第二章【アメリカ合宿編】
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夜が更ける中、メンバーの寝床となっている積み荷の中だけは、異様な熱気に包まれていた。
悟を助手席へ押し込み、文字通り「安息」を強いてきた十文字が荷台に戻るなり、三つの影が彼を包囲し、彼を質問攻めにする。
「おいおいおい……十文字様よぉ。バッチリ見たぜ、今の」
「お前…ちゃっかり抱きしめてたろ」
黒木と戸叶がニヤニヤと下品な笑みを浮かべ、その横ではセナが「えええっ、十文字くん、本当なの……!?」と目を丸くして震えている。
普段なら「うるせぇ!」と一蹴して顔を真っ赤にするはずの十文字だったが、今の彼はどこか、憑き物が落ちたような顔をしていた。
「……あぁ、やったよ。文句あんのか」
予想外のストレートな肯定に、逆に黒木たちの言葉が詰まる。
「事の流れだ。ぶっ倒れそうな奴を支えるのに、やましい気持ちなんてねぇ……と言いたいところだが」
十文字は、自分を茶化す仲間たちを、そして心配そうに見つめるセナを真っ向から見据えた。
「……あぁ、好きだ。悟に惚れてる」
その一言は、荒野の静寂を切り裂くような宣告だった。三兄弟の絆やつるみを超え、一人の男として立ち上がった十文字の迫力に、黒木も戸叶も、そしてセナも、ただ絶句するしかなかった。
翌朝、練習が再開される直前のこと。
昨夜の「事件」は、瞬く間に広がっていた。黒木が吹聴しているのだ。
「聞いたか、モン太! 昨日の夜、十文字の野郎が悟を……!」
「えええええっ!? 十文字が悟を抱きしめて、お姫様抱っこぉ!?」
モン太の絶叫が、静かな荒野に響き渡る。同級生の十文字と悟。その二人の間に起きたあまりにも情熱的なスクープに、モン太はキャッチの練習も忘れて興奮していた。
「あいつ、堅物ぶりやがってやる時はやるじゃねーか! 燃えてきたぜ、これこそまさに青春の……!」
「……ケケッ。面白そうな話をしてんじゃねぇか、クソガキ共」
冷や水を浴びせられたような沈黙が、その場を支配した。
振り返ると、そこには殺気すら感じる満面の笑みを浮かべたヒル魔が、脅迫手帳を片手に立っていた。
「ヒ、ヒル魔……!! 今の話は、その……!」
数分後。脅迫手帳をちらつかせたヒル魔による「尋問」を終え、昨夜の全容が彼の耳に届いた。
十文字が悟を抱きしめ、介抱のために抱きかかえ、さらには当人こそ知らないとはいえ、彼女への恋心を周囲に宣言したという事実。
(……ケケッ。気に食わねぇな)
ヒル魔の脳裏に、かつて悟が西部ワイルドガンマンズのキッドとタッグを組んだ時の光景がよぎる。
あの時、自分の指先から離れていく彼女を見て感じた、言いようのない焦燥。
当時はそれを、自分の完璧な計画を乱されることへの不快感と、己が見つけ出し、自分に色に染めようとしている「駒」への所有欲からくる嫉妬心であると思い込もうとしていた。
だが、今、十文字を見て沸々と込み上げる不快な感情に、ヒル魔は認めざるを得なかった。
(俺の盤上から、アイツを引きずり出そうとする野郎がいやがる)
そして彼は、それがたまらなく腹立たしい。
そこに、冷徹な司令塔としての彼はいない。
泥臭く、執着にまみれた、一人の男。
悟への「情念」を意識した途端。パキ、と手に持っていたペンが、軋んで折れる。
「……あァ、気に食わねぇ」
ヒル魔は、まだ助手席で眠る悟を一瞥し、それから十文字に向かって不敵に笑った。その瞳の奥には、デス・マーチの熱風よりも熱い、静かな猛火が灯っていた。
地獄の2000km。
その道のりに、もう一つの熾烈な戦いが、今まさに幕を開けようとしていた。
悟を助手席へ押し込み、文字通り「安息」を強いてきた十文字が荷台に戻るなり、三つの影が彼を包囲し、彼を質問攻めにする。
「おいおいおい……十文字様よぉ。バッチリ見たぜ、今の」
「お前…ちゃっかり抱きしめてたろ」
黒木と戸叶がニヤニヤと下品な笑みを浮かべ、その横ではセナが「えええっ、十文字くん、本当なの……!?」と目を丸くして震えている。
普段なら「うるせぇ!」と一蹴して顔を真っ赤にするはずの十文字だったが、今の彼はどこか、憑き物が落ちたような顔をしていた。
「……あぁ、やったよ。文句あんのか」
予想外のストレートな肯定に、逆に黒木たちの言葉が詰まる。
「事の流れだ。ぶっ倒れそうな奴を支えるのに、やましい気持ちなんてねぇ……と言いたいところだが」
十文字は、自分を茶化す仲間たちを、そして心配そうに見つめるセナを真っ向から見据えた。
「……あぁ、好きだ。悟に惚れてる」
その一言は、荒野の静寂を切り裂くような宣告だった。三兄弟の絆やつるみを超え、一人の男として立ち上がった十文字の迫力に、黒木も戸叶も、そしてセナも、ただ絶句するしかなかった。
翌朝、練習が再開される直前のこと。
昨夜の「事件」は、瞬く間に広がっていた。黒木が吹聴しているのだ。
「聞いたか、モン太! 昨日の夜、十文字の野郎が悟を……!」
「えええええっ!? 十文字が悟を抱きしめて、お姫様抱っこぉ!?」
モン太の絶叫が、静かな荒野に響き渡る。同級生の十文字と悟。その二人の間に起きたあまりにも情熱的なスクープに、モン太はキャッチの練習も忘れて興奮していた。
「あいつ、堅物ぶりやがってやる時はやるじゃねーか! 燃えてきたぜ、これこそまさに青春の……!」
「……ケケッ。面白そうな話をしてんじゃねぇか、クソガキ共」
冷や水を浴びせられたような沈黙が、その場を支配した。
振り返ると、そこには殺気すら感じる満面の笑みを浮かべたヒル魔が、脅迫手帳を片手に立っていた。
「ヒ、ヒル魔……!! 今の話は、その……!」
数分後。脅迫手帳をちらつかせたヒル魔による「尋問」を終え、昨夜の全容が彼の耳に届いた。
十文字が悟を抱きしめ、介抱のために抱きかかえ、さらには当人こそ知らないとはいえ、彼女への恋心を周囲に宣言したという事実。
(……ケケッ。気に食わねぇな)
ヒル魔の脳裏に、かつて悟が西部ワイルドガンマンズのキッドとタッグを組んだ時の光景がよぎる。
あの時、自分の指先から離れていく彼女を見て感じた、言いようのない焦燥。
当時はそれを、自分の完璧な計画を乱されることへの不快感と、己が見つけ出し、自分に色に染めようとしている「駒」への所有欲からくる嫉妬心であると思い込もうとしていた。
だが、今、十文字を見て沸々と込み上げる不快な感情に、ヒル魔は認めざるを得なかった。
(俺の盤上から、アイツを引きずり出そうとする野郎がいやがる)
そして彼は、それがたまらなく腹立たしい。
そこに、冷徹な司令塔としての彼はいない。
泥臭く、執着にまみれた、一人の男。
悟への「情念」を意識した途端。パキ、と手に持っていたペンが、軋んで折れる。
「……あァ、気に食わねぇ」
ヒル魔は、まだ助手席で眠る悟を一瞥し、それから十文字に向かって不敵に笑った。その瞳の奥には、デス・マーチの熱風よりも熱い、静かな猛火が灯っていた。
地獄の2000km。
その道のりに、もう一つの熾烈な戦いが、今まさに幕を開けようとしていた。