時の狭間
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ハンジが悔しがるほど俺は手掛かりになるかもしれない古文書を時間はかかるが読み解いていた。
そこにあるのはやはり精霊やらと精霊に愛された若い女性。
ただの物語と思っていたが、その頃からめったに夢を見ることない俺が断片的な、それでいて夢の人物の心情が伝わりすぎてたまに帰る自宅でさえ寝るのが嫌になってくる。
※※※
「おや、いつも悪人顔だけどさ、今日はいつにも増して悪人顔に磨きがかってるねぇ」
夢の件についてはまだ誰にも話していない。
例の件に影響を受けてるだけだろうと思うが一方で関連があるようにも感じられるがどうにも話しにくい。
夢の中の俺はバカみたいなマントと騎士服のようなものを常に着ている。
それはエルヴィン似のヤツも着てはいるが俺より階級が高そうに見える。
夢の中でも上司のようで今と関係性は変わらないようだ。
そしてついでと言うか、ハンジまで出てきやがる。
ハンジは俺たちとは違い足首まで覆うローブを着ている。
突飛な夢に過ぎない。妙な地下の女の服装に影響を受けただけの夢だ。
だがその夢の中にでてくる俺の心情が鮮やかで起きた時には寝た気がしない。人より短いと言われる睡眠時間が浅くて疲れが取れないでいる。
※※※
それでも夢のせいで睡眠不足だからと休む理由にはならない。
今日も図書室でせっせとページを捲って記述されている内容を読み解き、書き込みする。
ちなみにハンジは簡単にPCかなんかでデータ取っておけば?と言うが、重要なもんが飛んだらどうすんだ。
それと別にああいうのはハッキングとか、よく知らんが色々あるんだろう?
そんな危なっかしいもんに記録を残すなんぞ俺からしたら正気か?と問い質したくなるが、ハンジの返事はセキュリティしっかりしてるしバックアップとりゃいいだけじゃん。本業はセキュリティ担当のくせに機械オンチはこれだから。と馬鹿にしてくるのが若干苛つく。
「ねえねえリヴァイ。メインの名前が出てこないっておかしくない??」
「うるせぇよ。邪魔すんなら出てけ」
「はぁーい。わーかったよ」
ハンジの言う通り確かに名前が出てこないのは不自然な感じだ。
解読し続ければ出てくるとは思うが。
___
_____
宮殿内の比較的こじんまりとした部屋ではあるがそこには近衛や大臣が複数人控えても十分な広さがある。
国王が入室し顔ぶれをみて「嵐が来るが皆落ち着くように」と発言とはあわないやわらかな表情で伝えてきた。
その意味を理解しているものは諦めの顔のようだが俺は一体何が起こるのかと警戒していた。
バンッ!両開きの扉を勢いよく開け放ち入室してきたのは女性だった。
その姿はドレスとは程遠い、むしろ兵士の軽装で目は鋭く王を見据えている。
帯剣していることもあり自然と俺も柄に手を伸ばすが隣のエルヴィンは反応していない。
開口一番に女性ははっきりとした口調で王に詰め寄っていた。
「我が王よ、戦場を飛び回る我ら一族に事前の話もなくいきなり承服できかねることを王命として出された理由をぜひ伺いたいのだが?」
(おいおい。いくらなんでも国王に対しての言動がすげぇな)
常々口が悪いと言われる俺でも国王にあんな物言いは無理だ。
「リーベン女辺境伯、変わらず健勝でなりよりだ。しかし挨拶くらいはほしいものだな」
「一刻でも早く領地へ戻らねばならないのです。おわかりでしょう」
不敬罪で処罰もんじゃねぇか?
俺の考えよりもリーベン女辺境伯と国王の話は進んでいくがそこに貴族らしい回りくどいやたら丁重で裏のある言葉は皆無だ。
「しかし、そなたらの末の妹君は領地から出たことないと聞き及んでおる」
「それがなんだと言うのです?本当の理由は加護目当てでしょう」
ははは。と王は陽気に笑っているが漂う剣呑な空気にこっちは戦々恐々だ。
「その通り。彼女が王都にいれば加護を更に受けられるやもしれぬ。
それに魔術についてもそこら辺のものとは能力が違うと聞いておる。
しかし事前に話し合ったとしてもそなたらが断るのは火を見るより明らか。ならばこうするしかなかろう?」
「王命であれば断れぬと?謀反を起こす事を予想はしていなかったですか?」
その場が凍りつく。一線を超えた言葉に俺は剣をいつでも抜けるようにしていた。
「それはないな。お主ら一族が王国を裏切ることはないからな」
「試してみますか?」
俺は一歩足を踏み出す。
「先祖代々の忠誠、先代は特に忠誠心を重んじ、またそなたらも同じ。その一族の長が謀反とは面白いことを言うようになったな」
睨むより殺気に近い視線を向けられているが国王は余裕の笑みさえ浮かべている。
張り詰めた空気を壊したのは好々爺のふりをしている王都騎士団長のドット・ピクシスだ。
「そう毛を逆立てるな。お主らは拒否したい、だが王命に逆らうのもお主らの性分では無理じゃろうて」
苦々しげなリーベン女辺境が力を抜いた。
※※※
ハッと体を動かすと図書室でどうやら寝落ちしていたらしい。ハンジあたりがかけてくれたのかブランケットがずり落ちる。
目は覚めてきたが夢のはずなのにそこにいたかのような緊張感と始めてぼやけた断片的なものでない夢のあとに引きずられ、やけに喉が乾いた。
とりあえず水分をとるために室外にでて冷えた水を飲むと気分もだいぶ落ち着く。
(さっきのはなんだ?確かに文書でリーベン家へ出仕の王命が下された。とあったが……まるでその場にいたような)
文書のさらりとした内容に反して見た夢は臨場感があり戸惑う。
俺は何度も降りた地下へ行くと変わらず目を閉じ女はそこにいる。
ソッと触れるが石のひんやりとした冷たさしかない。
(……彼女はずっとここにいる)
不意に妙な安堵と浮かんだ思いに混乱した。
俺はどうしてそんなことを?
何度も見る訳のわからない夢と睡眠不足にくわえて急に湧き上がった感情。
そして何度も特に理由もなく来てしまう自分。
(ちくしょう、頭が回らねぇ)
しばらくしてから図書室に戻るとハンジは戻っていたらしく、俺の書いたものをPCに打ち込んでいる。
「リヴァイ。戻ってきたんだね」
当然のことを言うハンジに視線をやるとハンジも真剣な面持ちで俺に切り出してきた。
「あなた、私達に言ってないことがあるよね。それも重大なさ。私も同じっちゃ同じだけど」
「なんのことだ」
「ん〜。あなたが寝ていた時に気になる寝言ボソボソ言っててさ」
いくら眠りが浅くともそんなもん知らない。
どんな寝言を言ったのか俺の方が聞きたい。
「(辺境伯とは言え国王への不敬罪で処罰もんだろ)」
こういう時のハンジに下手な言い逃れはできないのは経験上知っている。躊躇したがここ最近のことを話すとハンジはどこか納得したような態度で茶々を入れることなく聴いている。
全部、話し終えるとハンジなりに気になる点を尋ねてくる。
わかる限りは話し終えると考え込んだ。
「その夢をさ、貴方はどう思ってる?ただ不思議なことに影響されてるだけだと思う?影響されてるのは確かだろうけど……実は私も妙な夢をちょっと見てるって言ったらどう感じる?」
にわかには受け入れがたいことだった。逆に俺が訊くとハンジの夢は頻度が少ないがかわいい妹のような存在がいるが顔も名前すらわからず数少ない内容と自分たちは頭から足首まで覆う暑苦しいローブを着ており、俺やエルヴィンも出てきた。楽しく感じるときもあれば、ひどく憤りを感じて目が覚める時もあるとのことだった。
共通点は浅い眠りの時によく見ること、顔もおぼろげで何度も出てくるのに名前すら思い出せない。俺とエルヴィンが騎士みたいで笑いそうだ。と無駄な感想もあったが重なる部分が多いのも事実だ。
俺とハンジが見ている、そして両方にエルヴィンがいるならエルヴィンも似たような夢を見ている可能性も高い。
今日は接待でエルヴィンはこっちに来れないので訊くことはできない。
だが確かめる価値はある。
※※※
それからエルヴィンにも確かめたが騎士をしているらしい。というとこしかわからないようだった。三人のうち情報量が多いのは俺で今すぐ眠ってくれない?とハンジに即効性の睡眠薬を飲まされそうになるがなんとか回避した。
解読を進めているうちに条件付きで出仕を了承したこと、魔術に精通した女が来た事で王都や周辺も魔物?の被害が少なくなり、またしても王命で条件が増えリーベン辺境伯らは不満を王へ直訴した。
だが、出仕している辺境伯の妹はその条件すら受け入れたが王宮での立場は悪かったらしくある日、事故により故郷へ戻った。
ずっと意識がない状態でリーベン辺境伯らは精霊の協力のもと精霊の愛し子の妹を死なせない為に禁術を行い、以後は子孫代々であらゆることから護るようになった。
精霊らは愛し子におこった出来事を哀しみ、人と人の世界への干渉は最低限になり加護の薄れた世界は次第に荒れていった。
リーベン辺境伯一族は王国に尽くしながら荒れた時代であっても愛し子を守ることと血を絶やすことはなかった。
ここまでが一冊にざっくりと記されていた。その最後の最後まで禁術で眠りについた愛し子の名は記されず、時と人が揃ったら目を覚ます。とこれまた不可解な言葉で締められていた。
その間も俺達は夢を見続けており解読前のはずなのに一致する内容の夢を見た。
「時と人が彼女を目覚めさせる、か。この一族はその時まで護るため血を絶やさない役目を背負ったという解釈でいいのかな」
「その可能性もあるが。しかし……最後まで名は伏せられているのは態となんだろう。そして我々は知らぬうちにそれを負わされたかも知れない」
「何故、俺達なんだ。俺達が見た夢でも名前も顔さえよくわからないだろ?」
「それよりもさ、血を絶やさないで護る、ならキリアンさんからの申し出で自体がおかしい。だって分家はあるんだ。血は薄いかもしれないけど」
「私達である必要……」
結局、地下の女の事情は記されてたことでだいぶわかったような気もするが不明点も多く残った。
王命で無理矢理に出仕させたにも関わらず立場が悪いのは?事故とはなんだ?
ある程度は補足しているような夢をみてはいたが鮮やかな部分もあればぼんやりとした部分の落差が激しい。
二冊目からはその後の王国を取り巻く情勢やリーベン辺境伯についての記述になっていて肝心な女の名はわからずじまい。
「あのさ、気を悪くしないでほしいんだけど、二人も夢みてるよね?最近の夢の影響なのか私すっごいリヴァイに腹立ててるんだ。今も。それが何故守れなかった、あれほど言った!って」
「私は、特に怒りとかはないが避けられなかったか?と考え込む自分がいる」
「リヴァイ、貴方は?」
「……」
「貴方が一番情報が多いんだ、何か思うことなかった??」
「滅茶苦茶な感じだ。その中でもこんなはずじゃなかった、とか守れなかったとかだ」
「よし!今までみたものをつなぎ合わせてみよう。彼女についてはそっちが鍵になりそうだ!」
ずっと連動するような夢をみているがそれぞれの視点でみているのは間違いない気がした。
「ハンジ、研究からはずれてる気もするんだが。あくまでも旧時代の魔術やちからについてが研究のはずだ」
「エルヴィン、地下にいるのは禁術をかけるほど重要人物で生きているかもしれないじゃないか!それにヒントみたいにみてる夢は意味がきっとあるはすだ!キリアンさんが亡くなった時、かけられたのは立派に役目を果たしました。だ、それにこの不思議な図書室は?私達しか立ち入れない地下は?彼女は?無関係だと言わせない」
結局ハンジの熱量に納得する俺はハンジと同じだ。と言うとエルヴィンも渋々同意した。
それから思い出せる限りお互いが見た夢をまとめることになった。
人手は殆どいらなくなったのでこっちにいた部下はほとんど戻していたし、エルヴィンはともかく俺とハンジは余程の事がなければ、この屋敷に留まる事になった。
監視か、守りなのか、どちらもなのか。
ハンジを中心に白昼夢のようなお互いの見た夢を繋ぐとパズルのようにピースがうまっていく。その度に俺の気分は落ち着かずにいた。
そこにあるのはやはり精霊やらと精霊に愛された若い女性。
ただの物語と思っていたが、その頃からめったに夢を見ることない俺が断片的な、それでいて夢の人物の心情が伝わりすぎてたまに帰る自宅でさえ寝るのが嫌になってくる。
※※※
「おや、いつも悪人顔だけどさ、今日はいつにも増して悪人顔に磨きがかってるねぇ」
夢の件についてはまだ誰にも話していない。
例の件に影響を受けてるだけだろうと思うが一方で関連があるようにも感じられるがどうにも話しにくい。
夢の中の俺はバカみたいなマントと騎士服のようなものを常に着ている。
それはエルヴィン似のヤツも着てはいるが俺より階級が高そうに見える。
夢の中でも上司のようで今と関係性は変わらないようだ。
そしてついでと言うか、ハンジまで出てきやがる。
ハンジは俺たちとは違い足首まで覆うローブを着ている。
突飛な夢に過ぎない。妙な地下の女の服装に影響を受けただけの夢だ。
だがその夢の中にでてくる俺の心情が鮮やかで起きた時には寝た気がしない。人より短いと言われる睡眠時間が浅くて疲れが取れないでいる。
※※※
それでも夢のせいで睡眠不足だからと休む理由にはならない。
今日も図書室でせっせとページを捲って記述されている内容を読み解き、書き込みする。
ちなみにハンジは簡単にPCかなんかでデータ取っておけば?と言うが、重要なもんが飛んだらどうすんだ。
それと別にああいうのはハッキングとか、よく知らんが色々あるんだろう?
そんな危なっかしいもんに記録を残すなんぞ俺からしたら正気か?と問い質したくなるが、ハンジの返事はセキュリティしっかりしてるしバックアップとりゃいいだけじゃん。本業はセキュリティ担当のくせに機械オンチはこれだから。と馬鹿にしてくるのが若干苛つく。
「ねえねえリヴァイ。メインの名前が出てこないっておかしくない??」
「うるせぇよ。邪魔すんなら出てけ」
「はぁーい。わーかったよ」
ハンジの言う通り確かに名前が出てこないのは不自然な感じだ。
解読し続ければ出てくるとは思うが。
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宮殿内の比較的こじんまりとした部屋ではあるがそこには近衛や大臣が複数人控えても十分な広さがある。
国王が入室し顔ぶれをみて「嵐が来るが皆落ち着くように」と発言とはあわないやわらかな表情で伝えてきた。
その意味を理解しているものは諦めの顔のようだが俺は一体何が起こるのかと警戒していた。
バンッ!両開きの扉を勢いよく開け放ち入室してきたのは女性だった。
その姿はドレスとは程遠い、むしろ兵士の軽装で目は鋭く王を見据えている。
帯剣していることもあり自然と俺も柄に手を伸ばすが隣のエルヴィンは反応していない。
開口一番に女性ははっきりとした口調で王に詰め寄っていた。
「我が王よ、戦場を飛び回る我ら一族に事前の話もなくいきなり承服できかねることを王命として出された理由をぜひ伺いたいのだが?」
(おいおい。いくらなんでも国王に対しての言動がすげぇな)
常々口が悪いと言われる俺でも国王にあんな物言いは無理だ。
「リーベン女辺境伯、変わらず健勝でなりよりだ。しかし挨拶くらいはほしいものだな」
「一刻でも早く領地へ戻らねばならないのです。おわかりでしょう」
不敬罪で処罰もんじゃねぇか?
俺の考えよりもリーベン女辺境伯と国王の話は進んでいくがそこに貴族らしい回りくどいやたら丁重で裏のある言葉は皆無だ。
「しかし、そなたらの末の妹君は領地から出たことないと聞き及んでおる」
「それがなんだと言うのです?本当の理由は加護目当てでしょう」
ははは。と王は陽気に笑っているが漂う剣呑な空気にこっちは戦々恐々だ。
「その通り。彼女が王都にいれば加護を更に受けられるやもしれぬ。
それに魔術についてもそこら辺のものとは能力が違うと聞いておる。
しかし事前に話し合ったとしてもそなたらが断るのは火を見るより明らか。ならばこうするしかなかろう?」
「王命であれば断れぬと?謀反を起こす事を予想はしていなかったですか?」
その場が凍りつく。一線を超えた言葉に俺は剣をいつでも抜けるようにしていた。
「それはないな。お主ら一族が王国を裏切ることはないからな」
「試してみますか?」
俺は一歩足を踏み出す。
「先祖代々の忠誠、先代は特に忠誠心を重んじ、またそなたらも同じ。その一族の長が謀反とは面白いことを言うようになったな」
睨むより殺気に近い視線を向けられているが国王は余裕の笑みさえ浮かべている。
張り詰めた空気を壊したのは好々爺のふりをしている王都騎士団長のドット・ピクシスだ。
「そう毛を逆立てるな。お主らは拒否したい、だが王命に逆らうのもお主らの性分では無理じゃろうて」
苦々しげなリーベン女辺境が力を抜いた。
※※※
ハッと体を動かすと図書室でどうやら寝落ちしていたらしい。ハンジあたりがかけてくれたのかブランケットがずり落ちる。
目は覚めてきたが夢のはずなのにそこにいたかのような緊張感と始めてぼやけた断片的なものでない夢のあとに引きずられ、やけに喉が乾いた。
とりあえず水分をとるために室外にでて冷えた水を飲むと気分もだいぶ落ち着く。
(さっきのはなんだ?確かに文書でリーベン家へ出仕の王命が下された。とあったが……まるでその場にいたような)
文書のさらりとした内容に反して見た夢は臨場感があり戸惑う。
俺は何度も降りた地下へ行くと変わらず目を閉じ女はそこにいる。
ソッと触れるが石のひんやりとした冷たさしかない。
(……彼女はずっとここにいる)
不意に妙な安堵と浮かんだ思いに混乱した。
俺はどうしてそんなことを?
何度も見る訳のわからない夢と睡眠不足にくわえて急に湧き上がった感情。
そして何度も特に理由もなく来てしまう自分。
(ちくしょう、頭が回らねぇ)
しばらくしてから図書室に戻るとハンジは戻っていたらしく、俺の書いたものをPCに打ち込んでいる。
「リヴァイ。戻ってきたんだね」
当然のことを言うハンジに視線をやるとハンジも真剣な面持ちで俺に切り出してきた。
「あなた、私達に言ってないことがあるよね。それも重大なさ。私も同じっちゃ同じだけど」
「なんのことだ」
「ん〜。あなたが寝ていた時に気になる寝言ボソボソ言っててさ」
いくら眠りが浅くともそんなもん知らない。
どんな寝言を言ったのか俺の方が聞きたい。
「(辺境伯とは言え国王への不敬罪で処罰もんだろ)」
こういう時のハンジに下手な言い逃れはできないのは経験上知っている。躊躇したがここ最近のことを話すとハンジはどこか納得したような態度で茶々を入れることなく聴いている。
全部、話し終えるとハンジなりに気になる点を尋ねてくる。
わかる限りは話し終えると考え込んだ。
「その夢をさ、貴方はどう思ってる?ただ不思議なことに影響されてるだけだと思う?影響されてるのは確かだろうけど……実は私も妙な夢をちょっと見てるって言ったらどう感じる?」
にわかには受け入れがたいことだった。逆に俺が訊くとハンジの夢は頻度が少ないがかわいい妹のような存在がいるが顔も名前すらわからず数少ない内容と自分たちは頭から足首まで覆う暑苦しいローブを着ており、俺やエルヴィンも出てきた。楽しく感じるときもあれば、ひどく憤りを感じて目が覚める時もあるとのことだった。
共通点は浅い眠りの時によく見ること、顔もおぼろげで何度も出てくるのに名前すら思い出せない。俺とエルヴィンが騎士みたいで笑いそうだ。と無駄な感想もあったが重なる部分が多いのも事実だ。
俺とハンジが見ている、そして両方にエルヴィンがいるならエルヴィンも似たような夢を見ている可能性も高い。
今日は接待でエルヴィンはこっちに来れないので訊くことはできない。
だが確かめる価値はある。
※※※
それからエルヴィンにも確かめたが騎士をしているらしい。というとこしかわからないようだった。三人のうち情報量が多いのは俺で今すぐ眠ってくれない?とハンジに即効性の睡眠薬を飲まされそうになるがなんとか回避した。
解読を進めているうちに条件付きで出仕を了承したこと、魔術に精通した女が来た事で王都や周辺も魔物?の被害が少なくなり、またしても王命で条件が増えリーベン辺境伯らは不満を王へ直訴した。
だが、出仕している辺境伯の妹はその条件すら受け入れたが王宮での立場は悪かったらしくある日、事故により故郷へ戻った。
ずっと意識がない状態でリーベン辺境伯らは精霊の協力のもと精霊の愛し子の妹を死なせない為に禁術を行い、以後は子孫代々であらゆることから護るようになった。
精霊らは愛し子におこった出来事を哀しみ、人と人の世界への干渉は最低限になり加護の薄れた世界は次第に荒れていった。
リーベン辺境伯一族は王国に尽くしながら荒れた時代であっても愛し子を守ることと血を絶やすことはなかった。
ここまでが一冊にざっくりと記されていた。その最後の最後まで禁術で眠りについた愛し子の名は記されず、時と人が揃ったら目を覚ます。とこれまた不可解な言葉で締められていた。
その間も俺達は夢を見続けており解読前のはずなのに一致する内容の夢を見た。
「時と人が彼女を目覚めさせる、か。この一族はその時まで護るため血を絶やさない役目を背負ったという解釈でいいのかな」
「その可能性もあるが。しかし……最後まで名は伏せられているのは態となんだろう。そして我々は知らぬうちにそれを負わされたかも知れない」
「何故、俺達なんだ。俺達が見た夢でも名前も顔さえよくわからないだろ?」
「それよりもさ、血を絶やさないで護る、ならキリアンさんからの申し出で自体がおかしい。だって分家はあるんだ。血は薄いかもしれないけど」
「私達である必要……」
結局、地下の女の事情は記されてたことでだいぶわかったような気もするが不明点も多く残った。
王命で無理矢理に出仕させたにも関わらず立場が悪いのは?事故とはなんだ?
ある程度は補足しているような夢をみてはいたが鮮やかな部分もあればぼんやりとした部分の落差が激しい。
二冊目からはその後の王国を取り巻く情勢やリーベン辺境伯についての記述になっていて肝心な女の名はわからずじまい。
「あのさ、気を悪くしないでほしいんだけど、二人も夢みてるよね?最近の夢の影響なのか私すっごいリヴァイに腹立ててるんだ。今も。それが何故守れなかった、あれほど言った!って」
「私は、特に怒りとかはないが避けられなかったか?と考え込む自分がいる」
「リヴァイ、貴方は?」
「……」
「貴方が一番情報が多いんだ、何か思うことなかった??」
「滅茶苦茶な感じだ。その中でもこんなはずじゃなかった、とか守れなかったとかだ」
「よし!今までみたものをつなぎ合わせてみよう。彼女についてはそっちが鍵になりそうだ!」
ずっと連動するような夢をみているがそれぞれの視点でみているのは間違いない気がした。
「ハンジ、研究からはずれてる気もするんだが。あくまでも旧時代の魔術やちからについてが研究のはずだ」
「エルヴィン、地下にいるのは禁術をかけるほど重要人物で生きているかもしれないじゃないか!それにヒントみたいにみてる夢は意味がきっとあるはすだ!キリアンさんが亡くなった時、かけられたのは立派に役目を果たしました。だ、それにこの不思議な図書室は?私達しか立ち入れない地下は?彼女は?無関係だと言わせない」
結局ハンジの熱量に納得する俺はハンジと同じだ。と言うとエルヴィンも渋々同意した。
それから思い出せる限りお互いが見た夢をまとめることになった。
人手は殆どいらなくなったのでこっちにいた部下はほとんど戻していたし、エルヴィンはともかく俺とハンジは余程の事がなければ、この屋敷に留まる事になった。
監視か、守りなのか、どちらもなのか。
ハンジを中心に白昼夢のようなお互いの見た夢を繋ぐとパズルのようにピースがうまっていく。その度に俺の気分は落ち着かずにいた。