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刻巡りて神と人は出会う [ゼノバース2世界観]

あれから数十分後..。時遅くして到着したトランクスに魔界の者達を引き渡すと、私はその場にあった人間の死体を抱え、ハムと共にあの女がいる救護室という場所に向かった。
ヒィラ「ミゼル…!貴方はまた無茶を…!!」
人間の死体を見せると、女の反応は思った通りだった。冷や汗をかき、そわそわするかの様な素振りを見せ、今も慌てふためいている。
まあ..人間は大抵、何か身近なものを失うと戸惑うと聞く...。これもおそらく、その一つだろう。...ただし、この女の様子で一つだけ違うものがあった。それは驚いてはいるものの、何処か平然としていたからだ。そして後に伝えられた意味を私は知る事になる。
ヒィラ「…今から二時間45分後に再び此処に来なさい」
唐突と言われた不可解な言葉。その意味を知る由も無く、私達の頭は只々混乱する。
ハム「え?」
ザマス「なぜ…?」
ヒィラ「それはあなた自身の目で確かめてみる事ね…。それでは、アタシは別の事頼まれているから行くわ。…じゃあね、神さま」
女はそう言うと、部屋から出ていき、取り残された私達は只々その場に立ち尽くし、唐突にハムに話し掛ける。
ザマス「……ハム」
ハム「なぁに?ザマス…」
ザマス「……私は。…いや、やはり何でもない」
「毒されているのだろうか?」そう聞こうとした。だが、己のプライド故に許す訳も無く、その感覚は己の底に無作法に投げられた。もう二度とおかしなものを持ち出さない様に。不必要なものを感じない様に…。
ザマス(私は何故、たかが人間風情に此処まで狂わされているのだろうか…。ああ…死体が目に入るだけで気色が悪く、体中が間際らしい。やはり、人間等と関わるべきでは無かったか……)
そう独り呟くと、私はそこらにあった椅子に重い腰を掛け長い時を流した。




それから二時間40分位が経った…。しかし、時の流れが重く、ずっしりと体に沈み掛ける。視線を感じ、ふと横目をやると、そこにはハムの心配そうな顔色が見える。
ザマス(お前がそんな顔をする程、私の今の表情は酷いのだろうか)
ハム「………ザマス。大丈夫?気分転換に何処か行く?」
ザマス「いい…。此処には私の行く場所も、同志も何も無いからな」
ハム「そうか」
ザマス「すまないな、ハム」
ハム「ううん。大丈夫。…ザマスはミゼルの事どう思ってたの?」
ザマス「急にどうした?」
ハム「ごめん。僕が聞きたいだけなんだ。嫌だったらいいよ」
ザマス「……すまないな」
ハム「分かった」
ハムとの会話でさえも無気力に感じ、自身にも呆れが出る。
ザマス(本当に何をしているのだろうな。私は…)
顔を下に俯き脱力感に囚われていると、背後から気配を感じ取り咄嗟に振り返る。しかし、其処には先程の死体の姿は無く此方にあの顔を向けている人間の姿があった。
ハム「ミゼル?!!」
ザマス「!…人間!?貴様何故!!」
ミゼル「言い忘れててごめんね。実は僕、ちょっと…「君と同じ体」をしているんだ」
ふと人間の首筋を見ると、其処は湯気の様なものが上がっていた。それを見て私は一瞬で、理解した。「私と同じ体」という言葉の意味を…。
ザマス「人間…お前まさか……」
ミゼル「ある程度は察せたかな。…僕も君よりは劣るけど、不死に近い体をしてるんだ。だから、簡単な事じゃ死ねないんだ」
「不死」という言葉を聞き私の中には、何処知れずから溢れ出る怒りと、体から生じる脱力感をまじまじと感じていた。…私の心身共に溢れ出てくるその矛盾する感覚が、私を再び人間への苛立ちへと変えた。
ミゼル「それにしても本当にごめん。多分心配掛けちゃったよね!……?おーい。ザマス、大丈夫かい?」
ザマス「……煩い!」
ミゼル「へ?何が…!」
ザマス「私の許可無く勝手に行動するな!!貴様は、我の道具なのだぞ!それを貴様は勝手に…!!」
ミゼル「相当心配掛けちゃったみたいだね…!ごめんね!ザマス」
そう言った途端、人間は私の顔に触れた。まどろこしく触れる事で生まれる気色は悪いが、何処か騒めくその感覚と行動に、私は咄嗟に気の刃を出し、人間の頬を切り付けた。
ザマス「?!…触るなっ!人間!!」
ミゼル「…っ!」
人間の頬から出てくる小滴の紅い血が、勢いよく辺りに飛び散る…。それと同時に外に通じる扉が開かれ、あの人間二人の内の女の方が、人間の胸に勢いよく飛び込んだ。
シェイニー「大丈夫ですか!?お師匠様!!!」
ミゼル「安心してシェイニー。すぐに治るから」
シェイニー「お師匠さまぁ…っ!」
ミゼル「心配描けてごめんね。…スクードも大丈夫かい…。……っ!!?スクード!!」
反射的に前を見ると其処には、あの人間の男の前に立ちはだかっているハムの姿があった。
ザマス「!…ハム!」
スクード「…………退けよ」
ハム「絶対に退かない」
スクード「非力な者に手を上げる趣味は無いんだ。だから、さっさと退けよ?」
ハム「嫌だ」
スクード「……何でお前はそんな奴を庇えるんだ?わかんねぇなぁ…
。俺には…」
ハム「僕は…ザマスの事守りたいから!ザマスには、傷ついてほしく無いから…!!だから、絶対に退かない!!」
スクード「とんだ願望だな。コイツはそんな事全て、私利私欲で跳ね除けるぜ?」
ハム「何でそんな事が言えるの?!」
スクード「見たからな」
ハム「見た?」
スクード「ああ…。パトロール中に何回もな!!コイツがお前に何をしたか!!何を奪ったか!!」
ミゼル「スクード。それくらいにして、手を下げろ。これ以上歴史に支障を出す訳にはいかない。…分かるだろ?」
シェイニー「お兄ちゃん!お願い…!!」
スクード「………分かりました」
人間共が静止を呼びかけると、男は手を引いた。ハムは安心したのか…私の胸に飛び込み私の心配をしてきた。
ハム「ザマス!大丈夫!!?」
ザマス「大丈夫だ。お前は大丈夫か?ハム」
ハム「うん!大丈夫!!何事も無くて良かったよ!」
何も言わずに出て行こうとする男にハムは確認の意味を込めてか再び問いかける。
ハム「スクード!…ザマスに何もしない?」
スクード「……それは分からないな。なにせ俺は…コイツが「嫌い」だからな。行くぞ、シェイニー」
シェイニー「へ?…もう行っちゃうの!?って…!待ってよ!お兄ちゃーん!!」
そういう事をすると、人間の二人は部屋を出ていった。それを確認したのか、人間は再び私に話し掛ける。
ミゼル「ごめんね、ザマス。…スクードには過去に色々あって、君にキツく当たってしまうんだ。許してとは言えないけど、少し考慮してほしい。あの子にも同じ思いはさせてほしく無いからさ……。お願いできるかな?」
ザマス「それを私が飲むとでも思っているのか?貴様は…」
ミゼル「思ってるよ」
屈託のない笑顔を此方に向ける人間…。そんな人間に再び私は思う。
ザマス「本当におかしな人間だな。貴様は…」
ミゼル「ふふっ…!それで十分だよ」
人間が満足そうに笑うと、扉の外から気配を感じた。あの忌々しい…思い出すと虫唾が走る人間の気だ。
ミゼル「入って来ていいよ」
トランクス「ミゼルさん、すみません!!…今回も貴方に被害をなす事になってしまって…!」
ミゼル「僕は大丈夫だよ。…だから、安心してトランクス」
トランクス「分かりました…!それと耳に入れておいて欲しい事が…」
ミゼル「どうしたの?」
トランクス「先程ミゼルさんに害をなしたタイムパトローラーですが、実は…魔界との繋がりがある事が分かりました」
ハム「……!!」
ザマス「やはり…魔界の住民共か」
ミゼル「そうだね…。トランクス、僕も同行していいかい?」
トランクス「!..病み上がりで大丈夫ですか?」
ミゼル「うん。大丈夫!...悪いけど、ハムには僕の部屋に戻っていて、欲しいんだけど、大丈夫かな?」
ハム「うん!分かった!!」
ミゼル「ありがとう..!ザマスはどうする?..一緒に来るかい?」
ザマス「...私も少々気になることがあるのでな..。不本意だが、同行させてもらうぞ」
ミゼル「分かった。...じゃあまた後でね。ハム」
ハム「うん!また後で!!」
その後、ハムと別れ。人間の部屋に帰るようにと伝え別れると、私と人間は刻臓庫に向かい時の界王神に魔界の人間がやった経緯と行動を話していると、突然、男達が目を覚ました。人間共は自分達の置かれてる状況を理解したのか、必死にすがるように時の界王神に懇願した。だが、時の界王神は拒否し、処遇を下す。最後まで懇願する男達に呆れたのか人間は口を出す。
ミゼル「君達ねぇ…。流石にしつこすぎるよ?」
人間を見た瞬間、タイムパトローラー達は凍りついた。
タイムパトローラー一「何故!お前が生きている⁈確かに俺はあの時!」
ミゼル「殺した…でしょ?確かに一度意識は飛ばしかけたよ。でもね、あれくらいじゃ僕は死ねないんだ…」
タイムパトローラーニ「……ぐっ!化け物が‼」
ザマス「…‼」
時の界王神「…⁉あんた達…!」
ミゼル「化け物かー。まあ間違って無いかな…」
タイムパトローラー三「やっと分かりましたよ!大罪人と一緒にいる理由が!お前が化け物だからだ!」
ミゼル「…あっそ。それと君達、魔界側と繋がっていたりするのかい?僕が捕まっていた時、魔界に逃げるとか言ってたし…」
時の界王神「……どういう事なの?あんた達?」
タイムパトローラー一「…多少は縁を持っているが、あくまで情報を得ていただけだ!」
時の界王神「…情報?」
タイムパトローラーニ「そうだ!コントン都には魔界側の人間が何人かいる!そして、そいつ等が情報を魔界に流し、それを俺等が買っているという訳さ!」
ミゼル「!」
老界王神「!…なんじゃと⁈」
トランクス「……‼時の界王神様!」
時の界王神「……」
タイムパトローラー三「やっと貴方達の状況が理解出来ましたか…?それとね!ミゼル!お前の情報も少しだが、聞いている…!」
ミゼル「‼…何を聞いたの?」
タイムパトローラー三「……そうですねぇ…!例えば貴方の過去とかね」
ミゼル「‼」
その一瞬、人間が微かに動揺していたのが目に映った。不本意だが、致し方ないと私はその話題に食いついた。
ザマス「…人間の過去だと?」
タイムパトローラー三「やはり食いつくか…。まあそうでしょうねぇ…!お前はこの情報は気になってそうですし…!流石に魔界側もこの情報は中々売りませんでしたが、ある程度は話して下さいましたよ?…ミゼル!貴方は何故!あんな過去を持ちながら、そんなものに加担出来るのですか⁉…そいつは、貴方の仲間や身っ…!ぐあっ⁉」
何かを言おうとした途端、私でも目に追えないスピードでその人間の前に立ち、首を絞めつけた。表情を見ると、その顔には普段の間抜けな顔は無く…代わりに殺伐としたまるで怒りに飲まれた人間の姿があった。
ザマス「…っ!人間…⁈」
ミゼル「…黙れよ…」
人間が首を掴んでいる手に力を込めると同時に、掴まれている人間の目は当てもなく揺れ始める。それはまるで…今にも息絶えそうな程に…。
タイムパトローラー三「がっ‼」
老界王神「っ⁉ミゼル!それ以上はよせ!」
トランクス「!ミゼルさん!落ち着いて下さい!」
ミゼル「お前に僕達の…いや僕の何が分かる訳?傍観者どもが…!それを語るな‼」
時の界王神「…ミゼル!」
ミゼル「!」
時の界王神「手を離しなさい」
ミゼル「ですが‼」
時の界王神「離しななさい!」
ミゼル「……はい」
時の界王神の指示でやっと人間が首から手を離すと、離された人間は肩で絶え絶えと息をし、少し安堵しているかの様にも見えた。だがそれは、まだ殺伐としている人間が向けた表情によって常闇に消えた。
ミゼル「……もう喋るなよ?次はどうなるか…僕は知らないからな?」
タイムパトローラー達「…ひっ!」
そう言い威圧を掛けると、人間は時の界王神にお辞儀をしそのまま時の巣を出ようとする。
ミゼル「…それでは、僕達はこれで失礼します」
ザマス「……私もか…」
ミゼル「当然だよね?だって君もこんな奴らの事なんて見たくも無いし、どうでもいいでしょ?」
此方にも向けられる圧力に少々苛立ちを覚えるが、反論しても無駄だと判断し、私は人間の意見を飲みそのまま時の巣を後にした。

陽が落ち、闇に包まれたコントン都を人間と共に歩く…。初めてではあるが、その空気は肌寒く…圧迫感を覚える。
ザマス「…人間」
ミゼル「なに?」
ザマス「お前は、いつから不死になったのだ?」
ミゼル「もう忘れたよ。…もう「物心ついた時」からこうだったから」
ザマス「……そうか」
ミゼル「ザマス。離れないでくれてありがとう」
不意に聞こえたその言葉に私は反応するが、人間は何も言わずそのままその夜は別れた。まだ整理が追いつかない心境に、私はヤケクソに呟く。
ザマス「人間。お前は……哀れだな。本当に…」
その夜は寒く…それ以外何も感じる事は無かった。





???side……
コントン都では無い暗い空間…。そこには黒衣の男が中央にある台座の水晶で誰かと通信を取っていた。
黒衣の男「それで…ミゼルはアイツとまだいるのか?」
???「ああ…。ずっとべっただぜ」
黒衣の男「そうか…。俺もそろそろ出るか」
???「あまり目立ちすぎるなよ?お前は良い起爆剤になりそうだからな」
黒衣の男「わかっているさ。……全ては皆の為に」
そう言い男は通信を切る。鬱陶しいと思いフードを外すと、天井から吊るされた紫色の光に紅髪は妖しく輝く。
黒衣の男「ミゼル…。お前をアイツの呪縛から解き放つ為に…。俺はアイツを……」
その言葉が他に届く事は無く、怒りの糧として己に納めた。
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