さをひととき忘れさせるような、どこまでも騒がしい夜となった。