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さすらいの黒猫さん?!揺れる心

大きな声で実習生の名前を呼ぶあむにクラス中がざわざわする中、イクトだけが薄い笑みを浮かべていた。

「あら日奈森さんお知り合い?じゃあ二人の案内役お願いしちゃおうかな」

先生に名指しで指名されたあむは心の中で自問自答を繰り返していた。なんでイクトがここに?ていうか教育実習?どういうことなのー!!

「よろしく、日奈森さん」

そう笑顔で言い放ったイクトに対し、クラスの女子から悲鳴に近い歓声が上がった。


そして休み時間。
突如やってきたイクトに対してあむと唯世は詰め寄っていた。こはるはその様子をすぐ横で見ていた。

「なんであんたが教育実習なんてやってんのよ!」

「そうですよイクト兄さん。一言言ってくれればよかったのに」

二人に対して若干めんどくさそうにイクトは答える。

「別に教師になりたいとかはない。課外実習の話し合いの時に寝てたらこんなことになってただけだ。たぶん、あの女のせい」

そう言いながら、共に実習生としてやってきた佐藤沙良のことを指さした。人受けのよさそうな彼女は、さっそくクラスメイト達に囲まれていた。

「なんであの人のせいなの?」

そんなあむの問いに対して

「あいつ、俺のこと好きみたいだから」

とイクトは答える。
唯世とこはるは驚いていた。そしてあむは固まった。

「す、すき?佐藤さんがイクトのことを・・・」

「あぁ、勝手に俺がここの実習を希望しているって教授に言ったみたいだ。ガキの面倒みるのは面倒くさいが、お前らがいるならいいかと思ってそのままにしておいたが」

「イクト、好き、佐藤さん、実習・・・」

あむの脳内はオーバーヒートしているようで、ふらふらし出した。そんなあむをこはるが支える。
こはるを暫く見つめたイクトは、昔の記憶を思い出した。

「どこかで見たことあると思ってたら、お前昔唯世といっしょにいたやつか」

こはるもそう言われて、だんだん昔の記憶を思い出してきた。
唯世と遊んだ幼少期、途中からよくいっしょに遊ぶようになった兄妹がいた。たしか唯世の家に居候していた・・・。

「わぁ、イクトくんかぁ!ごめんなさい、すっかり忘れてしまっていたわ!」

「いや、お前も大きくなったな。唯世も少し合わないうちに背が伸びたか」

ちょっと前では考えられないくらい優しい言葉をかけてくれるイクトに、唯世はうれしくなった。
イクトと、その妹の歌唄とはいろいろとあったけど、今では和解していい関係を紡げている。

「はい、少し伸びました」

「まぁ、ちびには変わりないがな」

わいわいと話す3人を見てあむを正気を取り戻す。
そしてイクトへ話しかける。

「とにかく教育実習するならまじめにやってよね!体育祭も控えててみんな忙しいんだから。それから校内の案内とか必要なら連れて行ってあげてみいいけど」

そんなあむをみてイクトとこはるは笑い出す。

「あむちゃんてかなりのツンデレさんだね」

そうこはるに言われたあむはそっぽを向きながら顔を赤くしている。

ただ、そのやりとりを見ていた唯世は若干顔を曇らせているようだった。
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