時の狭間
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他の文書を解くとリーベン家以外にも俺たちが持つちからに関することも記されていた。
(一般的に魔法と呼ばれている)
こういう能力やちからをもつ人間は数少なく、それぞれ得意分野があり、苦手なものもある。
俺は攻撃が得意だが結界やら治癒はほぼ扱えない、ハンジは結界、治癒、攻撃と幅広い。エルヴィンは攻撃と守護。
只でさえ魔法扱えるのは珍しいが複数になると周りがうるさいのが面倒か。
新しい魔法を見つければ試すこともある。
裏庭が広くとってあり訓練場だったのか今でも強力な結界と認識阻害が施され攻撃魔法でも壊れるといったことがない。
(暴走したハンジが一度ここでやらかした)
念の為にハンジが結界を重ね掛けをして実験を行うのだが、今の魔法の扱いより洗練され、発動も早く、少ない力の行使で効果も大きい。
始めは軽い攻撃魔法、次はもう徐々に強めに。それでも問題はない。
「どう?新しいやり方は?」
「申し分ねえな」
「しかし、どうしてこの扱い方が今に伝わっていないのか、この点も調べる必要があるな」
そんなことや解読、そしてピースをうめる。
体がいくつあっても足りねぇし、寝ても休んだ気がしない。
倒れる前に、と一週間に何度か深い睡眠に入れるよう、順番で睡眠薬を使用する。
※※※
「今までの経緯だとやっぱりリヴァイがポイントらしいね」
「あまり嬉しくはねえな」
「そういうなって。あの子に一番近いのが貴方ってわかったんだからさ。収穫だよ」
そうは言っても俺は知るのがどこか怖かった。知った時俺は……
※※※
『それで?姉上はーーーが王都に行くのを止められなかったと』
『そもそもが王命だ。姉上の身にもなってみろ。条件付きの交渉でも僥倖だ』
『私としても納得してはいない。何かあれば即、連れ戻すよ』
『タウンハウスに信用のおける者をおけばある程度は安心できるか』
『姉さま、兄さま達ったら。そんな心配しなくても大丈夫よ。とって食われるわけでもないし、ね?』
____
______
これは誰の記憶だ?
「新しいね。今までと違う視点だ」
「そうだが、誰の記憶なのかがわからんから気持ち悪い」
「多分、この子自身だと思う」
相変わらずの女を見ながら夢の内容をハンジに伝えると何故か懐かしげにポソリとつぶやく。
「さあ、戻ってまとめようか」
※※※
『では行って参ります』
『途中までは転移を利用できるから、まずはタウンハウスに行きなさい』
『嫌がらせや理不尽なことで悩まされたらすぐ報告すること。お前が思っているよりもあちらは陰湿なところだからな』
そんな過保護な忠告を受けながら少女から女性へと変わるつつある特有の危なかっしい雰囲気を持ったその子は王都への転移を気にした様子なくなんでもないように転移陣から消えた。
※※※
それからタウンハウスに先行していた馴染みの顔をみてしばらくは王都見学と称した観光をしていると出仕日ギリギリになってしまった。
前日は家族に言われたことと同じように何かあれば些細なことでもいいから戻ること、週一で帰ることを執事から重々言い聞かされた。
『王都はそんなに恐ろしいところなの?』
『そうですね。人が多い分だけあって良からぬことが常識だったりする者もいますから』
『そう……でも私にできることをするだけだし、いろんな考えや価値観を持った人に会えるのはきっといい刺激になるわ』
初めての王宮は白亜で優美でーーーが知る建物とは趣が全く異なった。
故郷は素朴さと荒々しさを併せ持つがここはそのどれとも違い綺麗に整い家族や執事が言うこととは真逆な印象をーーーは覚えた。
身分を示すペンダントを外門と内門で見せ馬車の家紋ですぐに通された。
近づくに連れーーーは高揚した。
(今日から、ここでお仕事と生活するんだ)
初日は国王と国の重鎮が揃った広い執務室で姉から叩き込まれたカーテシーをし、国王の言葉を待って自己紹介を行った。
その場にいた全員が驚きをうまく隠しながら次の人物が入室した。
『初めまして。貴女が所属する魔法魔術研究塔、略して魔塔の主席主任のハンジ・ゾエ。―――これから宜しく』
国王とはじめ、重鎮が居並ぶなか臆することないフランクな態度でニコニコと握手を求めるハンジに貴族の挨拶ではなく握手で返した。
『ハンジよ、これからお主の部下になるが決して無理はさせないよう心せよ』
『わかっています、早速ですがいろいろと案内をしたいので御前失礼致します』
ほぼ返事を聞かずに礼をとって執務室をーーーを連れ退室する。
これでいいのだろうか?と疑問持ちながら連れられるまま一緒に退室する直前に何とかカーテシーをして出る。
十分に離れると前を歩くハンジは止まって振り向くとニカっと人好きのする満開の笑顔を見せ、ーーーを急ぎ足で廊下を歩きながら大雑把に王宮内を案内する。
ある区画に入ると騎士服を纏った男性が何人もいてーーーが故郷の騎士たちとだいぶ違うと感じていた。故郷の騎士は体をつくり、生き残る為なら剣だけでなく様々な手段を訓練していたがここは王宮と同じで雅らかで荒々しさの欠片もないと感じる。同じ騎士といってもここまで違いがあるのに驚きを隠せないでいるとハンジがウィンクする。
『ちょっと。そこの君。エルヴィンとリヴァイはいる?』
問いかけられた騎士は顔を引きつらせながらも不在を告げるとハンジは『なぁんだ』と一言だけ述べるとクルリと立ち去る。
その時、騎士がホッとしたのをーーーは不思議に思った。
重要な場所は一通り案内すると今度は前置きもなく転移し別の部屋にいる。簡単に転移を使うハンジに驚きながらも部屋を見回す。
書類や本があちこち散乱し実験用具が恐らく来客用のテーブル、ソファを占領している。
もしかしたら大変なところに来てしまったのかもしれない。
※※※
「聞いて!私も彼女の夢を見た!!それも出会う前の分もその後の彼女の感情もっ!」
ガバっと起き上がったハンジは興奮した状態で取り留めなく話し続ける。
それをエルヴィンも俺も止めずに聞き、ハンジが息を切らしたタイミングで詳細を聞き出しエルヴィンがメモに取っていく。
俺とハンジ、時系列に並べて考察する。
まだ名前はわからないままだが顔は地下の女で間違いない。
エルヴィンも夢はみたらしいが軽い挨拶を交わしたくらいと言っていいた。
「どうして、顔もはっきり見えて、状況もだいぶわかったのに名前だけノイズがかかったみたいのままなんだろ」
復活したハンジが疑問に思っていることは俺も気になっていた。
「うーん。リヴァイ、これまでの古文書に全く彼女の名前や名前の手がかりになることはなかった?うまく言えないけどさ、名前が鍵になる気がして仕方ないんだよね。勘なんだけどさ」
※※※
その後、何故かピタリと誰も夢は見なくなった。
これまでのみた夢を再度、考察しリーベン家について古文書を見直してみる。
一度おおまかに解読したのもあってか最初よりは楽らしくエルヴィンやハンジも気になる点を洗い出していく。
「これだけじゃないような気がするんだよなぁ。だってこの本ダイジェストみたいだ。彼女が出仕した経緯、それから初期の生活やらだ。その後は?なんで彼女があの状態になったか詳細がなくって事故とあの状態にした。って事しかわかんない。その間が重要なんだと思うけど。どうしてそのことにふれてないんだろう」
それは全員が感じていた。
「これからどうするってんだ。触れてないってことは意味がそんなにないか、隠したいとかいろいろ考えられるが、事情まで調べるのか。無理だろ」
俺の反論にハンジも首を捻っている。
「……」
黙って俺達のやり取りを聞いていたエルヴィンがやっと口を開いた。
「根拠はないが年代・書いた人物で几帳面に整理、管理されている。次の分はリーベン家のその後についてであの女性もリーベン家のそれも直系なのに触れられていない。可能性としては最初から残す気がなかったか、別に保管されているか、口伝か……」
また行き詰まりで振り出しに戻った。
ヒントになっていたような夢も見なくなり苛立ちだけが募る。
「護れとか孤独から放てみたいな事を言う割にはその理由がねぇってのはふざけてんのか?あの女はそのまま寝かせとけ」
誰も言葉を返さない状況に俺はもう諦めてもいいんじゃねえか、とさえ思っていた。本来の目的は今は失われた魔法を見つけることが第一だ。
女についてはある程度はわかったのだからそれでいいだろう。
全部調べて回るなんてのは無理な話だ。
俺以外はそう思ってないらしいが突破口がない。古代語の解読もリーベンについてしか俺には出来ねぇ。
他も試したが駄目だった。つまり古代語を読める訳でもない。あれを俺が読めたのは何らかの理由があるのかも知れないし、あの夢についても奇妙で不可解だがこれ以上どうしようもないだろう。
出来るならあの女をあの中から出して当時のことなどを直接聞き出せれば一番で手っ取り早いが手掛かりのない膠着状態を長引かせても意味がない。
俺は見切りをつけこの屋敷から出ることにした。
今後は新しく解読された魔法があれば実験には参加する。
ハンジは諦められずぎゃあぎゃあ騒いだが無視して研究所のセキュリティに戻ることにした。
エルヴィンもここだけに時間を割けない。
結局ハンジだけが怒りをあらわにしなからも屋敷に残ることになった。
※※※
部下に任せっきりだったセキュリティ部門は特に問題は起こっていないが報告書やらシステムの見直しやらで俺が処理
するものも多々あり、とにかくそれを捌く日々に追われていた。
ふとした瞬間、あの女のことを考えるが、だからといってこれ以上どうすりゃいいのかわかんねぇんだ。
わかんねぇもんはわからねえ、時と場合によってはそのほうがいいこともある。
※※※
屋敷に行くことも何度かあるがほぼ以前の仕事に戻った。
日常に満足してるのと同時に何か足りないと感じている自分はなかったことにして。
「ん〜もう。貴方っていつも突然よね。こっちの身にもなってよ。連絡しても忙しいだけでいきなり呼ぶなんて私でなければ付き合えないわね」
「仕事だったんだよ、ピーピー喚くな」
惰性で連絡を取ってる女に久しぶりに連絡を取るとすぐに都合をつけてくれた。
お互いに割り切った関係で恋愛とか煩わしい感情はない。
そのほうが俺には居心地がいい付き合い方でこいつも別の男が複数いても気にならない。
そんなドライな関係だ。久々に性欲を解消してシャワーで体を流して服を着始めると文句が飛んできたが構わず俺の性分をいくらか知っているからかしつこくなくお互い服を着てそこで別れた。
いつだったか自宅に、と言われたが拒否し自分の自宅なら?と問われたがごめん被る。俺のテリトリーにもこいつのテリトリーにも踏み込むつもりは一切ない。
別れて自宅へ向かう車の中でスマホがうるさく鳴る。
ブルートゥーススピーカーで応対するといつにも増してハンジが騒いでいる。
うるさすぎてハンドルを握る力が強くなるが切らずに我慢する。
「カズサだ!彼女の名前は!!ちょっと寝てるの?!起きろ!!エルヴィンには連絡すみだから!貴方も早くきてくれ!!今すぐだ!」
最初は何を言ってんのかはっきりしなかったが最後の言葉だけは脳に叩き込まれたような感覚がする。
自宅への道を変え、屋敷へとスピードをあげ走らせた。