毒と毒の競り合い
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「おつ!」
ひと時の落ち着きを見せるバーカウンター。
さっきの無表情な男が、心底面倒くさい。と顔に書いてあるのをバーテンダーが肩を組んで私たちの前に立った。
「こいつさ、俺のダチ。デザインやってて絵とか、めちゃ上手いんだぜ!」
あ。さっきより眉間のシワが寄ってる。
気乗りしないんだろうな……
そんなこと、私の知ったことじゃないけど。
「えー!見せてよー!」
ノリだけで生きてる私たちの甲高い声に益々、不機嫌な顔。
あーあ。人の触られたくないとこ、迂闊に触るやつだった。
みんなが騒ぐの声にどこか冷えた声が浮かぶけど、ここで白けた態度は頂けない。
「…………」
「いいじゃん!見せても減らないでしょ!」
「ほんとに上手いの!?ねぇ、証拠出してよー!!」
男のブルーグレイの瞳がきつく私たちを睨む。
「女の子がここまで言ってるぞ?なあ?リヴァイ、期待にゃ応えなきゃな!」
お調子者の仮面を深く貼り付けて挑発してみる。
だいたいの男は、気まずい顔するか、曖昧な笑顔を浮かべるか、隣の男経由で断る。
「……ああ、見せてやるよ」
持ち上げられて普通ならぎこちなくても笑顔を見せる場面なのに──空気が読めてない。そのスカした顔が気に入らない。
「マジ、期待してるからー!約束ね!!」
白けきる前に、さっきより大きな声で勝手な約束を取り付ける。
……どうせ、見せるつもりなんてない。
みんなだって、そう思ってる。
会話と会話の間に挿まれた、ただの社交辞令。
「なぁ、聞いてるか?はは。お前、ガチで酔い始めか!?リヴァイ。こいつのこの顔、描いてやれよ!」
はぁ?そんなわけないでしょ。
ここで酒に呑まれたら、碌なことにならない。
絡まれるだけなら、まだしも美味しく頂かれるだけ。
そんな隙を見せたら、暗がりに連れ込まれるのは少し考えれば分かること。
──それに泥酔した姿なんて、幼い頃から見飽きてる。
理性を失った人のカタチの何か。
あんなみっともなくて、弱いものにあたるしかない姿なんて──
「ウケる。そんなわけないじゃん。
ラムコーク。チェリーは二つ、これからエンジン掛けてくからさ、ラムは少なめにしてよ。途中で潰れたら、あんたの責任ね」
ほらよ。カウンターからショートグラスが私の手前ギリギリで止まった。
「ありがと、」
跳ねる音と重なるコーラス。
「ちょっと行ってくる!!」
最近、お気に入りの曲が流れた。
ここでのスカスカな会話も、頭を過ぎったものもダンスフロアへ投げ捨てなきゃ、やってらんない。
「私らも、行こう!!」
後ろから友達の声が弾ける
──だから、あの男がどんな目で私たちの背中を見送ってたのか、なんて私たちが知る由もなかった。