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刻巡りて神と人は出会う [ゼノバース2世界観]

ミゼルside…。

前日あったタイムパトロールから、数日立った。今では、僕達の修行場と化している荒野の空間。その空間で僕達は今日も修行をしている。だが、今日の修行はいつもより険しく長い。理由は簡単、今日はザマスが自身の技の一つ「神烈波」を伝授してくれるからだそうだ。ただ…正式に伝授してくれるのは、ザマスの課題をクリアしながら、技を繋げていくというもので、言うなれば試験でもある。
ミゼル(だからといってこんな…キツイことする?)
ザマスからの課題は難色そのもの。理由はこうだ。一回でもミスをすると、その動きの最初からやり直しとなる。これが、試験クリアを妨げている最大の壁である。
ミゼル(流石に息が上がってきたな…!)
制限されていた時間が近づいてきたと感じ、流石にまずいか…と、感じた僕は、一気に残りの体力を出し切りザマスに近づく。最初に軽い攻撃を何回かし、その次に背後に瞬間移動し、神烈波を放つ。
ミゼル(よし…!)
先程まで、出来なかった事が初めて出来たことに喜びを感じつつも、自身の未熟さと弱さを身に染みて感じる。
ミゼル(もっと…もっと強くならなきゃな)
試験が終わり、スクールエリアの噴水の前に戻り、不意に空を見上げると思わず荒い呼吸が安らぐ。しかし、あれから水分もろくに取ってないので、流石にキツイとザマスに休憩を提案する。しかし…当然、お師匠様はそんな事気にする事無く……。
ザマス「これくらいで根を上げるか?全く…!貴様それでも我の道具か…!!」 
ミゼル「とりあえず、休憩取りたいでーす」
ザマス「チッ…!さっさとしろよ!」
ミゼル「ありがとねー」
どうにか了承を得た僕はザマスを背に、そのままショッピングエリアの方に足を進める。だが、その道中…茂みの中から小さな音と、気を感じ取り、僕はそのものに話しかける。
ミゼル「………。君さ…分かってると思うけど、それで隠れてると思うわけ?大丈夫だから、出てきてみなよ」
すると、茂みから羽のついた一匹の小豚が出てきた。しかし、その瞳にはまだ、警戒の色が滲み出ている。
???「……」
ミゼル「そんなに警戒しないでほしいな。僕は君と仲良くなりたいだけなんだけど…。あっ…名乗るの忘れてたけど、僕の名前はミゼル。君の名前は?」
ハム「ハムです」
ミゼル「そうか…。教えてくれてありがとうね…。じゃあ早速聞くけど君はどうやって此処に来たの?」
ハム「分からないです…。目が覚めたら此処にいて……」
目が覚めたら此処に居たというワードで色々な原因を考えたが、どれもピンと来るものは無い。
ミゼル「うーん。一度、時の界王神様に相談してみるかな?」
ハム「時の界王神?」
ミゼル「うん。君は知らないと思うけど、歴史の乱れを修復する仕事をしている神様なんだ。此処の街に住んでいる人達は皆タイムパトロールっていう、時の界王神様の仕事を手伝う人達が殆どだよ」
ハム「分かりました。説明してもらってありがとうございます」
ハムは頭を下げて礼を述べる。そんな姿を見て、僕はなんとも言えない感情になる。
ミゼル(この子は…幼いが随分しっかりしてるんだね…。いや…しっかりせざるを得ないのかな…)
そんなものが頭を過ぎる中、僕はハムの方に姿勢を向き直し、目線まで屈み込んだ。そして、ある提案をした。
ミゼル「いや大丈夫だよ。…突然だけど、君戻れるまでの間僕と一緒に暮らさない?」
何故…と、困惑しているようだった。そんなハムに僕は、提案の理由を話す。
ミゼル「理由を勝手に言うとね。多分、君が元の時代に帰れるまで時間が掛かると思うんだ。だから、それまでの間同居しようと思って。だって身よりが無いんでしょ?得だと思うけど…?」
最後の部分は少し脅し口調になってしまったが、気にすることは無かった。ハムにとっては、事実だからだ。若干悩んでるハムに目をやると、彼は了承し、宜しくお願いします…と、頭を下げた。ハムと、仲良くなる為に僕はある事を頼む。
ミゼル「うん。宜しくねハム。それと僕の事は呼び捨てでいいからね?」
ハム「え?ですが!」
ミゼル「いいから」
そう言い念を押すと、ハムは先程まで見せなかった笑顔と表情を見せた。
ハム「分かった。これから宜しくね…ミゼル!」
僕もその気持ちに少しでも、応えられるように返した。
ミゼル「うん。宜しくね。ハム…!!………?なにこの声?」
二人でそう伝え合うと…遠くから、何やら大きな声が近づいてきた。徐々に聞こえてくる聞き覚えのある声に僕はある人物達が浮かぶ。
ミゼル「……もしかして!」
気がつくと、その人物達は僕の眼中に入り込む。
シェイニー「お師匠様ーー!!!」
スクード「コラァ!!!待て!!」
ミゼル「シェイニーに、スクード!」
シェイニーが僕の手前で、急ブレーキをかけると辺りに風が吹く。飛ばされないようにハムの手を握ると、シェイニーが興味津々に目を光らせる。
シェイニー「お師匠様!!この子は?」
スクード「こいつはな…シェイニー。第十宇宙の北の界王の元にいるものだ。確か、名前は……」
ハム「ハムです」
シェイニー「そうか!ハムって言うんだね!!で、ハムはどうして此処に?」
ミゼル「実は…原因が分からないんだ」
スクード「原因が分からない…?」
ミゼル「そうなんだ。だから、時の界王神様に相談しようと思ってさ。あっ…!そうだ。君達が時の界王神様の所に連れて行ってくれないかい?」
スクード「良いですが…何故ですか?」
ミゼル「こっちにも色々あってね。察してくれると嬉しいな」
シェイニー「うーん。難しい事は分からないけど、連れて行ってあげようよ!お兄ちゃん!!」
スクード「気乗りはしないが、しょうがねぇな」
ノリノリに応えてくれるシェイニーと、嫌な顔はしているが、了承してくれたスクードの二人に感謝の気持ちを伝えると僕は、水を求めて改めて、ショッピングエリアに向かった。

ーーーーーー ーーーーーーーーーーーー  ーー

ミゼル「ふぅ…!生き返る!」
久々に飲む水に生きた心地を感じ、一人癒しに浸かっていると…遠くから、気が近づいてくるのを感じとる。
ミゼル(…これは、早くした方がいいかな)
手に持っていた紙コップをゴミ箱に捨てると、舞空術を使い上空に飛び立ち、その気の方向に向かう。
ミゼル「これは、後が怖そうだなー」
思ってもない気持ちを小声で囁くと、近づいてきた気の主が低い声と、険しい顔で話しかける。
ザマス「……言いたい事は分かるな」
ミゼル「うーんと、遅れてごめんなさい?」
ザマス「……」 
黙り込むザマスに頭を悩ませ、声を出す。
ミゼル「あれー?違ったかな?」
そんな僕に痺れを切らしたのか、ザマスの表情が怒りに染まり、上空に怒号が響く。
ザマス「いい加減にしろ!!神を何時まで待たせるつもりだ!!!」
ミゼル「ごめんね。これには色々あって……」
ザマス「言い訳は聞かん!!!」
理由を言い訳と跳ね除け、聞き入れる気ゼロのザマスに僕は長期戦を覚悟した。
ミゼル(…大変だな。これは…)
ザマス「聞いているのか!!!!」
ミゼル「はい……」
その後もザマスによる持論は続き…かれこれニ三時間が経った。
ミゼル(はあ……まだ終わらない…)
持論という持論の嵐に僕は気も薄れてくる。
ザマス「人間!!!何を惚けている?!!!神の話を聞け!!」
ハムの事が気になり、僕はザマスに名前は伏せて用件?を伝えようとする。
ミゼル「……。ねぇザマス。僕これから大事な用事があるんだけど……」
しかし、ザマスはそんな事まで気に留めず………。
ザマス「知らん!それよりも我を待たせた罪をだな…!!!」
あぁ…やっぱりな…と、心に収めながら、僕はザマスを背に時の巣の方へと飛ぶ準備をした。
ミゼル「ザマス、ごめん。僕そろそろ行くね」
一応謝罪の言葉を述べて、僕は時の巣の方へ飛んだ。
ザマス「おい!!待て!!人間!!!!」
怒号を放ちながら追いかけてくるザマス。流石に呆れが出てくると、速度を上げ、ザマスを一気に突き放し、時の巣の門前に到着する。
ミゼル(相変わらず、諦めが悪いな。まぁいいや、早く入ろう)
そう思い時の巣の中に入り、刻蔵庫に向かう。すると、刻蔵庫の中から、時の界王神様とハムが出てきた。
ミゼル「時の界王神様!…?シェイニーと、スクードは?」
時の界王神「ミゼル、お疲れ様!あの子達は用事があるからって先に帰ったわ。それより、この子のことなんだけど……。私で調べてみても理由が分からないの…」
ミゼル「!時の界王神様でも、分からない程…ですか」
時の界王神「そうね。…調べてみるから、その間にこの子は貴方に預けるわ」
ミゼル「はい」
時の界王神「じゃあ、おやすみなさい」
ミゼル「はい。おやすみなさい。行こう?ハム」
ハム「うん!」
時の巣を出ると、僕はハムと共に僕が住んでいる部屋に向かう。
ハム「ねぇ、ミゼル」
ミゼル「?なに?」
ハム「ミゼル、今日忙しかったの?中々、来なかったから…その…」
ミゼル「大体そんなところかな」
ハム「そんなに何をしてたの?」
ザマスの名前をあえて名前を伏せて、僕は事実だけをハムに話した。
ミゼル「お師匠様と、修行と説教をね……」
ハム「凄いね!!!ミゼルってお師匠様がいるんだ…!!僕も会いたいな!」
この子に起こる「これから」を知っている僕にとってその言葉は、心身を重くさせるものだった。だが、その気持ちを抑え…僕は思ってもない事を言った。
ミゼル「………会えるといいね」
ハム「?ミゼル…?」
違和感を感じたのか、ハムは僕の名を呼ぶが僕は早速話題を変えた。
ミゼル「そろそろ着くよ。此処が僕が住んでる建物」
ハム「うわぁ!大きいね…!!」
初めて見る物に目を輝かせているハムに眩しさを感じながらも、僕は…もう行くよと、言いハムと共に自室に向かう。
ミゼル「此処が僕の部屋。散らかっててごめんね」
ハム「いいよ!後で僕と片付けようればいいし!」
ミゼル「ありがとう。……じゃあもう寝よ…って!ハム?!!」
ハム「ミゼル?これは……」
ハムが母の遺品を触ろうとしているかのように感じた僕は、大声で気持ちを伝えた。
ミゼル「それは駄目!!!」
ハム「?!…ごめんなさい!」
泣きそうな目で言うハムに、自我と冷静さを取り戻す。
ミゼル「!いや…僕もカッとなり過ぎた…ごめん」
ハム「ううん。僕が悪いから気にしないで。ミゼルが怒る程、これは大事なものなんだよね?」
ミゼル「うん」
ハム「……」
重い空気を変えたいと、僕は先程までやろうとしていた事をした。
ミゼル「まぁ気を取り直して、寝るとしようか。…ハムはベッドで寝て。僕はソファーで寝るから…」
ハム「そんな!!悪いよ!!僕を抱き抱えていいから、ミゼルもベッドで寝よう…!!」
元々押しに弱い僕に、輝かしい顔で言ってくるハムに僕は負け、ベッドで寝るのを許した。
ミゼル「うぅ…!分かったよ。おいで…」
ハム「!!うん!」
布団の中に入り込むハムは、正直ぬいぐるみのようで可愛いと思ってしまう。
ミゼル「寝心地はいい?」
ハム「うん!ふかふかだよ!」
ミゼル「それは良かった。じゃあお休みハム…。……もう寝てる」
寝るのが早いなと感心してハムを見ていると口から、彼の主人の名前が出てきた。
ハム「んぅ…。ザ、マスゥ…。ん…」
寝言の一つに僕はなんとも言えない感情になる。
ミゼル「…ハム。君にとってのザマスは何なんだ…?」
届かない独り言を囁くと、僕は一足遅く眠りについた。











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