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いよいよ本番!みんながんばれ体育祭

そしてこはるとあむの出場競技、二人三脚の時間がやってきた。
こはるの相手は桜木という名のクラスメイトの男子だ。
実はこの男子、こはるが転入してきたときに一目ぼれをし、ずっとその姿を追ってきた。二人三脚の抽選に当たった時は泣きながら神に感謝したという。
唯世とこはるが付き合いだしたという話を聞いた時は崖から突き落とされたような気分だったが、今でもこはるのことをあきらめられずにいた。

「花城さん、が、頑張ろうね!」

桜木は精一杯の笑顔でこはるに話しかける。足を結んでスタート体制に入っているのでもう心臓はバクバクだ。
そんな言葉にこはるも笑顔で答える。

「えぇ、練習通りがんばりましょうね」

桜木とは何度も練習を行ってきたので警戒心は薄れていたが、未だに外キャラを貫いていた。

こはる達の一つ前にあむとクラスメイトの男子の組はスタートした。練習での力を発揮できたようで、2位と好成績を残していた。
自分たちも頑張ろうと意気込むこはるだが、どうも桜木の様子がおかしい。かなり緊張している様子だ。

「桜木君?次出番だよ」

「あっうん!がんばろう花城さん」

その顔は真っ赤に染まり、どうも頼りなく見えた。

「位置についてよーい」パンッ

ピストルの音が響いた。各ペアが掛け声とともに走り出した。
こはる達もスタートしようとしたのだが

「練習通り外側の足からいくわね!せーの」

一歩目から息が合わずにいきなり転倒してしまった。これには会場中が驚いた。唯世も応援席から心配そうに見守っている。
桜木は自分のみならずこはるまで巻き込んで転倒してしまったことでついにはパニックになってしまった。

「ご、ごめん花城さん!俺が間違えて・・・」

だがこはるの目はまだ諦めていなかった。
すぐに立ち上がると、桜木に向かって言った。

「桜木君!まだ終わってないよ。最後まで走りぬきましょう」

桜木はそんな風に女の子に渇を入れられて、黙っていられるほど弱気な男ではなかった。やっといつも通りの冷静さを取り戻し、再度掛け声を出し走り出した。

周りの応援の声が強まった。すると、ビリから2番目で走っていたペアが転倒をした。女の子のほうがかなり気が強いようで、言い合いの喧嘩状態になっていた。
これなら抜けると、こはる達はペースを速めて結果4位という結果でゴールした。なんとかポイントは稼ぐことができた。

「花城さん、血が・・・」

先ほどの転倒で、こはるは足をすりむいてしまっていた。
走っている間は痛みを感じなかったが、ゴールして安心した今痛みを感じてきた。

「このくらい大丈夫ですから、早く戻りましょう」

こはると桜木はクラスの応援ブースへ足を進めた。そこで何かを決心したような桜木は、こはるの手を取って口を開けた。

「お、俺、花城さんのことが好きなんだ。今日は嫌な思いをさせてごめん。でも二人三脚だって花城さんと走りたいから立候補したんだ」

真剣な表情で伝える桜木。こはるはこのタイミングでの告白に戸惑ったが、しっかり答えなければと思った。
しかし、その答えが桜木の元へ届くことはなかった。
こはるの体が宙に浮いたからだ。

「こはる、こんなに血が出てるじゃないか」

唯世だった。クラスブースから走ってきた唯世がこはるを抱き上げたのだ。これにはこはるも桜木も目を見開いて驚いた。
しかし桜木は、告白の返事を遮られたことに対して怒りを感じていた。

「おい辺里、いくら花城さんと付き合ってるからって邪魔はしないでくれ」

そんな桜木の言葉に、唯世も若干の怒りを浮かべながら応戦した。

「こんなにも血が出ている。まずは治療ブースに連れていくべきだ。こはるのことを本当に考えているのならば」

そう言われて桜木は反論も何も言えなかった。その通りだったからだ。自分が転ばせた挙句、怪我の程度も考えずにそのまま応援席に戻ろうとしていたのだから。
その雰囲気に、こはるはまずいと思い唯世の腕の中で声を上げた。

「そんなにひどくないから大丈夫!ほら唯世、治療ブースに行こう」

そんなこはるを見て、唯世は抱き上げたまま治療ブースへと向かって歩き出した。

「桜木君、あなたの気持ちにはこたえられないわ。でも二人三脚とっても楽しかった。ありがとう」

去り際に、こはるは桜木に向けてこう残した。


治療ブースまでしっかりお姫様抱っこで運んでくれた唯世は本当に王子様のようだった。本人にそれを言ったところでキャラチェンジをしてしまうので心の中で留めておくが。
治療ブースには保険の先生と保健委員が数名いて、運ばれてきたこはるに驚いたものの丁寧に治療をしてくれた。

それにしても、いつからこんなにもたくましくなったのであろうか。私の幼馴染は。そうこはるは考えていた。
かなり長い距離をこはるをかかえたまま歩いてくれた。同年代の女子の平均体重よりは軽いほうだが、それでもかなりの重労働だったはずだ。昔ではもちろんあり得ないことだった。男の子の成長はすごい。そう思わずにはいられなかった。

「唯世、ありがとね」

そう素直に告げたこはるに対して唯世は

「こはるは僕の大切な人だから。それに、競技へ向かう桜木君を見ていたらすごく嫌な予感がしていたんだ。間に合ってよかった」

「間に合ってよかったって、大げさだなぁ」

こはるは笑いながら言った。しかし、唯世からすれば十分大ごとな事態だったようだ。

「大事なこはるが他の男の子に告白されてだまってはいられないよ」

まっすぐな表情で唯世は言った。いつからこんなにも積極的な男になってしまったのか。こはるは赤い顔で考えていた。
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