時の狭間
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この屋敷でハンジとエルヴィンが籠もるとこなんて知ってる。
そこまで全力で走り、扉を勢いよく開くと勢いが良すぎたのか静かな空間を壊すように響いた。だがかまってる場合じゃねぇ。
「誰!?なにがあったの?!」
飛び込んできたのは俺しかありえないのに驚きのあまり誰何するハンジと目を丸くしているエルヴィンの二人は俺の姿を確認し俺の勢いに気圧されている。
「え?どうしたの。リヴァイ?そんな慌てちゃって」
「いいから、とにかく二人とも着いてこい」
「はっ?」
疑問でいっぱいのハンジはともかくエルヴィンは落ち着いて着いて来る。
「何か、見つけたのか」
「ああ」
ハンジが何、何なの?とさっきから
すっかり把握した屋敷内のさっきの壁の前に立つ。
「ん?ただの壁じゃん。一体、何なのさ」
じっと壁を見ているエルヴィンは壁に仕掛けがあるのかどうかを目を凝らしているのだろう。
「その壁だが奥に隠し部屋、いや隠してある空間というか、まあとにかくその壁に手を入れてみろ」
その言葉に意味がわからないと顔に書いてあるハンジは俺をみているがエルヴィンは壁に手をつけた。
「もう少し押してみろ。手も体も壁の向こう側へ入ることができる。危険はない」
エルヴィンが黙ってそうすると俺の時と同じように手が、腕が壁をすり抜けていく。
ハンジは信じられないものを見ていると驚いているが気持ちを持ち直したのか、好奇心が湧いてきたらしくやたらとおぉ!やら擬音を発している。
ゆっくりエルヴィンの体は向こう側へ行ったが声は聞こえない。
次は俺がと壁の前に立つがハンジに押しのけられ思い切りよくハンジも壁の向こうに消えた。最後に俺がさっきと同じように入るとすでにエルヴィンはあの女のそばにいてハンジは走っている。
一度みたからでもないが俺は普段と同じように降りていくとエルヴィンは顔を寄せながら観察しハンジは周囲を回りながら椅子に座る女を研究馬鹿のギラついた目で見ている。
「リヴァイ、どうやって見つけた?」
「別に何かあったわけじゃねぇ。ただ妙に気になって壁に手を当てたらこうなった」
「彼女、生きてる?なわけないか。てか、なんでこんな水晶みたいなもので固定されてるの。この場所自体もそうだし、壁にセンサーがついてるみたいに明かりが照らしてくれるし、もしかしなくてもここがそうなのかな?」
「恐らくは。ただ、どういう理由なのかはさっぱりだな。とりあえず他の部下もたどり着けるかを試して見る価値はあるな」
※※※
地下から引き上げると丁度いいタイミングで廊下の曲がり角からやってきた部下に同じことをさせてみたが結果は図書室と同じ結果でどうやら "ここも" 俺たち三人しか受け付けないようだ。
「詳しく調査したいけどキリアンさんの一族が守るのがあの彼女で不思議な空間についてすべて口伝じゃないといいんだけど……」
一旦解読班以外は戻らせ、聞かれたくはない話題を図書室でそれぞれ考えていると歩き回っていたハンジが急に大声を出した。
こいつは興奮すると独り言なんだろうが大声でそのまま思いつくことを無意識なんだろうが口にだす癖がある。扉が分厚くて良かった。
「新しい年代から解読しても精霊がいる、もしくはいた、としか記載がなかった。この世界に関わっていたかまではわからない。つまり……」
こうなったハンジを止めるのは無駄だと経験で知っている俺はうるさいと思うが考えをまとめるにはいい方法かと聞いていたがわからない。
エルヴィンは静かにしているがエルヴィンのなかでもいろんな可能性や調べる為にどうするかに頭をまわしているんだろう。
「キリアンさんの手紙……話せないこと。でも私達なら?」
うんうん唸っているハンジは手紙を中心に考察している。
「ねぇ、あそこも私達しか入れない。ただ見せてどうするの?それにしては含みをもたせた文だ、まだ何かがあるはず」
髪をかきむしりながら奇声をあげるハンジにエルヴィンはまだ黙ったままだ。
また謎が増えただけでどうするのか手掛かりがわからない。
ぐるりと気まぐれにぎっしりとつめられた記録を眺める。
口伝か?あり得るが代を重ねると主観や環境、情勢に左右され正確に伝わるかが疑わしい。
キリアンとの出会いの始めを思い出してみる。
確か、育ちはいいのはずなのに俺たちを一人ずつ不躾なほど見て確認し何かを見極めていた目を態度だった。
手紙には先祖代々、迂闊に話すことすら防ぐようにしていたように制約をかけられていたとも。
最後の当主で活かすこともどうすることもできないなら破棄するとまで決意していた。
今現在解読している分の古文書では護る対象があること。そこには今では御伽話と思われている精霊の存在を前提にしている。
「わからねぇことばかりだがキリアンの言動を振り返ってみたんだがそもそも話せないよう制約があり、ここと同じように限られた者以外には見つけることもたどり着くこともないほどにしている。それなのに俺たちが話しに乗らなきゃすべてを捨て去る言い切った。何故だ」
「ハンジ、お前が葬儀の時家令が言ったのはどういうことを言ってたか覚えているか」
「もちろん。すごく印象に残っているから。確か、役目を果たした。と労っているような感じだった」
死者に別れを告げるには含みがある言い方だ。役目とは何だ?
今まで頑なに外部に晒すことをよしとしなかったはずなのに突然譲るといいだす。
「彼の目的はなんだった?我々にこの屋敷すべてを、ということは地下についてもだ。そして我々は数少ないちからを持っている、そしてそのことを研究という形で追い求めている。彼にとって我々でなくてはならない理由。そして絶対に我々が拒否しないと踏んでいたようにもとれる」
「実際、私たちは大喜びでキリアンさんの申し出を受けた。そこまで計算して持ちかけたってこと?」
「そこはわからない。計画しても万が一断られたら?ある程度の資金まで用意している。その上ですべてを破棄するとまで言い切る。血で繋がっている分家もあるんだ。自分の血を残せば万事解決でもある。至れりつくせりで我々の前には人参がぶら下がっていてまるで手のひらで転がされていたとしたら私たちはうまくのせられた。そうだとしたら大した策士だな」
色々とわからない点は付きないが重要点としてキリアンがそこまで策を練ってして俺たちに託そうとしたのは間違いない。
「キリアンさんの思惑は想像の域をでないけどさ」
「手紙にゃ図書室の中身より大事なもん、とあった。それがあの地下の女なら?孤独ってのはあんなとこにオブジェ見てぇに置かれてることか?」
「……もし手掛かりがあるとしたなら口伝ではないだろう。どこで伝言ゲームのようになってしまうかわからない。それは護るという意味と理由を失くす」
図らずもエルヴィンも俺と似たことを考えていた。
「なら、謎の図書室のここにある可能性も高いってことになるけど。どっから手をつけりゃいいのさ」
お手上げのポーズをとるハンジにエルヴィンも肩を竦める。
「おい。取っ付きやすいとこから始めてもそもそも書けないなら解読しても意味がねぇ。むしろ逆にあの女の生きてた年代を大まかにでもあてりゃ何か出てくるかも知れねぇ。制約がいつ始まったかは知らんが比較的新しい年代にゃ制約で書けねぇ状態だろ」
「そっか!制約がかけられてないかもしれないのと彼女の生きてた時か。服装、装飾を直に調べれば簡単だ!」
「リヴァイ、この件に関してやたらと冴えてるな」
「うるせぇよ。普段使わん頭使ってんだ」
フッと笑っているエルヴィンを睨むが気にもしていない。
とにかく解読に関しては古い記録からあたり、地下の女を包んでいるあの水晶みたいなものを何とかしねぇといかんが、慎重にしなければ中身ごとさよならになる。
役割分担を決めたがハンジはどうしてもあの水晶のようなもの、あの女のことを調べたいらしい。
解読をメインに空いた時間に少しづつ地下については調べることでエルヴィンが何とか納得させた。
※※※
方向転換したことで一旦俺と写本、ハンジはきちんと年代別に整理された古文書をまた解読することになった。エルヴィンも本業はほとんど直属の部下に任せ、どうしても放せないことだけ渋々戻るという熱のいれようだ。
そしてハンジは空いた時間を無理やり作り禄に寝食せず地下へ潜りあの女について何とかしようとやっきになるがわかったのは包んでいるのは水晶ではないとある程度わかってきた。硬度が違うのだ。
焦りと、栄養、睡眠が足りないハンジは正常な思考が乱れ、チェンソーやハンマーで叩き割ろうとした時はさすがに全力で止めた。
騙しうちだが飲み物に速攻性のある睡眠剤を飲ませ点滴で栄養を補給した。
仕方ないが包む鉱物越しにはっきりしないが服装、装飾品をあらゆる角度から推察し、その年代と近い古文書を当たるしかなかった。
空振りになることも多かったが時間を費やしただけはあって、今から870年代から1500年程ではないか?大雑把で広い年代だが、この時代に関しては資料が異様に少ない。ロストエイジと呼ばれるくらいだ。
ともかくその時代に焦点をあてて解読する。また空振りになる可能性もあったしそれ以前の古文書は更に解読が難読だろうとエルヴィンは踏んでいた。
通常の古代語とはまた違う部分が多いらしい。
睡眠と栄養を取ったことでハンジもマシな状態になって想像力も駆使していた。
エルヴィンはまずここで一番古いだろう古文書に目をつけ慎重に解読に時間をかけるはずだった。
しかし俺はそんな知識は門外漢なのにその難解だという古文書を大まかだが理解できた。
それは三人全員にとってあり得ない出来事ですぐにハンジに急かされた。
その新書にも近いコンディションの古文書自体がおかしいが重要なのは中身でコンディションについては誰も触れなかった。
その古文書は上等な紙で綴られている。
表紙からもう一度開く。
『これを開いた人へ
どうかあの子を護り、手を差し伸べてください。私たちの世代で目を覚ますことはないと確信していますがいつ目覚めるのかは誰にもわからないのです。そうしたのは私達でこの手段以外にあの子が生き延びることはなく、私たちにとってあの子を失うことは親族としてもこの世界にとっても痛手で身勝手に眠りにつかせました。どうか、あの子が今度こそ自由でいられるように。この本を見つけ、私達の言葉を理解できる貴方、いえ貴方達にしかできないことです。今から孫世代より制約をかけることになります』
始めの言葉にしては長くて言ってしまえばあの女を頼む。という内容になるが胸が痛くなる感覚が付き纏う。
「一言で言えば、あの女を頼むというお願いだな。親族をあの状態にする理由には触れてないが、それなりの分厚さからしてこの後に繋がるんじゃねぇか」
「あのさ、その前に自分がどうしてこの古文書というか日記というか……スラスラと読めてることが不思議に思わないの?自慢じゃないけど古代語に関しては私は自信があるんだ。それでも厄介だな。と思うくらいだったんだ。どうエルヴィン、これってなんだろう。最初に地下を、あの女性を見つけたのもリヴァイでまるで始めからそうなるようになっているようで少し怖いな」
「一旦それは置いて続きを知らなければ判断することは出来ない。リヴァイ、今は時間を無駄にするよりもそこにある事を事実か、どうか知ることで見極めることを優先してくれ。私はその時代についてのできる限り調べる。ハンジ、アシストを頼む」
こうして俺達の再度の方向性が決まりつつあった。