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夏を楽しめ!キャンプ2日目

テントの荷物の中から無事スマホを手にしたこはるは、みんなの元へ戻ろうとした。すると、その方向から唯世が歩いてきた。

「唯世、どうしたの?」

「こはるがどこかに行くのが見えたから」

どうやら心配をして様子を見に来てくれたようだ。そんな唯世の優しさにこはるは胸が温かくなった。

「スマホ忘れちゃって。もうとったから戻ろう」

そう言って歩き出すこはるの手を唯世が掴んだ。こはるは突然のことに驚き唯世の方に体を向けた。

「少し2人で話さない?」

唯世はそう言ってこはるの手を引きベンチへと向かった。ベンチに座る前に落ち葉やほこりを掃ってくれる。さすがの気の利きようだ。

「もう2日間終わっちゃうなんて早いね」

「そうだね。明日の夜はみんなと別々で寝るのかぁ。寂しいかも」

心地よい夜の風が流れている。唯世とこはる、2人にとってこのキャンプは特別な思い出になった。

こはるはとてもリラックスした気持ちで会話をしていたが、唯世は違った。最初よりも段々と緊張を帯びたような表情になっている。

「唯世、どうかした?」

「いや、その」

こはるの心配そうな姿を見て、唯世は覚悟を決めたような目になった。

「本当はもっとかっこよく決めたかったんだけど・・・。こはる、僕はこはるのことが好きだよ」

いきなりの愛の言葉に驚くこはる。だが照れながらも自分の気持ちも伝えた。

「私も唯世が大好きだよ」

「それで、この間のリベンジしてもいいかな・・・?」

「リベンジって」

静かな空間に2人きり。長いベンチの中央に肩を寄せ合って座っている。リベンジとはきっとキャンプの前にこはるの部屋でのことだろう。

「キス、してもいいかな」

唯世はまっすぐこはるを見つめて言った。こはるは恥ずかしさのあまり一瞬俯いてしまうが、少し考えてからゆっくりと顔を上げた。

「私もキスしたい」

そう答えた瞬間、唯世の左手がやさしくこはるの頬に添えられた。反対側の手は膝の上で握られたままだ。

やがてゆっくりとこはるの顔に近づいた唯世。こはるが目をつむった時、2人の唇は重ねられた。

10秒ほどで唇は離れ、2人の目もゆっくりと開かれた。どちらとも真っ赤な顔をしている。
やがてこはるが口を開いた。

「私すごい幸せだ」

その言葉に唯世はうれしそうに同意した。しばらく温かい空気が流れていたが、遠くから唯世を呼ぶ声が聞こえた。

「唯世~どこへ行った」

どうやらキセキのようだ。2人はベンチから立ち上がり声の方向へ向かった。
キセキのいる場所に着くと、彼はティアラに叱られているようだった。

「もう、せっかくいいところでしたのに!」

「す、すまなかった」

ティアラの必死な形相にキセキは状況もわからずたじたじしている。これは助けてあげなければとこはるが間へ入った。

「ティアラ、キセキどうしたの?」

するとキセキが助かったという表情で教えてくれた。

「最後に線香花火で対決をするそうだがお前達がいないから呼びに来たのだ」

「へぇ、楽しそうだね。戻ろうかこはる」

「うん!」

みんながいる場所に戻ると、既にそれぞれの手に線香花火が握られていた。

「こはるたんと唯世遅ーい!これから世紀の真剣勝負が始まるっていうのに」

そう言いながら2人に線香花火を一つずつ差し出した。

「ルールは簡単、1番最後まで残った奴が優勝!以上!」

空海が楽しそうに中央のろうそくへ火をつける。そこから火を移して勝負が始まるようだ。

「よーいどんっ」

一斉に火をつけると、ばちばちっと小さな花火が輝きだした。
持ってきたライトはすべて消して真っ暗な空間で行う線香花火。まるで小さな星空のようにキラキラと光り続けていた。


「結局ビリは俺かよ・・・」

空海は頭を掻きながら項垂れた。1番最初に火が消えたのは空海の花火だった。そして、最後まで残ったのは唯世の花火だった。

「明日罰ゲーム考えないとね」

「どんなのがいいかなぁ」

あむとややは楽しそうに空海を眺めている。

「罰ゲームなんて聞いてないぞ!」

そんな空海の言葉にあむはにやにやしながら答えた。

「だって今考えたもん。あー楽しみ」

そう言いながらテントへと歩き出した。空海は依然悔しそうな表情をしている。
その様子を見て唯世とこはるはクスクスと笑っていたが、キセキとティアラに催促されて急いでテントへと歩き出した。
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