それでも愛してる
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
休暇の日。
兵団入口の門前で時間より五分前に着くとすでにネイトが茶色のシャツに黒のパンツのラフな格好でゲートにいる団員と笑いながら話している。
こちらに気づくと手振り向いて軽く手を上げる。
「カズサ!」
返事の代わりに手を振り返し近くへ寄ると話していた相手に一言なにかを言ってから私と合流する。
「あれ、イリアはまだなの?」
「もうちょいしたら、ごめーんって言いながらくるだろ。いつものこった」
肩をすくめながら皮肉るネイトと同じように肩をすくめ顔を合わせるとックスクスとどちらかとなく笑う。他愛ない会話をしながら待っていると十五分後たってイリアが両手を合わせばがら走ってきた。
「ごっめん、髪、っが、」息をあげ、途切れ途切れに理由を言い切る前に「あーあ。訓練だったら反省でグラウンド三周は確実だよなぁ」意地悪な声でネイトがいえば、呼吸が整ったイリアも反撃する。
このままだと、出発の時間が遅れる、と早く行こうと声がけすると、さっきまでの言い合いはどこにいったのか、足取り軽く町への道をイリアは私の腕を取ってスキップしながら歩く。その後ろをネイトがブツクサ言いながら着いてくると案外、早く町に入った。
小さな町だけど、兵団から近いので休みの団員がよく遊びにくることもあってお店も多様だし、扱う品も充実している。
お店の呼び込みや行き交う人の多さもあって、いつ来ても賑やかな町だ。
「あ、新しいお店がある!行ってみようよ!!」
久しぶりに来たイリアは、はしゃいで一番に駆け込む。
追いかけようと早足になる私の後ろから「あいつ、マジか」と呟いている。
構わず店先で待っているイリアの前にはファンシーな小物屋さん。
さっきネイトが呟いていた理由はこれか、と心の中で苦笑いした。
お店に入ってから仏頂顔のネイトも店内を見合わせ、珍しいのか手に取って確認したりいている。
「これ、一体なんだ?何に使うんだ?」
その度にイリアは説明していたが面倒になったのか、ネイトは放置して女二人でリボンや香りつきの石鹸、猫の尻尾部分が取っ手のマグを手に取り、どれを買おうと迷っていると、一番迷っていた色違いのリボンをヒョイっとネイトが取ってそのまま会計を済ます。
「ほら」
私とイリアにぶっきらぼうに渡し、モゴモゴと口ごもりながら「お揃いで使えるだろ」と俯いている。
「ありがとう!似合ってるかな?」「センスいい!ありがとね」
早速、髪に当てて見ると「おお」とどっちなのかよく分からない返事が返ってきた。
あ、照れてる。ネイトの耳がほんのり赤くなっているのが男の人には失礼かもしれないが、驚くとかより可愛い。と思ってしまった。
「フフン、わたしもカズサも元が良いから何でも似合ちゃうのよねー」
コテンっと、首をかしげて同意を求めるイリアと同じようにコテンをすると、その間に回復したらしいネイトが「あー、そうかそうか」と気のない返事をよこす。
そこからイリアとネイトの掛け合いに笑ったり、答えたり、久しぶりの
外歩きはここ最近で一番の楽しい時間だった。
「ほんと、楽しい時間って楽しいほど過ぎるの早いよね─」
「時間が飛ぶってこういうことだよね」
「あー帰りたくねー」
買い物袋を手に兵団へ帰る道筋をブツクサ言いながら気持ちゆっくりな足取りで歩くが、兵団の門が見えてきた。
「今度の休み、いつだっったかなぁ」
「あー、俺そうだった」
ネイトが気の抜けた声で一人で言って一人で完結している。
「うわ、暗っ!わたしの手作りお菓子差し入れるからさぁ」
「お前じゃなくてカズサのがいい」
「はぁ?」
「砂糖と塩の量が間違った菓子なんて拷問だろ」
「喧嘩売ってんなら買うよ。言い値で」
「ネイト、イリアのお菓子食べたことないでしょ。すっごく美味しいんから」
本当のことを言ってもネイトはネイトで本気で疑っているらしく、「頼むから作るときはカズサも一緒に作ってくれ、な?」と念押しされる始末。
それにイリアが噛みついて、のいつも通りの会話はゲート前で途切れる。
門番の詰め所にある外出記録に所属、名前、帰還時刻を記入し、確認が取れた順に兵団敷地へ帰る。
「夕飯、食べときゃよかった」
「つまみは買ったでしょ、ついでにお酒も」
「そうだ、ネイト。今日のお礼にイリアと二人でチーズ買ったから食べて」
買いもの袋の一つを胸の高さまで上げて見せるとネイトの顔がほころぶ。
「あんがとな」
「ちょっとー。わたしも選んだんだけど?味見したいんだけど??」
「そういうと思って多めに買っておいた」
「「さすが!」」
兵舎内で、どこで飲もうかとイリアとネイトが盛り上がっていると廊下の反対側からリヴァイ兵長の姿が見えてきた。
三人ともに端によって敬礼をするとチラリと兵長の視線がむいたが、別段なにもなく、そのまま通り過ぎていった。
「怖っ。睨まれた?」
「知らね」
興ざめしたとばかりに二人の勢いはなくなり、ネイトにチーズを渡すと男子寮と女子寮へ分かれる突き当りの廊下で、また食堂でね。と声を掛け合うとイリアが心配そうに耳元で大丈夫?と尋ねてきた。それにおどけた声で問題なし。と返事をするとイリアは今日一番の笑顔でそうでなきゃ!と背中をパシッと叩いた。
────
その頃、ネイトは。
(ただでさえ顔怖ぇのに睨むんじゃねーよ。自業自得だろうが。ふざけんな)
カズサのそばにいると飛ばされるリヴァイの鋭い視線に悪態を吐いた
────
休暇の翌日から訓練やレポートに追われ、なかなか三人揃うタイミングがなく食堂にいるときに手で合図するくらいだった。
特にカズサは事務仕事の量が多く、必要な資料を図書室で探したり、そこで書類を纏めたりすることが増えた。
「んー、この年度の備品補充数の様子でいけば今年の分は──」
「やっほっ!」
突然、ニョキッと横から陽気な声と顔が覗きこみ反射的に体をそらすと、兵団一の変わりもの、ハンジがカズサ腹を抱えて笑っている。
「はぁー、心臓が飛び出るかと─」
「えっ、心臓飛び出た死ぬって」
ひとしきり笑うとハンジはカズサの腕を引き、ズルズルと抵抗するカズサを自分の執務室へ連れ込む。
「ちょっと、ハンジさん。私これから──」
「大丈夫!それはニファにまかせたからさ、カズサには特別な任務を伝えに来てもらったんだ」
メガネの奥の目がきらりと光っている。
まずい。この目のハンジさんは無茶振りするときのハンジさんだ。
助けを求めて部屋の中を見渡すと、いつにも増してゲッソリとしているモブリットとケインが異臭のする器具や書類らしき束を持って執務室から続く部屋へ移動している。うんざりとした表情で少しでも執務室のスペースが空くように片付けている。ように見える。
そんな中でのカズサの救助の視線は気まずそうにスイっと逸らされた。
「さあさあ、立ってないで座って座って」
おそらくテーブルと椅子があるのだろうが、崩れかけの紙の山と緑色の食べ物だったかもしれない物体、茶色のシミなどが広がっており、気合をいれても座る気になれない。
「いえ、このままで大丈夫ですので」
今このときだけの危険を避けようと苦笑いしていると「そお?」 と気にした様子もなくカズサの真向かいに座る。
「実はさ、今週末なんだけど、めんどくさい夜会に誘われてるんだけど実験の佳境なんだ。夜会と実験、どっちが大切か?なんてすぐにわかるのにねぇ」
嫌な予感がする。回れ右で逃げよう。
カズサがチラっとドアまでの距離を測っていると見透かしたのか「だーめだよー」とのんびりした口調でカズサを止める。
聞くだけ、きっと愚痴のはず。聞くだけ聞いて逃げよう。そう判断したカズサに無邪気そのものの表情で告げた’’任務’’は無茶振り以外のなにものでもなかった……
「今回だけ!今回だけ頼むよ〜」
「ダメです。嫌です、無理です」
出ていこうとするカズサの袖をグイグイと引張るハンジ。
「お願いだから〜ねえ〜」
「ダメなものはダメです。そもそも荷が重すぎます。他をあたってください。では」
縋るハンジを振り切りドアを半分開き、体を潜り込ませるが固い壁にぶつかった。
「相変わらず騒がしいがどうした?」
頭上から聞こえる落ち着いたバリトンにカズサは安堵した。
(やった。勝った!)
「ちょうどいい!夜会の代理をカズサが受けてくれたんだ!あとは準備だけだ!」
了承していない、むしろ拒否したのに堂々と出鱈目を口にするハンジを睨む。
「嘘はいけないな。ハンジ。カズサ、承諾したのかい?」
答えはわかっているとエルヴィンがハンジに問うと、ハンジはアワアワとしながらドアを全開にして服の袖を掴まれたままのカズサは逃げ出したはずの部屋へまたしても入ることになった。
「ね!行けるよね!カズサ!!」
必死にカズサにしがみつきながら夜会への参加をしたと言い張るハンジとブンブンと顔を横に振るカズサ。
「お前は自分が嫌だという理由でカズサに代わりを頼んだのか。ハンジ、今回の夜会は絶対にお前に出てもらうと私は言ったはずだぞ」
「まってくれ!本っ当に良いとこまで、きてるんだ! 時間を無駄にしたくないんだよ!」
次第に熱をもつハンジと冷静なエルヴィン。
上官同士の会話に割り込むのどうかと思うけどエルヴィン団長がいる今なら逃げられる!カズサは「それでは私はこれで」言葉少なに存在感も消すように静かに出ていく。
ドアの向こうから奇声が聞こえるが、聞かなかったことにして離れるとハンジの奇声も次第に遠くなった。
「我ながら良いアイデアだったのに、エルヴィンのせいで台無しだよ」
ハンジはエルヴィンに不機嫌をあらわにしているが、エルヴィンは涼しげにハンジの恨み言を流す。
「なんだっけ?名前覚えてないけど。あの女性の機嫌とりは終わりだろう?だったら──」
急に寒気を感じ、ハンジがエルヴィンを見るとその後ろにはリヴァイがいた。
「てめえ、なに勝手な真似してやがる」
触れたら切れる。そんな空気を醸しながらハンジを睨んでいる。
睨まれていない、関係ないはずのモブリットたちも息を潜め、片付けようの続き部屋へソロリと後退る。
「ああ?なんだよ。このヘタレ。ちゃんと話してればよかったのに一方的な別れ話なーんてしてさ!そのクセ未練がましくカズサを目で追って、カズサの横にいる人には、すんごい目で見て、一体なんだよ。で?未練タラタラで止せばいいのにカッコつけて堪えてるってか!!うーわっ最っ高に〜ダッサい!!」
一気に捲したてゼエゼエと肩で息をするハンジの胸ぐらをリヴァイが掴み、締めるがハンジも引く気はないのかリヴァイを睨みつける。
バチバチと火花が散っている二人をエルヴィンは引き剥がした。
それでもまだ飛びかかりそうな様子を手で制しながら、異いい加減にしろ。と冷ややかな声を発した。
────
とにかく離れようと走った先は兵舎を出たグラウンド。
体力練成で走り込みをしているなかにネイトを見つけた。
ボウっと見ていると管理をしている訓練教官がカズサの首根っこを掴んでグラウンドへ放り込む。なるほど見てるなら走れ、ってことか。
服についた土を軽くはたいてから、ただただ走った。
「つうか、なんでお前は一緒に走り込みしてんだ?びっくりした」
「ハンジさんから逃げてたから不可抗力?」
なんだ、それ。とネイトが呟きカズサは苦笑いで誤魔化した。
「飛び入り参加したってことは、今日の担当業務はサボったのか?ヤバいだろ、それ」
「多分、大丈夫、だと思う。私を捕まえるためにハンジ班を私の仕事を振ったみたい」
「余計に意味わかんねぇ。そこまでするって大事じゃないか」
ひらひらと手を振りカズサはそうでもなかった。と言えば怪訝な顔をするネイトに、だってハンジさんだよ?と返せば、あーハンジさんかぁ。 と理由は知らないが納得している。
「あんまりひどいようなら、直属の上司に訴えたほうがいいぞ」
割と真剣にカズサにアドバイスをし、訓練後の汗を流すためにシャワールームで別れた。
カズサがハンジに拉致、拘束されていたことに関して上官は大変だったな。と気の毒そうに肩を叩き、お咎めはなかった。
ハンジが言っていたようにカズサの今日の分の仕事はきちんと処理されていたのも理由だと思う。
夕食時、食堂に集まっていると既にハンジの襲来はネイトからイリアに伝わり、災難だったね。と上官と同じ反応でカズサは作り笑いで返した。
「カズサ、なんの用で拉致されたの?」
イリアが尋ねるが、バカ正直に答えるのは抵抗がある。
いや、言っても良いかもしれないが。
少しボヤかしながら、実験のためにハンジの業務の一部を手伝ってほしい。と言われたとパンを小さくちぎりながらスープに浸す。
「逃げて正解なやつだわ、絶対ロクな目にあわない未来じゃん」
「おい、イリア。分隊長にそれはないだろ。誰かに聞かれたどうすんだ」
「大丈夫、大丈夫。ハンジさんだから」
「そうだな、ハンジ分隊長だしな」
止めているはずのネイトも一瞬で手のひらを返す発言に三人は顔を見合わせて笑った。
4/4ページ