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刻巡りて神と人は出会う [ゼノバース2世界観]

突然振り翳された剣を間一髪で避ける。しかし男は薄い笑みを讃えながら囁く。
スクード「お前なら避けるよな。……知ってたぞ」
ザマス「ぐっ!?」
避けた先で待っていたのは蒼の気の刃だった。混乱している頭で、一瞬目をやると、男の片手には鋼の剣を握り…もう片手には気の刃を纏っていた。その瞬間、気の刃が私の顔を擦りそこから血液が垂れ流れる。
ザマス(たかが人間風情が不意打ちで私に傷をつけるとは…!!)
スクード「悔しいか?まあ悔しいよな?…そうだよな!?罪人さんよお!!!」
ザマス「黙れ!!人間風情がぁっ!!!!」
変わらず減らず口を叩くこの男に私は、「修行」という言葉を忘れ次第に加減が出来なくなっていった。しかし、男も加減というものを忘れたのか、攻撃の手が荒く激しくっていき、表情は気色の悪い…まるで狂気に飲まれているかの様だった。
スクード「はははっ!!!やっと本来の顔に戻って来たじゃねぇか!!!」
相手の斬撃に対応する私だったが、体は既に不死の回復が追いつけぬ程の傷と血が流れて出ていた。動く度に視界に入る雫には、まどろっこしさすら覚える程だ。
ザマス「チッ…!!」
シェイニー「お兄ちゃん!!やり過ぎだよっ!!!」
スクード「ははははっ!!楽しいよなぁっ!??なぁ楽しいだろう??!!ザマス様よぉっ?!!」
理性が残って無いであろう男の重い拳が鳩尾に低く響き渡る。鈍く、重く…それはまるで叫びの様に…。
ザマス「がはぁっ!!」
スクード「ははっ…!!もっと気高く美しい神様に「お楽しみ」をくれてやるよ!!!」
ザマス「チッ!!人間風情がぁっ…!!!!」
スクード「それくらい読んでるぜ…!!」
シェイニー「お兄ちゃんっ!!やめて!!!…ミゼルさん!お兄ちゃんを止め…!?ミゼルさん?どうし……」
ふと女の方向に目やると其処には、まるで死んだかの様な目をした人間の姿があった。
ザマス「?にんげ……!!」
スクード「あっちに気を取られてるんじゃねぇよ…!」
人間に目をやった一瞬だった。真上から男が剣で私の右腕を突き刺し、もう片方の手で首を固定し、そのまま地面に叩きつける。
ザマス「がぁっ!!?」
地面は激しい地割れを起こし、その衝撃で舞い上がった砂埃が辺りを包み込む。そして…喉の内側を圧迫される事と、そんな状況への苛立ちを込めて眼孔が開く…。
ザマス「ぐぅうぅ…っっ!!が…ぁっ!!…はな、せっ!!」
スクード「…は……ははは!」
意味もなく只々空虚に笑う男。その目には何も無い…まさにそれは空虚と呼ぶに相応しいものだった。何も理性が残って無いであろうその手は力を強めそのまま締め上げた。
ザマス「あがぁ…っ!!!?」
遠ざかりそうになる意識の中…人間の声が聞こえてくる。理性の無くした獣を抑えようとする声だ。
ミゼル「スクード…もう終わり。ザマスから手を離すんだ」
スクード「はぁ…はぁ……ぁはっ!」
ミゼル「スクード!!」
スクード「ミゼル…さん?俺…何して……」
ミゼル「スクード…手、離せるかい?」
スクード「………」
やっと離れた男の手を確認すると、私は酸素を求め浅い息を繰り返し続ける。浅い呼吸と胸の動きを見て何を思ったのか、人間は私に手を差し伸べようとした。
ミゼル「ザマス…。だいじょ……」
しかし、半ば差し伸べられた手を私は払いのけ拒んだ。
ザマス「貴様の手助けはいらん!」
傷が回復し、そのまま立ち上がった私は人間に問いた。
ザマス「もういいか?」
ミゼル「いいよ…。付き合ってくれてありがとうね…。ザマス」
ザマス「………」
そのまま空に上昇し飛行していると…ある事が頭を過る。
ザマス(先程戦った男の方…戦闘の戦い方が理性を失っているとはいえ、体に戦闘の記憶が刻み込まれている様だった。しかもまるで私の動きを読んでいるかのような……いや、知っているのか?)
だが、幾ら考えても心当たり等ある訳が無い。何故ならそれは只の…記憶に無い人間だったからだ…。
ザマス「まあ…。記憶に残る人間等そうはおらんがな…。それにしても……」
ザマス(凶暴性に掻き立てられ、そのまま飲み込まれていく姿。あれぞ…私が知る人間だ。あのようなものを連れ回し、住まわせている人間と時の界王神は何を思っているのだろうか…?)
ザマス「一応神の端くれでもある時の界王神が何故あのような事を…?だがそれにしても!あのようなものを連れ回すとは……やはりあの人間はどうかしている…!!」
私は…何も無い、まるで何も知らない純粋の様な雰囲気をした空に言葉を「また」投げ捨てた。




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ミゼルside……。




ミゼル「ザマス行っちゃったね…。まあ、後で会うだろうけど…!」
空に消え去っていくザマスを見届けた僕は二人に今回の修行の礼と謝罪を述べた。
ミゼル「二人共今回はありがとう。そしてごめんね。僕があの時スクードを止めてれば……」
シェイニー「お師匠様は気にしなくていいーのです!!お兄ちゃんには私がちゃんと言っておきますので!!!」
頭に手を置き優しく摩るそれは遠い昔の母の手を思い浮かべた。あの頃とは変わった…。そう信じたい僕はその感覚を何も言わずに感覚と共に飲み込んだ。
ミゼル「分かったよ。ありがとう。…今後こういう事がない様に僕も全力で努めるよ。スクードもそれでいいかな…ってあれ??」
さっきまで居た筈のスクードの姿が見えずその途端に頭を巡らせる。
ミゼル「スクード何処行ったのかなぁ?……あっ!…ヒィラのとこかな!ちょっと行ってみよう!…じゃあシェイニー!スクード見つかったら連絡頂戴!!」
シェイニー「はい!!ミゼルさんも宜しくお願いしますね!!」
ミゼル「うん!じゃあまた後で!!!」
シェイニーと別れ、舞空術で移動すると其処には案の定スクードがいた。
ミゼル「スクード…!良かった!!」
ヒィラ「しぃーっ!声が大きいわよ……!!ミゼル…!寝てるんだから静かにしなさい!」
ミゼル「ぁぁっ!ごめんね…!ヒィラ!」
ヒィラ「また無茶させたでしょう?これで何度目??修行は良いけど、体調位案じて欲しいわよ」
ミゼル「ごめんね…ヒィラ。全部僕の責任だから、彼等は責めないであげて…」
ヒィラ「………。貴方焦り過ぎよ。無理はしない事前にも言ったわよね?」
ミゼル「うん。覚えてる」
ヒィラ「覚えてるならしっかりしなさい。貴方はアタシ達にとって「大切な存在」なんだから…」
ミゼル「大切か……。ヒィラ、僕は何も出来ないのかな?死んだ皆んなが、母さんが見たらどう思うのかな?」
ヒィラ「………ミゼル。もう止しなさい。いいわね?」
ミゼル「うん…。ごめんねヒィラ」
病室を出て太陽が眩しく痛く感じた。過去を思い出すと何時もこうなる。
辛く…重く…痛い。この感覚がいつか脱ぎ払われる日が来るのだろうか……。僕が……を認められる日が、果たして来るのだろうか?
そう想いながら僕はザマスのいるであろう場所の方へと足を進めた。

















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