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現地に着けば、相変わらずの重低音と、身体の奥まで直接揺さぶってくる爆音。
派手に着飾った女性たちの群れと、IDチェックをじっと待つ軍人たちの背中。
何も変わっていない。そうだよね。私が来なくなろうが、世界が変わるはずなんてないんだから。
「はぁ~い!」
友人が先頭を切って、フロントを軽快に突っ切っていく。
……ん? セキュリティもフロントのスタッフも、私たちの顔を見ても何も言わずにそのまま通してくれた。あんな大騒ぎを起こしたというのに?
……そうか。あの程度の修羅場なんて、この店にとっては大したことじゃなかったんだ。
うん、それでいい。それが一番いいんだ。
フロアに近づくにつれ、お互いの話し声すら掻き消されるほどの爆音が鼓膜を打つ。久しぶりの感覚に、少し耳が痛む。
「よぉ……は!?」
軽いノリで友人に挨拶しようとしたバーテンダーの顔が、一瞬で引きつるように歪んだ。
その顔にはあからさまに『マジかよ! 冗談だろ……』と書かれている。
そう、それだよ。それが普通の反応だよね……と、自分に言い聞かせかけたその瞬間。
ドクンッ、と胸の中で心臓が激しく跳ね跳びた。
……なんで。なんでこんな時に、あなたが一階にいるのよ!
心の準備も何もない。視線の先で、リヴァイのブルーグレイの瞳が大きく見開かれていた。
何かを言いかけたらしく、彼の薄い唇がわずかに開く。
……見てない。私はリヴァイなんて見てない。会ってなんか、いない。
「ごめ〜ん、席取っておくからさ、飲み物頼んできてもらってもいい?」
「わかった〜。カズサはロングアイランド・アイスティーでいいよね?」
「あ、それ飽きちゃった。適当にお願いしてもいい?」
「OK〜」と手でサインを作り、友人がバーカウンターへと向かっていく。
さて、どこか席を……と周囲を見渡した瞬間、スッとあからさまに逸らされるスタッフたちの視線。
そう、だよね。
これが普通。私みたいな厄介者に対する、正しい対応だ。
━━━━━━
「お待たせ〜! 私はこれで、カズサのは……」
「え、ちょっと……それ違うって」
「知らないよ? 私がカウンター行った時には、もう私らの飲み物用意されてたんだから」
トンッ、とテーブルに置かれたのは、見慣れた琥珀色のグラス。
ロングアイランド・アイスティー。
……リヴァイの影が、どこまでも私を追いかけてくる。
それを振り払うように、私は隣の友人のグラスを強引に奪い取った。
「はぁ!? カズサ、ちょっと!」
「ごめん、そっちの方がおいしそうだったから」
プンプンと怒る友人は、通りかかったボーイを呼び止めて笑いながら追加のオーダーをしている。
……私を一瞥し、すぐに視線を逸らされるのは、これで何度目だろう。
「うわっ! 久々じゃん!」
フロアの向こうから、別の友人がテンション高くハイタッチをしてくる。
「仕事が夜だからさ、なかなか来られなくてね〜」
笑いながら答えるけれど、胸の奥は冷え切っていた。
前は、こんなんじゃなかった。
もっとみんなと笑って、踊って、お酒を飲んで、スタッフたちとも気さくに冗談を言い合っていたはずなのに……。
この場所での"私"は、綺麗に消し去られていた