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刻巡りて神と人は出会う [ゼノバース2世界観]

朝。僕は隣でガサガサと何かの物音を感じ、目を覚ました。不意の眠気で大きく口を開けあくびをして辺りを見渡すと、ドアの前で行ったり来たりしているハムの姿が見えた。
ミゼル「ハム…どうしたの?」
ハム「僕が知ってる気を感じるんだ…!それを確かめようと!」
凄いな。1日足らずでザマスの気を感じ取ったハムの気の探知の速さに感服しながらも、僕は何処かで重いものを感じた。
ミゼル(こんなにも早く……。…僕も同行するか)
ハム「?ミゼル…?」
ミゼル「…分かった。僕も同行してもいいかい?」
ハム「うん!いいよ」
ミゼル「ありがとう。じゃあ行こうか」
寝巻きから服を着替えると、僕達は部屋を後にした。 
しばらく足を進めていると、他のタイムパトローラー達がハムの事を見つめる。珍しいのに変わりないのだろうが、変な者に絡まれないか不安だ…。
ミゼル(ここ最近…変な者達が多くなった気がするし、少しは警戒しないとね…。……?)
僕は何処からか視線を感じ取り、咄嗟に周りを横目で見渡すが、何も居ない。
ミゼル(気のせい……だよね)
ハム「?どうしたの?」
ミゼル「いや何でもないよ。行こう」
ハム「うん…!」 



スクールエリアにたどり着くと、変わらずザマスの険しい顔で立っていた。怒号が響きそうな空気が漂う…が、それは同行していた者によって一瞬で変わった。
ザマス「遅いぞ人…っ⁉ハム!何故お前が此処に⁈」
ハム「…ザマス!」 
心からの喜声をあげたハムはザマスに突っ込むかのように胸に飛び込んだ。それに応えるかのようにザマスはハムの背中を摩る。
ザマス「ハム…!何故人間と?」
ハム「僕が此処に来て困ってた時に、ミゼルが助けてくれたんだ!」
ザマス「それは真か?」
ハム「うん!」
ザマス「……」
一瞬戸惑った顔をしたザマスは一人黙り込む。しばらく経つと、嫌な気満々でやっとその重い口を開けた。
ザマス「……人間。今回は礼を言ってやる。だが、私を通さなかったことは許さんぞ…」
変わらず憎まれ口を叩くザマスに呆れを感じてしょうがない。
ミゼル「分かった分かった。今度からは君を通すよ」
ハム「ザマス…!落ち着いて…ね?」
ザマス「……ハム。お前は人間と一緒に居て大丈夫なのか…?こんな人間と共に居るより私と共にいた方が良いのでは無いか?」
ハム「心配し過ぎだよ。ミゼルはそんな人じゃ無いよ。…それに僕は知りたいんだ。人間について…ミゼルについて…。それに時の界王神様に同居するって言っちゃったし…だから、君と住むのは難しい。ごめんね…!」
ザマス「………仕方がないな」
ハムに見せる表情は人間に向けるものとはやはり別だ。普段には無い柔らかい笑顔…落ち着きながらも、温かい声。そんな一面を見ている僕の視線に気づいたのか、ザマスはいつもの険しい顔に一瞬で変え、警告を伝える。
ザマス「人間…ハムに何しでかしたら許さんぞ……!!」
ミゼル「失礼だね。僕がそんな事する奴に見えるかい?」
ザマス「見える」
ミゼル「えー!…それは失礼だよ。ザマス」
ザマス「事実を言ったまでだ…」
ミゼル「うぅ……。じゃあ気を取り直して!ザマス。修行しよう?…あっ!…ハムは見ててね」
さらりと先程の事を流そうと話題を変えようとするが、ザマスは別のことにお怒りの様だった。
ザマス「何時私が貴様に主導権を授けた……?」
ミゼル「ザマス…もしやイラついてる?」
ザマス「貴様には関係無い…!!」
ミゼル「へぇー…。じゃ、今度こそ修行しよ……」
ザマス「人間」
いつもより低く重い雰囲気に振り切ろうとした。でもそれは、ザマスの一言でさらに重くなった。
ミゼル「?今度はなに?」
ザマス「貴様、私に何か隠しているだろう?話せ」
少しバレたかな…。僕は内心冷やついた。だが、ザマスはともかくハムを巻き込む訳にはいかない。そう思った僕は知らない様に着飾ってみた。
ミゼル「……僕に何かがあるのかい?」
ザマス「恍けるな!貴様から時々感じるここに居る人間でも感じない程の神の気の強さ…。貴様何者だ!」
ミゼル(流石に出し過ぎた……か)
僕は黙った。心配そうな目で見つめてくるハム。負の感情に包まれている目で見てくるザマス。一つの目でもこんなに違うのだと改めて感じる。僕は知りたい…。何故君がそうなったか、何故その刃を向けたのか…。僕は知りたい。……知りたかった
ハム「?ミゼル…??」
ミゼル「……いずれ、君にも話す時が来るだろう。…だから、それまで待っててくれ」
言いたいことの意味が伝わったのか、ザマスの顔はさらに険しくなる。
ザマス「…………」
ハム「……ザマス、大丈夫??」
ザマス「大丈夫だ。……ハム、何かあったら私の所に来い。よいな?」
ハム「よく分からないけど、分かった!」
ザマス「すまないな」
ザマスがハムを地面にゆっくりと下ろすと、僕を見て釘を刺す。
ザマス「人間。ハムを巻き込むなよ?」
その問いに僕は答えた。
ミゼル「元々そのつもりだよ」
ハム「二人共…!!落ち着いて!!」
ザマス「まあいい…!次会った時に話してもらうぞ」
ミゼル「はいはい…。で、修行は…?」
ザマス「やらん!」
ミゼル「気分で修行の放棄は良くないと思いますよ?…シショー」
ザマス「……」
ザマスは竹林エリアに方に飛び去り、取り残された僕達は立ち尽くす。
ミゼル「あーあ…これは困ったねー。どうしようかな…」
独り言をしていると、ハムがぺこりと自身を責めた。
ハム「僕、何か悪いことしたかな……」
そんなハムを見て、親近感と痛みを感じた僕は彼の目線までしゃがみ込む。
ミゼル「君は悪くないよ。安心して。それに…ザマスとはいずれ話すから………」
ハム「わかった」
ミゼル「ありがとう。取り敢えずコントン都の説明がてら帰ろうか」
ハム「うん…!」
立ち上がり、歩きだそうとした時、遠くから気を感じた。
ミゼル(この気は…)
気の正体に思わず笑みが溢れる。
ミゼル「ふっ…!」
ハム「?どうしたの?」
ミゼル「何でもないよ」
僕達が歩きだすと、その気は跡をつけてくるかの様に着いてくる。
ミゼル(相変わらず素直じゃないね。君は……)



ーーーー ーーーーー   ーーー ーー

ザマスside…

ザマス「チッ…!忌々しい!」
あの人間が私の気を感じ取り、嘲笑った事に対して私は不快感を感じる。しかも、人間では感じとれない筈の神の気をだ。その事と、先程の事が余計に私の内の怒りを掻き立てる。
ザマス(あの人間…!何故私の気を感じ取れるのだ!!)
ザマス「人間風情が…!!」
苛立ちを隠せずにいると、人間とハムが歩き出した。人間は私と変わらずハムにこの街の説明をしているのだろう。
ザマス(まあ…実際聞いたところで、どうという事も無いが…)
それを頭の隅に置きながら、私は再び人間とハムを見つめた。舞空術とやらの準備をしているのだろうか、時の巣の方へ飛んでいく。私も跡をつけようとするが、背後から視線を感じ取り咄嗟に振り返る。
ザマス「…何者だ!!…っ?!」
私が振り返り見た景色は…コントン都では無く、身に覚えのない別の空間だった。
ザマス「ここは…?!」
???「時の狭間だ」
ザマス「っ!?」
声のした方を見ると其処には、邪気に包まれた全身黒衣の者達。
???「……」
ザマス「誰だ!!貴様は!!!」
???「テメェに答える事は何もねぇよ。……アァハハハハッッ!!!」
男は最後に狂ったかのように高笑いを零した。その瞬間、背後にいた者達が私を取り囲み構えを取る。
ザマス「っ!!」
???「いいか?ソイツは死なない。だから、充分絶望させてやれよ?!!お前等の怒りをソイツに…しっぺ返ししてやれ!!!」
人間共「言われなくてもやってやるよ!!!」
???「それと、俺はバレたら、ヤベェから先に戻らせてもらう。お前達…只では済ますなよ?」
ザマス「待て!!!…っ!!」
主犯格とも言える男を逃さんと舞空術の速度を上げようとするが、途中で顔に殴打を受け顔を上げると、其処には憎しみしかないような…だが笑っている目があった。
黒衣の人間「おっとー?俺達の事を忘れるなよーー?」
咄嗟に距離を取り、私も戦闘体制に入る。
黒衣の人間「アタシ達の…家族の…大切な人達の怒りをお前にわかるー?分かったら…さっさと、捕まって利用させてもらうわ!!」
黒衣の人間「お前等…やるぞ」
それを合図にするかのように他の人間達が一気に襲いかかってくる。目視で見ても30はいそうだ。厳しい戦闘を覚悟し、私はヤケクソに心の内側で呟いた。
ザマス(くそっ…!)





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