第二章(アメリカ合宿編)
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燃えるような日差しが、砂浜を白く焼き尽くしている。
決勝戦の開始を前に、西武ワイルドガンマンズのQBキッドは、隣に立つ悟を眩しそうに見つめた。
試合開始と共に、キッドの早撃ちが火を噴く。
受ける側にも超人的な反応を要求するパスは、まるで弾丸のようだ。常人なら視界に捉えることさえ難しいパスを、悟は超反応で掴み取った。
「やるねぇ、『神速のインパルス』は伊達じゃないって事か」
「…兄を知ってるんですね」
「そりゃあ、有名人さ。今や君も話題沸騰中の期待のルーキーだよ。あの神龍寺の金剛兄弟の妹とくれば嫌でも目立つだろう。……お互い血筋には苦労しているようだ」
「……」
キッド自身の複雑な家系を匂わせる言葉に、悟は一瞬言葉を失う。悟がボールを投げ返すと、キッドは満足げに笑った。
「NASAとの試合で見せたあの妙な動きを間近で見たいと思っていたが……まぁいい。欲張りすぎるとロクなことにならねェ」
「……私に向かってきてくれるパスなら、超反応だけで十分ですから」
「人間の限界の反射速度…ね。相性は悪くなさそうだ。」
キッドのどこか浮世離れした様子、それでいて絶対的な自信。紛うことなき一流のQBから放たれる異次元のクイックモーションでの弾丸パス。悟は一人のアメフト選手としての純粋な高揚感を覚えていた。
観戦席でガムを噛んでいたヒル魔は、キッドと悟の共闘を見物していた。
視界の先、キッドの放つパスは、無駄を削ぎ落とした機械的なまでに純粋な放物線を描いていた。
それは、悟の持つ『神速のインパルス』を存分に発揮させる、彼女の才能をそのままフィールドへ解き放つかのようなパスだった。パスの速射技術においてはキッドの右に出る者はそうはいない。
キッドのパスを受ける彼女は、かつてないほどに自由で、しなやかだった。
ヒル魔の隣で戦う時の悟は、常に思考し、必要とあれば接触をも顧みないプレーを選択し、限界の先を求められてきた。
悟の超反応だけに甘んじさせず、その一歩先、彼女の思考と肉体の極限のその先を求める。それが彼女を「進化」させる唯一の手段だと信じているからだ。
彼女の価値を知らしめるー…その役割を他の男が、自分とは違うアプローチで、いとも容易く奪い取っている。
「ケケッ、見せつけてくれるじゃねェか」
小さく呟くヒル魔の胸の奥には、定義不能な不快感が跳ねていた。
心拍数の微増。思考の隅を掠める、己には似つかわしくないある予測。
たかがお遊びのビーチフットでの一幕。
なのに、奥歯が軋むような感覚が消えない。
「……チッ」
ヒル魔は一瞬、自分の感情に戸惑うように動きを止めた。
QBとしての対抗心か? いや、それだけじゃない。
自分の描いた盤面の上で、自分の色に染めてきたはずの彼女が、他人の手によって輝きを放っている。その事実に、胃の腑を直接掴まれたような焦燥が這い上がってくる。
……ああ、そうか。
ヒル魔は、自分の中に芽生えたその見慣れぬ感情の正体を弾き出した。
それは、合理性を求めるヒル魔には決して認められないはずの、あまりに人間臭い「嫉妬」という名のバグだった。
「……ケケッ、気に食わねェが…」
吐き出した言葉は、海風に混じって消えた。
ヒル魔は新しいガムを口に放り込む。
沸き起こった嫉妬心を否定することなく、彼はそれをそのまま静かに受け入れた。
悟の参入によりデビルガンマンズは快勝。決勝戦の相手は優勝候補の「TOO TA TTOO」。
試合開始のホイッスルが響く。
「……ッ、速い! またあっちだ!」
「クソッ、足が砂に沈んで……追いつけねえ!」
セナとモン太の悲鳴が上がる。対戦相手「TOO TA TTOO」の真骨頂ー…『ノミのダンス』。
ショートパスを跳ねるように、チーム全員が目まぐるしくボールを回し続ける。ボールは捕まえようとした瞬間に指の間を抜けていく。
悟の『神速のインパルス』も、アメフトでは起こり得ない超ショートパスの乱舞の前で空転を強いられていた。
脳が反応しても、踏み出した砂の足場が崩れる。コンマ数秒のズレ。それが致命的な穴となり、パスを通される。
「ハハッ!やはりお前たちアメフト経験者だな。QBが一人ってのがアメフトくせぇ。アメフトとビーチフットは別物だぜ!」
嘲笑う大男たち。
その時だった。
「ケケッ! 何モタモタやってやがる!」
乾いた、聞き慣れた笑い声。
「ヒル魔……。観戦はもう飽きたのかい?」
「みすみす賞金逃す手はねぇだろ。... それに、貸し たコイツを返してもらいにな、ケケッ!」
キッドの問いに、ヒル魔はニヤリと唇を歪ませ、悟の肩を抱くようにして自分の方へ引き寄せた。
「あ……っ」
不意に肩を引き寄せられた悟が砂に足をとられ体勢を崩しヒル魔にもたれかかる。はたから見ると抱きついたかのように見える姿勢。
ヒル魔は突き放すことなく悟を支えたまま、視線を彼女に落とす。
「熱烈じゃねぇか、奴 じゃ物足りなかったか?ケケッ」
「…!?そんなんじゃありません!!」
顔を赤くし飛び退く悟を横目に、ヒル魔はまもりに声をかける。
「おい、糞マネ。交代だ!他の部員共を今すぐ集めてこい!」
まもりが場を離れる。それは、セナが「お目付け役」から解放されその脚の真価を発揮できることを意味する。
フィールドに、ヒル魔とキッドが並び立つ。
「『神速の早撃ち』ショットガン・キッド。お目にかかれるとは光栄だ、ケケッ」
キッドを煽るような態度のヒル魔に、彼はカウボーイハットの端を指でクイと上げ、穏やかに返した。
「神速ねェ……俺を買いかぶり過ぎだ」
「神速」という言葉に、悟の視線が、ヒル魔へと向けられる。
「ケケッ、奴のパスは高校アメフト界最速だ。実際にパスを受けて妙に感じなかったか?異様なまでのクイックモーション。奴を『神速の早撃ち』と言わしめる理由だ」
悟がキッドを見据えると、キッドは「やれやれ」とでも言いたげに俯き首を振った。
「キッド。俺とお前でパス繋ぐぞ。…今日限りのスペシャルタッグだ」
「おっと。悪魔にお誘いを受けるとは」
TOO TA TTOOの戦術をヒル魔・キッドの2人が再現し、本家を凌駕する超高速のパス回しで相手を翻弄し始める。
「投げ手は2人だけだ!」
相手チームが露骨にマークに入ったとき、既にヒル魔の手元にボールは無い。
「悟! テメーの本当の価値を見せてみろ!」
ヒル魔の声が、鋭く悟に届く。ヒル魔からボールを受け取った悟が相手選手を躱しながら敵陣に走り込む。
「彼女、躱すのが妙に上手い…。NASAとの試合で見せた、相手がどう動くかを予知するかのような動きだ」
キッドの弾丸パスと、ヒル魔の采配が光る。悟は、二人のQBが描く複雑なパスルートを脳内で予測し、白い砂を蹴る。ビーチの観衆が沸き立つ中、デビルガンマンズに反撃の狼煙があがったのだった。
決勝戦の開始を前に、西武ワイルドガンマンズのQBキッドは、隣に立つ悟を眩しそうに見つめた。
試合開始と共に、キッドの早撃ちが火を噴く。
受ける側にも超人的な反応を要求するパスは、まるで弾丸のようだ。常人なら視界に捉えることさえ難しいパスを、悟は超反応で掴み取った。
「やるねぇ、『神速のインパルス』は伊達じゃないって事か」
「…兄を知ってるんですね」
「そりゃあ、有名人さ。今や君も話題沸騰中の期待のルーキーだよ。あの神龍寺の金剛兄弟の妹とくれば嫌でも目立つだろう。……お互い血筋には苦労しているようだ」
「……」
キッド自身の複雑な家系を匂わせる言葉に、悟は一瞬言葉を失う。悟がボールを投げ返すと、キッドは満足げに笑った。
「NASAとの試合で見せたあの妙な動きを間近で見たいと思っていたが……まぁいい。欲張りすぎるとロクなことにならねェ」
「……私に向かってきてくれるパスなら、超反応だけで十分ですから」
「人間の限界の反射速度…ね。相性は悪くなさそうだ。」
キッドのどこか浮世離れした様子、それでいて絶対的な自信。紛うことなき一流のQBから放たれる異次元のクイックモーションでの弾丸パス。悟は一人のアメフト選手としての純粋な高揚感を覚えていた。
観戦席でガムを噛んでいたヒル魔は、キッドと悟の共闘を見物していた。
視界の先、キッドの放つパスは、無駄を削ぎ落とした機械的なまでに純粋な放物線を描いていた。
それは、悟の持つ『神速のインパルス』を存分に発揮させる、彼女の才能をそのままフィールドへ解き放つかのようなパスだった。パスの速射技術においてはキッドの右に出る者はそうはいない。
キッドのパスを受ける彼女は、かつてないほどに自由で、しなやかだった。
ヒル魔の隣で戦う時の悟は、常に思考し、必要とあれば接触をも顧みないプレーを選択し、限界の先を求められてきた。
悟の超反応だけに甘んじさせず、その一歩先、彼女の思考と肉体の極限のその先を求める。それが彼女を「進化」させる唯一の手段だと信じているからだ。
彼女の価値を知らしめるー…その役割を他の男が、自分とは違うアプローチで、いとも容易く奪い取っている。
「ケケッ、見せつけてくれるじゃねェか」
小さく呟くヒル魔の胸の奥には、定義不能な不快感が跳ねていた。
心拍数の微増。思考の隅を掠める、己には似つかわしくないある予測。
たかがお遊びのビーチフットでの一幕。
なのに、奥歯が軋むような感覚が消えない。
「……チッ」
ヒル魔は一瞬、自分の感情に戸惑うように動きを止めた。
QBとしての対抗心か? いや、それだけじゃない。
自分の描いた盤面の上で、自分の色に染めてきたはずの彼女が、他人の手によって輝きを放っている。その事実に、胃の腑を直接掴まれたような焦燥が這い上がってくる。
……ああ、そうか。
ヒル魔は、自分の中に芽生えたその見慣れぬ感情の正体を弾き出した。
それは、合理性を求めるヒル魔には決して認められないはずの、あまりに人間臭い「嫉妬」という名のバグだった。
「……ケケッ、気に食わねェが…」
吐き出した言葉は、海風に混じって消えた。
ヒル魔は新しいガムを口に放り込む。
沸き起こった嫉妬心を否定することなく、彼はそれをそのまま静かに受け入れた。
悟の参入によりデビルガンマンズは快勝。決勝戦の相手は優勝候補の「TOO TA TTOO」。
試合開始のホイッスルが響く。
「……ッ、速い! またあっちだ!」
「クソッ、足が砂に沈んで……追いつけねえ!」
セナとモン太の悲鳴が上がる。対戦相手「TOO TA TTOO」の真骨頂ー…『ノミのダンス』。
ショートパスを跳ねるように、チーム全員が目まぐるしくボールを回し続ける。ボールは捕まえようとした瞬間に指の間を抜けていく。
悟の『神速のインパルス』も、アメフトでは起こり得ない超ショートパスの乱舞の前で空転を強いられていた。
脳が反応しても、踏み出した砂の足場が崩れる。コンマ数秒のズレ。それが致命的な穴となり、パスを通される。
「ハハッ!やはりお前たちアメフト経験者だな。QBが一人ってのがアメフトくせぇ。アメフトとビーチフットは別物だぜ!」
嘲笑う大男たち。
その時だった。
「ケケッ! 何モタモタやってやがる!」
乾いた、聞き慣れた笑い声。
「ヒル魔……。観戦はもう飽きたのかい?」
「みすみす賞金逃す手はねぇだろ。... それに、貸し たコイツを返してもらいにな、ケケッ!」
キッドの問いに、ヒル魔はニヤリと唇を歪ませ、悟の肩を抱くようにして自分の方へ引き寄せた。
「あ……っ」
不意に肩を引き寄せられた悟が砂に足をとられ体勢を崩しヒル魔にもたれかかる。はたから見ると抱きついたかのように見える姿勢。
ヒル魔は突き放すことなく悟を支えたまま、視線を彼女に落とす。
「熱烈じゃねぇか、
「…!?そんなんじゃありません!!」
顔を赤くし飛び退く悟を横目に、ヒル魔はまもりに声をかける。
「おい、糞マネ。交代だ!他の部員共を今すぐ集めてこい!」
まもりが場を離れる。それは、セナが「お目付け役」から解放されその脚の真価を発揮できることを意味する。
フィールドに、ヒル魔とキッドが並び立つ。
「『神速の早撃ち』ショットガン・キッド。お目にかかれるとは光栄だ、ケケッ」
キッドを煽るような態度のヒル魔に、彼はカウボーイハットの端を指でクイと上げ、穏やかに返した。
「神速ねェ……俺を買いかぶり過ぎだ」
「神速」という言葉に、悟の視線が、ヒル魔へと向けられる。
「ケケッ、奴のパスは高校アメフト界最速だ。実際にパスを受けて妙に感じなかったか?異様なまでのクイックモーション。奴を『神速の早撃ち』と言わしめる理由だ」
悟がキッドを見据えると、キッドは「やれやれ」とでも言いたげに俯き首を振った。
「キッド。俺とお前でパス繋ぐぞ。…今日限りのスペシャルタッグだ」
「おっと。悪魔にお誘いを受けるとは」
TOO TA TTOOの戦術をヒル魔・キッドの2人が再現し、本家を凌駕する超高速のパス回しで相手を翻弄し始める。
「投げ手は2人だけだ!」
相手チームが露骨にマークに入ったとき、既にヒル魔の手元にボールは無い。
「悟! テメーの本当の価値を見せてみろ!」
ヒル魔の声が、鋭く悟に届く。ヒル魔からボールを受け取った悟が相手選手を躱しながら敵陣に走り込む。
「彼女、躱すのが妙に上手い…。NASAとの試合で見せた、相手がどう動くかを予知するかのような動きだ」
キッドの弾丸パスと、ヒル魔の采配が光る。悟は、二人のQBが描く複雑なパスルートを脳内で予測し、白い砂を蹴る。ビーチの観衆が沸き立つ中、デビルガンマンズに反撃の狼煙があがったのだった。