第二章【アメリカ合宿編】
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カジノの喧騒を抜け、ドアが開いた瞬間、ラスベガスの夜風が二人の肌を撫でた。
ラスベガスの夜は意外なほどに涼しく、アルコールで熱を帯びた悟の頬には心地よい。けれど、手首を掴んで歩くヒル魔の指先は熱く、独占欲を孕んでいる。
「……っ、ヒル魔さん、歩くのが速いです!」
ヒールを鳴らして必死に付いていく悟が声を上げる。ヒル魔はホテルの喧騒から十分に離れた巨大な噴水の前でようやく足を止めると、苛立ちを隠さない横顔で鼻を鳴らした。
「たらしが趣味かテメーは」
「…えぇ?」
「…その腑抜けたツラだ。誰彼構わず愛嬌の大盤振る舞いってか?」
「な……! 人聞きが悪いです! 私はただ、十文字君との……」
「あァ?」
明確に滲む嫉妬の色。
「…テメーが『余所見してる暇なんてない』って言ったんだろうが。忘れてねぇだろうな」
普段のヒル魔なら、こんな感情的な言葉は合理性の欠片もないと切り捨てるはずだ。けれど、今の彼の瞳には、悋気の炎が確かに灯っていた。
少しの酔いが、悟の胸の奥で小さな勇気を育てる。いつもなら飲み込むはずの言葉が、するりと唇から溢れ出した。
「どうして、そんな事に苛立ってるんです?……そういうヒル魔さんこそ、私をどう思ってるんですか…?」
問いかけは、夜の空気に溶ける。
期待した言葉は返ってこない。ヒル魔は一瞬、眉を不機嫌そうに寄せると、無造作に自分のジャケットを脱ぎ捨てた。
「ちょっと…!」
乱暴に肩へ掛けられた、重厚な布の感触。
ヒル魔の体温と、あの僅かな火薬の匂いが悟を包み込む。彼の気配の色濃いジャケットは、まるで彼の手の中に閉じ込められたような錯覚を抱かせた。
「……だから! そういう所が、ずるいんですってば……!」
「……そのドレス、誰が選んだか分かってんのか」
唐突な問いに、悟は目を瞬かせた。
夜空を思わせる、ミッドナイトブルーのドレス。
「……知りません」
「俺しかいねェだろ。テメーに一番似合う色とデザインだ。……お前のことは誰よりも俺が理解ってんだよ」
悪魔の告白は、あまりにも傲慢で、けれど抗いがたいほどに甘い。
悟が言葉を失った、その時だった。
「――っ」
ドォォン…!という音が響く。
タイミングを見計らったかのように、噴水の中央から巨大な水柱が夜空へ向かって突き上げた。
壮大なオーケストラの調べと共に、ラスベガスの観光名物、噴水ショーが始まる。
「――わあ……!」
悟は息を呑み、思わず身を乗り出した。
ライトアップされた水飛沫が、まるで無数のダイヤモンドを撒き散らしたように夜空で輝いた。旋律に合わせて、水は生き物のように形を変え、天高く舞い上がったかと思えば、霧のように優しく降り注ぐ。
幻想的な光景。悟は思わず、先ほどまでの口論も忘れ、顔を輝かせた。
「……これを、私に見せようとして……連れてきてくれたんですか?」
問いかける悟。ニヤリと口角を上げ肯定を示すヒル魔の視線は、一度として噴水には向かなかった
「綺麗……」
顔を綻ばせる彼女の横顔を、ヒル魔は満足げに見つめる。
彼が見ているのは水柱ではない。自分の手の中で美しく磨き上げられつつある、目の前の原石だけだった。
ヒル魔は悟の顎を、長い指先で強引に自分の方へと向けさせる。
「…テメーと出会ってから、本来の自分でいられねェ」
視線が絡み合う。逃げ場のない、熱い至近距離。
「ある筈もなかった執着、独占欲、嫉妬、……恋慕。全部くれてやる」
「っあ、あの……」
「俺を選べ。俺の隣にいろ。……誰よりもテメーの価値を理解ってるのは、誰だと思ってやがる」
それは、お願いでも提案でもなかった。
世界で唯一、彼女という存在の真価を正しく見定め、手に入れたいと願う男の、愛の告白というにはあまりに挑戦的な、まるで宣戦布告だった。
ラスベガスの夜は意外なほどに涼しく、アルコールで熱を帯びた悟の頬には心地よい。けれど、手首を掴んで歩くヒル魔の指先は熱く、独占欲を孕んでいる。
「……っ、ヒル魔さん、歩くのが速いです!」
ヒールを鳴らして必死に付いていく悟が声を上げる。ヒル魔はホテルの喧騒から十分に離れた巨大な噴水の前でようやく足を止めると、苛立ちを隠さない横顔で鼻を鳴らした。
「たらしが趣味かテメーは」
「…えぇ?」
「…その腑抜けたツラだ。誰彼構わず愛嬌の大盤振る舞いってか?」
「な……! 人聞きが悪いです! 私はただ、十文字君との……」
「あァ?」
明確に滲む嫉妬の色。
「…テメーが『余所見してる暇なんてない』って言ったんだろうが。忘れてねぇだろうな」
普段のヒル魔なら、こんな感情的な言葉は合理性の欠片もないと切り捨てるはずだ。けれど、今の彼の瞳には、悋気の炎が確かに灯っていた。
少しの酔いが、悟の胸の奥で小さな勇気を育てる。いつもなら飲み込むはずの言葉が、するりと唇から溢れ出した。
「どうして、そんな事に苛立ってるんです?……そういうヒル魔さんこそ、私をどう思ってるんですか…?」
問いかけは、夜の空気に溶ける。
期待した言葉は返ってこない。ヒル魔は一瞬、眉を不機嫌そうに寄せると、無造作に自分のジャケットを脱ぎ捨てた。
「ちょっと…!」
乱暴に肩へ掛けられた、重厚な布の感触。
ヒル魔の体温と、あの僅かな火薬の匂いが悟を包み込む。彼の気配の色濃いジャケットは、まるで彼の手の中に閉じ込められたような錯覚を抱かせた。
「……だから! そういう所が、ずるいんですってば……!」
「……そのドレス、誰が選んだか分かってんのか」
唐突な問いに、悟は目を瞬かせた。
夜空を思わせる、ミッドナイトブルーのドレス。
「……知りません」
「俺しかいねェだろ。テメーに一番似合う色とデザインだ。……お前のことは誰よりも俺が理解ってんだよ」
悪魔の告白は、あまりにも傲慢で、けれど抗いがたいほどに甘い。
悟が言葉を失った、その時だった。
「――っ」
ドォォン…!という音が響く。
タイミングを見計らったかのように、噴水の中央から巨大な水柱が夜空へ向かって突き上げた。
壮大なオーケストラの調べと共に、ラスベガスの観光名物、噴水ショーが始まる。
「――わあ……!」
悟は息を呑み、思わず身を乗り出した。
ライトアップされた水飛沫が、まるで無数のダイヤモンドを撒き散らしたように夜空で輝いた。旋律に合わせて、水は生き物のように形を変え、天高く舞い上がったかと思えば、霧のように優しく降り注ぐ。
幻想的な光景。悟は思わず、先ほどまでの口論も忘れ、顔を輝かせた。
「……これを、私に見せようとして……連れてきてくれたんですか?」
問いかける悟。ニヤリと口角を上げ肯定を示すヒル魔の視線は、一度として噴水には向かなかった
「綺麗……」
顔を綻ばせる彼女の横顔を、ヒル魔は満足げに見つめる。
彼が見ているのは水柱ではない。自分の手の中で美しく磨き上げられつつある、目の前の原石だけだった。
ヒル魔は悟の顎を、長い指先で強引に自分の方へと向けさせる。
「…テメーと出会ってから、本来の自分でいられねェ」
視線が絡み合う。逃げ場のない、熱い至近距離。
「ある筈もなかった執着、独占欲、嫉妬、……恋慕。全部くれてやる」
「っあ、あの……」
「俺を選べ。俺の隣にいろ。……誰よりもテメーの価値を理解ってるのは、誰だと思ってやがる」
それは、お願いでも提案でもなかった。
世界で唯一、彼女という存在の真価を正しく見定め、手に入れたいと願う男の、愛の告白というにはあまりに挑戦的な、まるで宣戦布告だった。