それでも愛してる
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きれいな終わりでも、スマートな大人の終わり方でもなかった、でもこれでいい。
あの部屋で待ってる間ずっと、違う。もっと前、別れを突きつけられてから、ぐるぐると回り続けた思い。飽きたならもう一度貴方の好みになるから、あなの
そんな気持ちに飲み込まれて自分でも止められなくて眠れず、食事の味もわからなくなった。兵長とあの
でも、もう、大丈夫。
あの日、兵長に会って話して根拠もなく大丈夫だと根拠もないけど、吹っ切れた。と思えた。
今だって好きなのは変わらない。彼の一番じゃなくても彼がどう思っていても、私が勝手に想うのは私の自由だ。
ストンと楽になった。きっと彼と彼女が一緒にいるのを目にするのは、まだ苦しい。これは仕方ない。
仕方ないなら、そのまま受け入れればいい。
「いつも心配かけてごめんね」
「こんな時はごめんより、ありがとう。がいいぞ」
「そうそう、謝るのはないでしょー」
にこりと柔らかく笑うイリアとネイトにありがとう。と微笑むと二人とも頷くと背中をバンっと叩く。地味に痛い。
「じゃ、今度の休みに人気のカフェ行こうよ!もちろんカズサのおごりでね!」
────
その後、確認してもなかなか三人の休みが重ならずカズサは手帳を睨んでいた。
「この日も、、駄目かぁ」
誰かと休みを交代しても三人揃う日がない。
手帳をポケットに仕舞い、スケジュールを考えながら廊下の曲がり角でドン、とぶつかった。
「わ、」
バランスを崩し倒れそうになったが手を引っ張られ、倒れずにすんだ。
「おっと。大丈夫かい?」
「す、すみません!」
慌てながら早口に言いながら、相手を見るとエルヴィン団長、横にはリヴァイ兵長。
「前も見えねぇのか、てめえは」
「リヴァイ」
突き放すリヴァイ兵長と諌める団長。
気まずいこと、この上ない。
「申し訳ありませんでした!今後は 」
「ああ、気にしないでくれ。私もちゃんと見てなかったからお相子だ」
「 あっ、ありがとうございます。では失礼します!」
ぴしっと姿勢を直し、まだ落ち着かない心臓の音を感じながら持ち場へ早足でその場を立ち去る。
「──睨まないでくれないか」
「気のせいだ」
そんな会話が交わされているなんて思いもせずに。
会議、会合、茶会、夜会。
招待状の一枚をぴらぴらと振って机に放った。
「はっ、どいつもこいつも呑気なもんだ」
「まあ、そういうな。こういった付き合いも我々の仕事の内だ」
悪態をつくリヴァイを相手にせずエルヴィンは招待状の返事をスラスラと認め、静かな執務室に紙とペンの擦れる音だけが残る。
「……これからも続けるのか」
「何をだ」
エルヴィンの問いにしらばっくれるリヴァイに眉を顰める。
「利用できるうちは利用する。あの女だって承知の上だ。小言はたくさんだ」
「彼女のことは……」
「黙れ」
ピシャリと新兵なら震えあがる口調でリヴァイはエルヴィンの話しを遮り、そのまま執務室から出ていった。
「小言も言いたくなるさ」
──
自室のドアを開くと熱気と湿気で厶ッとする空気が体に纏わりつくのが気持ち悪く換気の為に窓を開くと楽しそうな声が聞こえる。
何気なく声のする下を見て、すぐ目を逸らし椅子に凭れる。
すぐに声は遠ざかり、聞こえるのは自分の息遣いだけ。
「戻れる訳、ねえだろ」
思わず零れた悪態は誰にも届かず空間に溶けた。
────
「あのさぁ。俺が休みあわせるのに、どんだけ交渉したと思ってんだ」
「はいはい。ありがと、感謝してる~」
「すっげぇ棒読みなんだけど」
カズサはネイトとイリアの軽口に笑っていると不意に上を見上げる。
開いた窓からフワリとカーテンが揺れている。
(あ、兵長の執務室 )
「──でさ。ってカズサ、聞いてる?」
慌てて相槌を打つ二人は「あ~あ」「聞いてないな」と半ば呆れて肩を突く。
「ネイトが休みもぎ取ってきたから、最近できたカフェに行こうって話して「違うだろ、飯屋だ。」
二人はどこに行くかの激論を交わしていたらしく、カズサにどっちがいいかと迫ってくる。
「どっちも行けば平和的解決じゃないかな」
単純な答えにさすが! オッケー!と喜ぶ二人に苦笑いし兵舎の談話室でスケジュールを再確認しようと誘われ、ソファに座って雑談しているとヒソヒソと何人かが囁きあっている。たぶん噂話の類だろう。
盗み聞きは良くないと離れたソファに横並びに座るも潜めているつもりの声は大きい。
「なあなあ、知ってるか?あの兵士長のさ─ 」
イリアは「うるさいなぁ。邪魔なんだけど。あっち行って喋んなさいよ」
何でもない、気にしていない。そんな態度のカズサをネイトが見ているが、知らんぷりを決め込んだ。
自分が反応すると二人は気を使ってしまう。
チラリとネイトとイリアに視線を向けるとイリアはスッと目を逸らした。
休暇のプランがおおよそ固まると手を振り分かれる。
ネイトは男子寮、カズサとイリアは女子寮へ。
あれこれと話しているうちに部屋の近くまで来るとまた後でね。と手を振った。
パタンと扉を閉め、カズサは使い込まれた机の引き出しを開け、丁寧に畳んだ手紙を読んでから引き出しの奥へ戻した。
────
退屈な夜会の夜。
リヴァイはエルヴィンと参加している。
リヴァイはいつも挨拶周りするエルヴィンの傍に控えるが相手はチラチラとリヴァイに目をやるが、こちらが見ると目を合わせない。
その方が楽で適当に挨拶を返す。
人の集まっているところへ足を向けると、さっきより不躾な視線が集中する。
「いつも思うが、長居したくねえ。とっとと終わらせるぞ」
にこやかな笑みを浮かべるエルヴィンに不機嫌を隠さず伝えれば笑顔のまま、そうだな。と返事が返ってきた。
「あちらに挨拶して退散しよう」
うんざりしながらエルヴィンの後ろをついていくと、今夜は迎えに来なくていい。と以前は構って、かまえとしつこい女が見目の良い男を連れ、まるで女王のように振る舞っている。
リヴァイとエルヴィンに気づくと笑みを深めコツコツと高いヒールの音を響かせ、スラリとした手を差し出す。
エルヴィンは指先に触れない程度に唇を落とすが女の視線はリヴァイに向けられている。
女の挨拶にエルヴィンは定型的な挨拶をしリヴァイは適当に相槌だけ打てば女は、甘くねっとりとした声で誘い言葉をかける。
「少し兵士長をお借りするわね」
了承だけを求め、連れの男に目配せした女はリヴァイの腕に手を置き「暑いわ、外の空気にあたりましょう」
暗に二人になりたいと伝えてきた。
「何か用か?」
いつも通り、用件だけを尋ねるリヴァイにクスクスと笑う女に苛立ちを隠さずにいるとバルコニーの手すりに背を預けた女は「貴方はもういらないわ」楽しそうな顔で告げた。
「そりゃ願ってもない申し出だな」
「あら、いつも通りの反応でつまらないったらないわ。理由くらい聞くのが礼儀でなくて?」
「あいにく俺は礼儀なんぞ知らないからな」
それもそうね、と首をコテンと傾げ、軽く自分の腰に手を置いて怒ったように頬を膨らませる。
「多くの女性は甘党なのを知ってるかしら?」
脈絡のない話に眉を顰めると、からかうように浮き立つような声で話し続ける。
「特別扱いってすごく甘いの。私に向けられる甘い声も顔も態度も大好き。でも、そればっかりだと流石に胸焼けしてくるのよね、たまに塩っけが欲しくなる」
「言葉遊びなら他を当たれ」
「まぁ?分かりやすく話してるのに。ちゃんと聞いて下さいな」
かけひきのような会話に疲れながら口を挟まず、先を話せと促す。
「ちょっと塩を味わって甘いものを口にすると格別な甘さを感じるのよ。もうわかるでしょ。貴方は甘さを引き立てるだけの塩、だけど塩ばかり味わうと死んじゃう。だから貴方はお払い箱よ」
そりゃ良かったな。平坦に答えるとフフっと女も返す。
「これで兵団との契約は打ち切りだけど、エルヴィン団長には私から伝えたらいいかしら?」
「俺から伝える」
「愛想もない、気の利かない男相手じゃ、可愛い彼女が気の毒で仕方ないわね」余計な一言を残してヒラヒラとドレスの袖を振った。
「はっ、今更だろ」
暗く呟いたリヴァイの背に気配を感じて身構えると、脚の長いグラスを両手にしたエルヴィンがいた。
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