第二章(アメリカ合宿編)
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空港のロビーは、出発を待つ旅客たちの喧騒と、冷たいエアコンの風に包まれていた。
まもりは一足先に搭乗手続きの確認に走り、残された泥門デビルバッツの面々の手には、日本への帰国便のチケットが握られている。これさえあれば、数時間後には見慣れた日本の空の下だ。
「……みんな、無理しなくてもいいんだよ。日本に帰れば、楽しい夏休みが待ってるんだし」
沈黙に耐えかねたように、栗田が絞り出すような声で言った。その瞳は潤み、仲間を地獄へ引き込みたくないという優しさと、それでも一緒に戦いたいという矛盾した願いで揺れている。
その言葉に、悟は手元に視線を落とした。
目の前にあるのは、安全で快適な夏休み。
そして、その背後に広がるのは、ヒル魔が提示した2000kmの「死の行軍(デス・マーチ)」だ。
それまで壁に背を預けていたどぶろくが、ゆっくりと前へ出た。その鋭い眼光は、昨夜の酔いどれのそれではない。かつて自身も挑み、そして敗れた地獄の記憶が、その表情を険しくさせていた。
「『死の行軍(デス・マーチ)』! 無事やり遂げた奴は過去に一人もいねえ!! 命の保証もねえ、だから強制はしねえ。だがな、史上最強が揃った今年の秋大会、勝つにはもうこれしかねえんだ」
どぶろくの声が、無機質な空港のロビーに重く響き渡る。
「死んでも強くなりてぇ奴だけ、天国行きの航空券 破って、俺と一緒に地獄へついてこい!!」
最初に動いたのは十文字だった。
「ケッ、天国なんて柄じゃねぇんだよ。…十文字一輝、ポジションはライン」
迷いを断ち切るように、手中のチケットを真っ二つに引き裂く。黒木、戸叶もそれに続いた。
「雷門太郎、ワイドレシーバー!キャッチの最高峰になるためなら、どこへだって行ってやるぜ、マックス!!」
モン太が雄叫びを上げ、チケットを破り捨てる。
「僕も…諦めたくない。雪光学、ポジションはまだありません!」
震える手でチケットを破る雪光。
そして、その隣で俯いていた小柄な少年が、ゆっくりと顔を上げた。
気弱なパシリのセナではない。その瞳には覚悟が宿っていた。
周囲のチームメイトが、息を呑んで彼を見つめる。
「小早川セナ、21番! ポジションはランニングバックです!」
バリッ!!
乾いた音と共に、チケットの破片が床に舞った。アイシールドの影に隠れていた「21番」の正体が、まもりを除く全員に明かされた瞬間だった。
悟は、手の中の航空券を静かに見つめていた。
耳の奥で、兄・阿含の冷徹な声が蘇る。
『お前は出涸らしだ』『無駄なことしてんじゃねぇよ』『…何もせず、俺に護られてりゃいい』
(……私はもう、阿含に怯え虐げられ、…護られるだけの存在には戻らない)
口元をキュッと引き結び、悟は前を見据えた。
自らの手でチケットを掴み、一気に引き裂く。その感触は、過去の自分との決別そのものだった。
「金剛悟です!3番、ポジションはランニングバック!」
ヒル魔の視線を正面から受け止め、彼女は凛とした声で宣言した。
「ヒル魔さん。私の全部を賭けて、地獄だろうとなんだろうと貴方に付いていくと決めました!…阿含を、私を見下した全てを見返すために……泥門で勝つために!」
破り捨てられたチケットの破片が舞い散る中、ヒル魔が最高に邪悪で、愉悦に満ちた笑みを浮かべた。
「行くぞ、クソガキ共。ラスベガスまで2000km……一歩でも遅れた野郎は、砂漠の肥やしに決定だ!!」
そこへ、「みんな、手続き終わったわよ!」と、まもりが笑顔で戻ってきた。
彼女が見たのは、退路を断ち、覚悟の宿る瞳で「地獄」を見据える、泥門デビルバッツの戦士たちだった。
まもりは一足先に搭乗手続きの確認に走り、残された泥門デビルバッツの面々の手には、日本への帰国便のチケットが握られている。これさえあれば、数時間後には見慣れた日本の空の下だ。
「……みんな、無理しなくてもいいんだよ。日本に帰れば、楽しい夏休みが待ってるんだし」
沈黙に耐えかねたように、栗田が絞り出すような声で言った。その瞳は潤み、仲間を地獄へ引き込みたくないという優しさと、それでも一緒に戦いたいという矛盾した願いで揺れている。
その言葉に、悟は手元に視線を落とした。
目の前にあるのは、安全で快適な夏休み。
そして、その背後に広がるのは、ヒル魔が提示した2000kmの「死の行軍(デス・マーチ)」だ。
それまで壁に背を預けていたどぶろくが、ゆっくりと前へ出た。その鋭い眼光は、昨夜の酔いどれのそれではない。かつて自身も挑み、そして敗れた地獄の記憶が、その表情を険しくさせていた。
「『死の行軍(デス・マーチ)』! 無事やり遂げた奴は過去に一人もいねえ!! 命の保証もねえ、だから強制はしねえ。だがな、史上最強が揃った今年の秋大会、勝つにはもうこれしかねえんだ」
どぶろくの声が、無機質な空港のロビーに重く響き渡る。
「死んでも強くなりてぇ奴だけ、天国行きの
最初に動いたのは十文字だった。
「ケッ、天国なんて柄じゃねぇんだよ。…十文字一輝、ポジションはライン」
迷いを断ち切るように、手中のチケットを真っ二つに引き裂く。黒木、戸叶もそれに続いた。
「雷門太郎、ワイドレシーバー!キャッチの最高峰になるためなら、どこへだって行ってやるぜ、マックス!!」
モン太が雄叫びを上げ、チケットを破り捨てる。
「僕も…諦めたくない。雪光学、ポジションはまだありません!」
震える手でチケットを破る雪光。
そして、その隣で俯いていた小柄な少年が、ゆっくりと顔を上げた。
気弱なパシリのセナではない。その瞳には覚悟が宿っていた。
周囲のチームメイトが、息を呑んで彼を見つめる。
「小早川セナ、21番! ポジションはランニングバックです!」
バリッ!!
乾いた音と共に、チケットの破片が床に舞った。アイシールドの影に隠れていた「21番」の正体が、まもりを除く全員に明かされた瞬間だった。
悟は、手の中の航空券を静かに見つめていた。
耳の奥で、兄・阿含の冷徹な声が蘇る。
『お前は出涸らしだ』『無駄なことしてんじゃねぇよ』『…何もせず、俺に護られてりゃいい』
(……私はもう、阿含に怯え虐げられ、…護られるだけの存在には戻らない)
口元をキュッと引き結び、悟は前を見据えた。
自らの手でチケットを掴み、一気に引き裂く。その感触は、過去の自分との決別そのものだった。
「金剛悟です!3番、ポジションはランニングバック!」
ヒル魔の視線を正面から受け止め、彼女は凛とした声で宣言した。
「ヒル魔さん。私の全部を賭けて、地獄だろうとなんだろうと貴方に付いていくと決めました!…阿含を、私を見下した全てを見返すために……泥門で勝つために!」
破り捨てられたチケットの破片が舞い散る中、ヒル魔が最高に邪悪で、愉悦に満ちた笑みを浮かべた。
「行くぞ、クソガキ共。ラスベガスまで2000km……一歩でも遅れた野郎は、砂漠の肥やしに決定だ!!」
そこへ、「みんな、手続き終わったわよ!」と、まもりが笑顔で戻ってきた。
彼女が見たのは、退路を断ち、覚悟の宿る瞳で「地獄」を見据える、泥門デビルバッツの戦士たちだった。