第二章【アメリカ合宿編】
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……身体が軽い。
意識が浮上すると同時に、脳内にクリアな感覚が広がっていく。
ここまで純粋に眠りに落ちたのは、一体いつぶりだろうか。2000キロに及ぶデス・マーチでの疲労を、すべて吐き出したような深い眠りだった。
わずかに横へ視線を向ければ、腕の中で身じろぎする、柔らかな熱。
悟が無防備な寝息を立てていた。
ジャージの襟元から覗く、白い首筋。男の部屋で、あろうことか隣で朝まで眠りこけるなど。危機感の無さに、呆れ混じりの溜息が出る。
だが、その呆れを上書きするように、胸の奥底から込み上げる奇妙な歓喜を、ヒル魔は否定できなかった。
彼女は俺を信じている。この俺の隣こそが、世界で一番安全な場所だと。
ヒル魔は冷静に、己の胸中を計算し直す。
彼女が時折自分に向ける、その瞳の熱に気が付いていないわけではない。
だがそれは果たして、己が期待している感情なのか?
あるいは、絶望の中で最初に手を引いた者を親だと信じ込む、雛鳥の「刷り込み」のような敬慕に過ぎないのではないか。
飼い主に尾を振る子犬のように、純粋で、それゆえに幼い勘違い。
自分の気性や性格は、よく理解している。
彼女を側に置いたとして、それが彼女にとっての「幸せ」なのか。
……あの糞長男のように、愚直なまでに真っ直ぐ、愛だの何だのを囁くような真似は、逆立ちしたってできそうにない。
「…………」
それなのに。
朝の光に照らされた、その穏やかな寝顔を見つめていると、胸の奥が焼きつくような感覚に襲われる。
理性を狂わせる、耐え難いほどの愛おしさ。
吸い寄せられるように身を乗り出し、彼女の閉じた瞼へ、音もなく唇を落とした。
言葉にはしない。けれど、それはどんな契約書よりも重い、「愛情」の証だった。
ベッドを抜け出し、はだけた毛布を彼女の肩までかけ直すと、音を立てずにバスルームへと向かった。
鏡の中にいるのは、いつもの、泥門デビルバッツの冷徹な司令塔。弱さも、情欲も、すべて計算の裏側に隠した「悪魔」と揶揄される自分だ。
しばらく経って。キーボードを叩く音に反応して、悟がガバリと起き上がった。
「えっと……おはようございます……?」
恥ずかしそうに、けれど何かを期待するような、どこか嬉しそうに紡がれた挨拶を、無言で切り捨てた。
代わりに、備え付けのコーヒーを淹れ、彼女へと手渡す。
毛布に包まったまま、派手な寝癖をつけた彼女が、戸惑いながら礼を口にして柔らかく笑った。
(……悪くねぇ)
その笑顔を見た瞬間、先ほどまでの「彼女を遠ざけるべき理由」など、灰になって消えた。
敬慕だろうが、刷り込みだろうが、知ったことか。
ひたすらに、彼女が欲しい。俺の手の中で、誰よりも光り輝かせたい。
彼女の乱れた髪に触れ、ゆっくりと耳にかけた。
至近距離で、その瞳に自分を焼き付けるようにじっと見つめる。
ここまで自分の心を乱してくる存在に、ふっと自虐的に鼻を鳴らし、名残惜しさを押し殺して手を離した。
パソコンのモニターに向き直る。
ベッドの上で、顔を真っ赤に染めた悟が、熱いコーヒーを急いで飲み干す気配が伝わってきた。
いそいそと彼女が部屋を出ていく。
「ケケッ、…俺もヤキが回ったもんだ」
一人になった部屋で、誰にともなく呟く。
モニターに並ぶ数字や計略の向こう側に、今、最も手に入れたい「宝」の残像が揺れていた。
意識が浮上すると同時に、脳内にクリアな感覚が広がっていく。
ここまで純粋に眠りに落ちたのは、一体いつぶりだろうか。2000キロに及ぶデス・マーチでの疲労を、すべて吐き出したような深い眠りだった。
わずかに横へ視線を向ければ、腕の中で身じろぎする、柔らかな熱。
悟が無防備な寝息を立てていた。
ジャージの襟元から覗く、白い首筋。男の部屋で、あろうことか隣で朝まで眠りこけるなど。危機感の無さに、呆れ混じりの溜息が出る。
だが、その呆れを上書きするように、胸の奥底から込み上げる奇妙な歓喜を、ヒル魔は否定できなかった。
彼女は俺を信じている。この俺の隣こそが、世界で一番安全な場所だと。
ヒル魔は冷静に、己の胸中を計算し直す。
彼女が時折自分に向ける、その瞳の熱に気が付いていないわけではない。
だがそれは果たして、己が期待している感情なのか?
あるいは、絶望の中で最初に手を引いた者を親だと信じ込む、雛鳥の「刷り込み」のような敬慕に過ぎないのではないか。
飼い主に尾を振る子犬のように、純粋で、それゆえに幼い勘違い。
自分の気性や性格は、よく理解している。
彼女を側に置いたとして、それが彼女にとっての「幸せ」なのか。
……あの糞長男のように、愚直なまでに真っ直ぐ、愛だの何だのを囁くような真似は、逆立ちしたってできそうにない。
「…………」
それなのに。
朝の光に照らされた、その穏やかな寝顔を見つめていると、胸の奥が焼きつくような感覚に襲われる。
理性を狂わせる、耐え難いほどの愛おしさ。
吸い寄せられるように身を乗り出し、彼女の閉じた瞼へ、音もなく唇を落とした。
言葉にはしない。けれど、それはどんな契約書よりも重い、「愛情」の証だった。
ベッドを抜け出し、はだけた毛布を彼女の肩までかけ直すと、音を立てずにバスルームへと向かった。
鏡の中にいるのは、いつもの、泥門デビルバッツの冷徹な司令塔。弱さも、情欲も、すべて計算の裏側に隠した「悪魔」と揶揄される自分だ。
しばらく経って。キーボードを叩く音に反応して、悟がガバリと起き上がった。
「えっと……おはようございます……?」
恥ずかしそうに、けれど何かを期待するような、どこか嬉しそうに紡がれた挨拶を、無言で切り捨てた。
代わりに、備え付けのコーヒーを淹れ、彼女へと手渡す。
毛布に包まったまま、派手な寝癖をつけた彼女が、戸惑いながら礼を口にして柔らかく笑った。
(……悪くねぇ)
その笑顔を見た瞬間、先ほどまでの「彼女を遠ざけるべき理由」など、灰になって消えた。
敬慕だろうが、刷り込みだろうが、知ったことか。
ひたすらに、彼女が欲しい。俺の手の中で、誰よりも光り輝かせたい。
彼女の乱れた髪に触れ、ゆっくりと耳にかけた。
至近距離で、その瞳に自分を焼き付けるようにじっと見つめる。
ここまで自分の心を乱してくる存在に、ふっと自虐的に鼻を鳴らし、名残惜しさを押し殺して手を離した。
パソコンのモニターに向き直る。
ベッドの上で、顔を真っ赤に染めた悟が、熱いコーヒーを急いで飲み干す気配が伝わってきた。
いそいそと彼女が部屋を出ていく。
「ケケッ、…俺もヤキが回ったもんだ」
一人になった部屋で、誰にともなく呟く。
モニターに並ぶ数字や計略の向こう側に、今、最も手に入れたい「宝」の残像が揺れていた。