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いよいよ本番!みんながんばれ体育祭

「カラー対抗リレーに出場する選手の皆さんはお集まりください」

女子達のチアダンスの後、午後の競技はスムーズに行われた。そしてついに、一番のメイン競技であるリレーの収集が始まった。各クラスから足に自信のある猛者達が集合していた。
赤カラーからは学園の王子辺里唯世。青カラーからは男女共に圧倒的な人気を持つ相馬空海。実質この2人の走りに1番の注目が集まっていた。
こはるも例外ではなく、クラスの中の彼らのファンと共に最前列で応援のスタンバイをしていた。

「相馬くん、今年は赤カラーが勝たせてもらうからね」

笑顔で宣戦布告をする唯世。
しかし空海も負けていない。

「今年も俺たちが勝つ。走りでは負ける気がしないからな」

そしていよいよ、第一走者の走りが始まる。会場中が見守る中、係の持つピストルが発砲される。カラー対抗リレーが開幕した。

全員で10人ずつの編成となるチーム。6人目まではほぼ互角の戦いが続いていた。しかし7人目の走者にバトンを渡すとき、青カラーの走者の間でミスがあった。受け取り側が手を滑らせバトンを地面に落としてしまったのだ。急いで拾い走り出すが、唯世率いる赤カラーに大きく遅れを取ってしまった。

8人目、9人目と走り始めついに赤カラーアンカー唯世のもとへバトンが渡る。アンカーが走るのはグラウンド一周。通常より長い距離だった。走り出した唯世に遅れを取る形で青カラーアンカーの空海も走り出す。そこはさすがの空海。凄まじい速さで唯世に少しづつ追いつこうとしている。

「唯世ー!がんばれー!」
「唯世様ー!ファイトー!!」

こはるやあむ、それに赤カラー生徒、唯世のファンクラブの女の子たちも大きな声援を送る。

「いっけー!空海!」
「空海様ファイトー!」

ややになぎひこ、青カラー生徒、空海のファンたちも声を上げる。

どちらが先にゴールしてもおかしくはない接戦であったが、先にゴールテープを切ったのは赤カラーアンカーの唯世であった。

「やったーあむちゃん!唯世が勝ったよ!」

「うん、さっすが唯世くん!」

こはるとあむで抱き合う。他の赤カラーの生徒たちもうれしそうに盛り上がっている。

「あーくっそ。負けたぁ」

悔しそうに座り込む空海に、唯世が手を差し伸べる。

「まさかここまで追い上げられるとは思わなかったよ。さすが相馬くん。あのバトンミスがなかったら僕たちが負けてたかも」

唯世の嘘のない言葉に空海も笑って答える。

「だとしても悔しい。来年はまたうちが勝つ・・・って来年はいないか俺」

そんな風に頭を掻きながら言った。空海にとって最後の体育祭。リレーで勝つことができなかったのは相当悔しいようだ。

「まだ総合優勝の発表が残ってるよ。僕ら生徒会としての仕事ももう少し残ってるから頑張ろう」

「ああ、そうだな!」

2人はそれぞれの応援席へ戻っていった。
2-Aクラスブースでは、クラスメイト達が笑顔で唯世を迎えてくれた。こはるも興奮し切った感情を抑えきれないようで、唯世に正面から思いっきり抱き着いた。

そして閉会式。ついに総合得点が発表される。
生徒一同、その瞬間を祈りながら見守った。体育委員の生徒2人が得点の書いてあるボードをもってスタンバイしていた。

「それでは、総合優勝のカラーを発表します。今年度の優勝カラーは」

校長先生が優勝カラーを発表する。

「赤カラー750ポイント、青カラー710ポイントで赤カラーの優勝です」

今年の優勝は赤カラーだった。代表者として唯世が優勝旗を受け取る。
こはるやあむ、それに生徒会メンバーにとってはとても忙しい行事ではあったが、無事に成功し最高の思い出にすることができた。


閉会した後は、大掛かりな片づけが待っていた。
生徒会メンバーを中心に手早く作業が進められた。

「ねぇ唯世。私、学校の行事がこんなにも楽しかったの初めて。この学校に来られて本当に良かった」

こはるはテントの片づけを手伝いながら唯世へ話しかける。

「また唯世のそばで、唯世を支えながらいろいろ経験できたらうれしいな」

こはるの素直な言葉に唯世は照れたように微笑む。実際、体育祭の準備ではこはるに沢山助けてもらった。仕事の面でも心の支えとしても。次に待ち構えている行事でもこはるの力が必要になるはずだ。

「まだまだ文化祭や修学旅行とか、大変だけど楽しい行事は沢山あるから、いっしょにがんばろうね」

唯世とこはるはその後も黙々と片づけをこなした。

全員で力を合わせて取り組んだため、片づけは予想以上に早く終わった。だがこはるにはまだやることが残っていた。

「ららちゃんお待たせしました、こちらの作業も終わったので早速空海を呼んできますね」

そう、ららのことだ。ららは体育祭が終わった後空海に告白しようとしていた。作業を終わらしたこはるは一目散にららの元へ走ったが、ららはチアダンスを披露した時とは一変し、顔を真っ青にさせていた。

「やっぱり無理かも・・・。私なんかが先輩に」

そんなららの手を取りながらこはるは言った。

「さっきのダンス、空海も見ていてくれたはずよ。元気で素敵なららちゃんのダンス。大丈夫、素直な気持ちを伝えればいいのよ」

そして一度ららと別れ、空海を呼びに行った。
空海も作業を終え唯世達と談笑しているところだった。

「空海、大事な用があるんだけど・・・」

深刻そうなこはるの表情に一同は顔を傾ける。

「大事な用ってなんだ?まさか俺の雄姿を見て」

と空海が言いかけるが、こはるはそんなことは聞きもせずに空海の手を取り走り出した。向かった先はもちろんららがいる場所だ。

「大事な友達なの。だから、しっかり答えてあげてね。どっちの選択をするとしても」

そしてららのもとへ空海を届けたこはるは、再度走りだして唯世達のもとへ戻った。
あむ達女性陣は、空海がなぜ連れていかれたのかを理解しているようだったが、唯世となぎひこにはそれが分からなかった。
こはるが戻ったころには唯世が若干不機嫌な顔をしていたので笑ってしまった。
唯世には誤解を作らないためにしっかりと事情を説明しておこう。そう思ったこはるであった。

体育祭の帰り道、あむ達と別れたこはるは唯世と2人で下校していた。片づけに時間がかかると分かっていたので2人とも家族には先に帰ってくれるよう伝えていた。
こはるは、先ほどの空海の一件やチアダンスのことについて根掘り葉掘り聞かれていた。唯世は、自分たちのいないところで×たまの浄化が行われていたことに一番驚いていた。

「今日は1日大変だったね、お疲れ様」

唯世はこはるを労うように言った。しかしこはるからすれば、唯世のほうが様々な大役をこなし大変な1日だったと思う。

「唯世もお疲れ様。今日は本当にかっこよかったです」

「でも、今度からは秘密事はなしにしよう。こはるが大変そうにしているのを見ると心配になってしまうんだ。」

「分かった。お互い秘密はなしね!約束」

そう言いながら2人で小指を絡め約束をした。
準備を含め本当に大変だったが、こはるにとっても唯世にとっても素敵な思い出になった。
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