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刻巡りて神と人は出会う [ゼノバース2世界観]

私はしばらくの間、一人あの丘の上で澄み切った空を見つめていた。そういえば此処に無理矢理招かれてから、1、2ヶ月程経つが時の界王神と顔合わせた事等一度も無く、全王さまに掛け合うと言っていたであろう報告とやらも耳になに一つ入ってこない。
それどころか人間共が蔓延り、敵意しか向けてこないこの場所に、私が居続ける意味等あるのだろうか…?
ザマス「やはり…こんな場所等さっさと出ていけばよかっ……」
私がそう言いかけようとした時だった。もはや何時もの様にと言わんばかりに、あの人間はズカズカと私の空間に入ろうとする。
無理矢理作ったとも感じるあの声色と笑顔で。
ミゼル「ザマス!!やっぱり此処に居たね…!」
ザマス「…何をしに来た」
ミゼル「何をって!それは勿論、君とお話したいなって思って此処に来たんだよ…!」
ザマス「大した用も無いクセに私に近づくな…!そして、話しかけるな!」
ミゼル「辛口だなぁ……!!でも、こういう交流も僕は大切なんじゃないかなと思うよ!…それに僕の事少し気にしてるでしょ?例えば、不死の事とか、この気の事とか…」
人間が少々予想外の事を口走ったせいか、私は一瞬微かにだが動揺してしまう。
ザマス「別に…其処まで気にしていない」
ミゼル「でも、少し気にしているじゃ無いか…!まあどちらにしろいずれ話す事だから、話させてもうらね。まず不死についてから………。この力が僕に宿ったのは両親の「願い」かららしいんだ…」
ザマス「それは…。ドラゴンボールから…か?」
ミゼル「うん。そうみたいだね…。まあ…僕は詳しくは知らないんだけど…」
何かを遠い目で空を見つめる人間の姿に私は思わず虚無感を覚えた。大抵この人間が過去の話をする時は、何時もは何かに縋りたらさそうな…そんな眼をしているにも関わらず…今は何かは分からないが、薄く、壊れそうな笑みを浮かべていた。
そんな私の気も知らず…人間は自身の話を続けた。
ミゼル「この力のおかげで助かったことも、助けられたこともいっぱいあった…。でも、僕はある日気づいたんだ…。僕はもう人では無い。只の忌子で化け物に過ぎないんだって……。その日まで対等で平等だったみんなからの扱いも、関係もギシギシと軋む様に壊れていったんだ…。その日から僕を人として見てくれるのは家族と親しい人達だけになった。だから、少なからず君が僕を人と見てくれているなら、僕は嬉しいよ。ありがとう、僕を人として見てくれて…」
そう言いながら、私の方に向けて足を進めて来る人間に私は不快感を覚え、そのまま払い除けようとする。
ザマス「分かったからそれ以上、私に近寄るな…!」
ミゼル「ごめんね。僕、昔から話すと止まらなくて…」
ザマス「言い訳は結構。それと…お前を私は人と見ていてはいるが、それはあくまで人間という名の害虫としてだ…」
ミゼル「いいよ。…それでもいい。人として見てくれるなら……。それに君が人間をそういう目で見てるのを僕はずっと前から「知ってる」からさ…」
よく人間が言っている言葉。「知ってる」…この言葉が私の尺に触れた。
ザマス「貴様は私を知っているとよく言っているが、貴様が私の何を知っている?何を知った様に言っているのだ?たかが人間の貴様が私を分かったかの様に……!!!」
ミゼル「知ってはいる…。でも、君の内までは分からないよ。だって僕は君じゃ…ザマスじゃ無いから…。だから、分からない…。分かる訳無いんだよ………。ザマス」
ザマス「なら…!その口で知ったような事を言うな!!」
こんな事を言ようが何も無かったかの様に振る舞う人間が、この時は珍しく動揺している…私にはそんな風に見えた。
ミゼル「ごめんなさい…。でも僕は…少しでも君の事知りたいから!!向き合いたいから!!だから…!もっと…っ!」
人間が何かを言いかけようとしたその時だった。此方の方にゆっくり、フラフラと向かって来る小さな気配を感じた。身に覚えがある気配に、まさかな…と考えながらも私はその方向を見つめた。
やはり私の予想通り其処にいたのは…。
ハム「ん~ぅ…!ミゼル~!遅いから、迎えに来ちゃったよ~!」
ミゼル「ハム!今日は起きるのが珍しく早いね!!」
ハム「ん~!頑張ったぁ!!」
ミゼル「ありゃりゃ…!これはまだ寝坊助中かな!!」
ハム「ん~…!あっ…!ザマスも、おはよぉ!!」
ザマス「何がおはようだ。もう昼過ぎだぞ?」
ハム「んー」
ザマス「人間貴様!やはりハムの体調管理をしっかりしていないでは無いか!!!」
ミゼル「…まあいいんじゃないのかい?「自己責任」って事で…」
ザマス「貴様…!!」
ハム「ザマスー…」
ザマス「!…ハム!!」
ハム「ミゼルは悪く無いよ。僕がしっかり体調管理出来てないのが悪いんだ。…だから、ミゼルを責めないであげて…」
ザマス「しかし…!」
ハム「お願い。ザマス…!」
うるうると、寝起きの霞んだ瞳で見つめて来るハム。何時も私はこのハムに「昔から」弱い。故にそれは今も変わる事も無く…。
ザマス「今回だけだからな」
ハム「ありがとう…!ザマス!」
ミゼル「おっ!?ようやく眠気が覚めたかな?ハム!!」
ハム「うん…!少しだけどね!」
ミゼル「はは!!じゃあハム…!!折角だし一緒にコントン都をお散歩しないかい?」
ザマス「っ!?…貴様!!いい加減に…!!!」
ハム「いいよ!見てみたいし、一緒に行こう!!」
ザマス「!?おい…ハム!!」」
ミゼル「ありがとう!ザマスも来るかい?」
ハムを抱き抱え満面の笑みで此方を見る人間に、私は一瞬微かに胸が騒めいた。今のはなんなんだ…!という思いが頭を過ぎったが、それはすぐに消え、頭の片隅にしまわれた。だが、まだ私はその余波に飲まれ、動揺してししまい、言葉が揺れた。
ザマス「き、貴様一人だと不安だからな…!!」
ミゼル「ありがとう!!じゃ、行こうか!!!」
そう言い人間は私に手を差し伸べた。勿論その手を私が握る事は無かったのだが、一瞬だけ戸惑ってしまった自分が居た。だが、そんな感情等…神である私には不要だ…と、自分に言い聞かせ…目的地に行くであろう人間の後ろをついていく。
変わらずハムを抱き抱えながら楽しそうに話す人間に目をやると、頭がぞわぞわする感覚に襲われる。前には無かった筈のこの得体の知れない感覚に私はある確信をしてしまう。
ザマス(私は、本当にこの人間に毒されてしまった…のか)
だが、そんな感情等この人間に伝わる事等永久に無いだろう…と、私はこの頭の騒めきをまるで忘れるかの様に、何時もこの人間に毒を吐く。
毎回思ってしまうが、今回だけはよく感じる…。嗚呼…やはりこんな人間等と関わるべきでは無かった…と。



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その後、私達がコントン都上空を飛んでいると、突然ハムが何か知らるかの様に降りるようにと促す。
ハム「あっ…!!ちょっとあの子の側に降りて!」
ミゼル「分かった!」
人間女児の側に降りると、ハムはそっと女児に話しかけた。
ハム「君は何をしているの?」
女の子「私はお花を探しているの」
ハム「お花?」
女の子「うん…!私がお母さんとよく見つけた大事なお花!」
その花に心当たりがあるのか人間は、タッチパネルとやらを操作し、その花らしきものを女児に見せた。
ミゼル「それって…こんなお花かな?」
女の子「うん!このお花だよ!!」
ミゼル「良かったら、僕達も一緒にこのお花探そうか?」
女の子「!…良いの!?」
ミゼル「勿論だよ!!ね?ザマス!」
ザマス「!?何故私が…!!…っ!?」
女の子「ありがとう!!お兄さん!」
ザマス「触るな!」
突然触れてきた事に怒った私は女児をその場に払い除けた。
ハム「っ!大丈夫かい…!?」
女の子「ありがとう!!全然大丈夫!じゃ探そうか!!お兄さんも見てないで行こう!!」
すると女児は咄嗟に私の手を握り締め、そのままひっぱりだした。
ザマス「!?おいっ!」
女の子「ええっと…此処には無くて、此処にも無いから…」
ミゼル「此処とかは…?」
女の子「其処はまだ探してない!」
ミゼル「じゃあ一緒に探そう!!」
女の子「うん!!」
それから数十分後…探していた花が見つかり、それを見た女児は喜ぶ様に飛び跳ねた。
女の子「ぁあっ!!お兄さん達と小豚さん!見つかったよ!見つかったよ!!」
ハム「良かったね!」
女の子「うん!お兄さん達と小豚さん!ありがとう…っ!!これずっと宝物にするね!!」
ハム「うん!!僕もこれを大切な思い出にするよ!!」
女の子「うん!私もだよっ!!」
ザマス「そんな花等そこらにもあるだろう…」
女の子「確かにいっぱいあるけれど、これはお兄さん達と頑張ってとったお花だもん!だから、絶対に枯らさない様に大切にするの!」
ザマス「そうは言うが命あるものは何時かは枯れるものだ。その花も…どれだけ大切にしてようが枯れるものは枯れるぞ」
ミゼル「うーん…。あっ…そうだ!……ザマス。押し花のやり方って分かるかい?」
ザマス「分かるが…何故私が?」
ミゼル「僕…女子力無いし、そういう事は兄さんとは違って疎くてさー…!」
ザマス「はぁ…仕方が無いな。特別に私が作ってやる。ほら…花を貸せ」
女の子「!…ありがとう!!お兄さん!!」
ザマス「良いか?これはこうしてだな……」
私が花に手をかけ作業を始めると、女児は目を輝かせて見つめ歓声の声をあげる。
女の子「わあっ…!お兄さんすごい上手だね!!」
ザマス「やわな人間でもこれくらいの事は出来るぞ?」
女の子「!!じゃあ私にも出来る?」
ザマス「教えれば出来るだろうな」
女の子「じゃあ…お兄さんが教えて!!」
ザマス「そんな事言ってないで見ろ。……出来たぞ」
女の子「わあっ…!ありがとうお兄さん!!」
ザマス「私は何もしてない」
女の子「お兄さーーん!!出来たよーっ!!」
私の作った押し花を見ると、人間はそっと切なそうな目をして笑みを浮かべた。一瞬でも気が抜けばよろけそうな程に力が感じられない人間。そんな人間に女児は心配の意を込めて言葉を発する。
女の子「お兄さん?大丈夫…?」
ミゼル「うん。……君達が作ったこの押し花が僕に力をくれたんだ…!ありがとうね!」
女の子「うん!!こっちも一緒に探してくれてありがとうね!!」
ミゼル「うん…!」
女の子「お兄さんに小豚さんもありがとうね!!」
ハム「僕は何もしてないよ!でも…凄く楽しかった!ありがとう!!」
女の子「うん!!………………」
ザマス「……そんなにジロジロ見つめても、私は何も言わんぞ」
女の子「………」
ザマス「人間にハムもう行くぞ…!」
ハム「えっ!?行っちゃうの!!」
ザマス「もう此処に用はないからな。分かったならさっさと…。っ!?」
ザマス「貴様何を…!」
突然の抱擁に戸惑う私を他所に女児はそっと抱擁を解き自身の話をした。
女の子「ありがとうのハグ!!お母さんが教えてくれたの!!また一緒に遊ぼうね!!小豚さんにお兄さん達!」
ザマス「誰が遊ぶか…ってハム!?」
ハム「今日は楽しかったよ!!ありがとう!!また遊ぼう!」
ティラ「うん!!私ティラって言うの!!小豚さんの事ハムって呼んでいい!?」
ハム「いいよ!仲良くしようね!!ティラ!」
ティラ「うん!!」
子供二人が仲良さそうにガヤガヤと騒いでるのを見てると、人間は私に近づき、笑顔で話しかける。
ミゼル「ハムとティラちゃん仲良しだね…!君も案外あの子の事、満更でもないんじゃない?」
ザマス「誰が思うか…!!」
ミゼル「はははっ!!」
大笑いする人間に何時もなら不快感を覚えるのだが、何故か今はあまり不快感を感じる事は無かった。寧ろ…。
ザマス(何かに内が圧縮されるかの様な……)
空にに目をやると、日が落ち始めている事に気づいた人間は何時もと変わらぬ顔で私に別れを告げようとした。
ミゼル「じゃあザマス…!今日も色々ありがとうね!!またあし…」
トランクス「ミゼルさん!!」
ミゼル「トランクス?そんなに急いでどうしたの?」
トランクス「突如現れた時の裂け目の中から邪気が流出してその気でタイムバトローラーの一部が暴走を…!!」
ミゼル「!…分かった!すぐに行くよ!!ザマスはハムとティラを宜しくね!!」
ザマス「おい待て人間!!」
また一人で突っ走ろうとする人間に苛立ちが走り、私は不快極まりないがある決断を下した。
ザマス「チッ…!!トランクス貴様に頼むのは不快極まりないが、ハムとこの者を頼むぞ」
トランクス「分かってる。そっちこそミゼルさんを頼んだぞ」
ザマス「貴様等に言われんでもそうする」
トランクスに二人を任せた私はその場を後にすると、少しでも人間に追いつこうと舞空術のスピードを上げた。
ザマス(もう…!貴様が不死を理由に無駄死にするのは見てられない!!)
そう思い私は人間に追いついた。
ミゼル「ザマス!?ハム達は…!」
ザマス「トランクスに任せている」
ミゼル「分かった!…君が居てくれるとちょっと心強いよ!来てくれてありがとう…!!」
少しの嬉しさを感じた。だが、何時もの様に私はすぐにそれを毒で掻き消した。
ザマス「フン…!!知るかそんな事…!」
ミゼル「ははっ!!」
この時の私はまだ知らなかった…この笑顔の裏に何が起こっているかなど…。これから待ち受けるものの定めを…。


















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