それでも愛してる
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「飽きた」
たった一言。
言葉はわかる。
その言葉の意味がわからない。
「聞こえてんだろ?飽きた」
温度のない声。
「お前とは終いだ。何度も言わせるな」
のろのろと脳が意味を理解し始める。
カタカタと震える体を両手で抑える。
どうして?何が悪かったの?
面倒くさそうにため息を漏らすリヴァイはジッと私を見つめている。
「物わかりの悪い女だな。何度、言わせる気だ」
ただ決定事項を告げる淡々とした口調。私の気持ちも意思も、そこには無い。
「いいか。俺は兵士長でお前は兵士だ。それ以上もそれ以下でもない。必要以上に俺に近寄るな。わかったな」
出ていけ。扉を人差し指に向ける。
視界がじわりと歪むのを堪え、ふらつく足で廊下を進む。
月明かりが差し込む自室で力が抜け床に崩れ落ちると誰かの嗚咽が響く。
「うっ、あぁぁ」
何も聞きたくない、何も見たくない。
あの夜から取り繕って過ごす日々に慣れたはずなのに、一人の夜は堪えられず涙があふれる。流した涙のぶんだけ涙腺も枯れてしまえばいいのに。腫れぼったい瞼は熱をもってジンジンとうずく。あれは悪夢で現実じゃない。悪あがきしては現実に引き戻される。
(冷やさないと)
誰にも気づかれないよう濡れたタオルで目を覆うと熱がやわらぎ、瞼を閉じる。そのまま糸が切れて眠りに落ちる瞬間、朝が来なければいい。そう願いながら。
「ちょっと来て」
同期のイリアが引っ張っていくのは人気のない木陰。
イリアの渋い顔に思わず俯いてしまった。
「カズサ、何があっ 」
「もっ、最近、訓練がキツくて。体力づくりの時間増やそうかなぁ」
イリアの声を遮ったが、すぐに失敗した。と心の中で頭を抱えた。
それでもニコニコと笑顔は崩さず訓練の愚痴やら食事について一方的に話しているとイリアからふぅ、と聞こえた。
「わかった、わかった。今は聞かない」
降参と両手を挙げ、はぁ。と息を吐くイリアの様子にホッとしたのも束の間、強い眼差しを向けられている。
「今は、ね」
「おい!始めるぞ!!」
訓練教官が大きな声で呼ぶとイリアは走り、そのあとを追いかけると全員が整列して休めの姿勢で待っている。
そそくさと隊列に並ぶとすぐに訓練は始まった。
「なあ、何とかなんねぇか?」
「何とか出来るなら、何とかしてるってば」
カズサから死角になる隅で同期の男女二人はカズサの姿を見ながら心配を滲ませた声で会話を続ける。
「バレてないと思ってんのか?」
「多分。気づいてるのは私達くらいよ」
「いや、確実にもう一人いる」
「そうでしょうね。あの人が原因なんだから逆に気づいてないなら本物の碌でなしよ」
きつい物言いのイリアにギョっとしてカズサとイリアの同期、ネイトは一歩引く。
非番の日に三人で街に出かけたりする気の置けない間だ。だからこそカズサの様子に気づいた。
「お酒の席に誘っても、出かけようって言っても乗ってくるのは三回に一度くらい。それでも本音は出さないし。追いかけられてるように仕事仕事。そうするしかないみたいにね」
「あいつ、そのうち倒れるぞ」
カズサが振り向くと目が合い、手を挙げカズサの傍に寄る。
「二人とも何処に行ってたの?探したんだから」
ネイトは、嘘つけ。と思いつつ肩を竦めた。
「そろそろ食堂に行かないとお昼食べそこなうわよ!」
イリアがカズサと手を繋いでいるあとに続くネイトはカズサが見ていた場所をさり気なく視線を向けると、リヴァイと着飾った女性がいた。
「何もここで会うことないだろ」
ネイトの独り言は誰にも届かない。
「ネイト、さっさとする!置いてくからね!」
見なくても予想がついてるのか苛ついたイリアの大きめな声にネイトは再度肩を竦めた。
疲れきったら眠りに落ちて楽になるはずなのに、眠りは浅く夢ばかり。いい夢なら良かったのに飛び起きてはダッダッダッと心臓が胸を打ち鳴らしている。ベッドの中で落ち着くのを待ってベッドから降りれば外は薄暗く起きるには早い。
二度寝する気にもなれずコップにいれた水を一気に飲み干す。
人心地ついたら朝の準備をし、早朝の走り込みでもしようか、と考えたが止めた。
彼も一人で自主訓練をしている時刻だ。以前は浮き立っていたが、今の私は平常心でいられない。
仕方なしに図書室から借りた本のページを捲る。食事時間まで暇つぶしに読もう。
「よ、相変わらず早いな」
食堂につくとネイトが爽やかに声をかけてくる。
見渡してもイリアがいない。
「あー。イリアは朝に弱いだろ。まだ寝てるんだろうな」
テーブル席から立ち上がってイリアを起こしてくる。といえばネイトは手を振って、その間食事と席は確保しておく。と気を回してくれる。 それに甘えてイリアの部屋をノックすると中から寝ぼけてるのかあくび混じりの返事とともに扉が開いた。
「ふあぁ、まだ眠いー」
寝ぼけ眼のイリアに朝の準備を手伝うと食堂は混み始めて、ネイトが確保した席から立ち上がって手を振り、こっちだ。と呼びかけられる。
足取りの重いイリアの背を軽く押して席に着けば、ちゃんと三人分のトレーもある。
「ありがとう」とお礼を言うとネイトは照れているのか、カリカリと頭を掻いている。
「ちょっとっ!汚いっ」イリアが抗議しネイトが憎まれ口で返す。何気ない会話に微笑むと、イリアの言葉をスルーしたネイトが、仕切り直して、さあ食べようとパンをちぎる。
私もイリアも笑いながら食べる食事は和やかだったが、早朝訓練あとは疲れすぎて昼食はすすまなかった。
夕食も抑え気味にしていると二人は自分のデザートを差し出してくるがお腹一杯で入らないよ。と言えば、残念そうに引っ込める。
一息ついて走り込みしてくる。と言って席を立つとどことなく渋い表情しているが止めはしない。それに甘えて夕日から夜にさしかかりそうなグラウンドを何周も走る。
気が済んだ頃には夕日は沈み夜が空を支配している。
さすがに疲れてきたのでパッパと埃を落として兵舎に戻ってひんやりしたシャワーで汗を流し、すれ違う人々に挨拶をして、イリアたちにもお休みと言えば、ネイトが腕を掴む。
「あのさ、次の休みだけど俺もイリアも非番なんだ。カズサも来いよ。買い物もあるだろ?」
少し考えると確かに日用品が足りなくなっている。二つ返事をするとネイトはどこかホッとしたように、じゃ、楽しみにしてるとニカっと笑って反対方向に行ってしまう。
(申し訳ないな)
きっと二人は気を利かせて誘ってくれたんだ。ありがとう。心の中で呟くと明日会ったらちゃんとお礼を言わなきゃ、と思いながら部屋に戻ると自然と大きな溜息が出てくる。
(今日は大丈夫だった)
久々のお出かけは乗り気じゃなかったけど楽しくて過ごせて余計に夜は憂鬱さが増した。
別れを告げられた日から兵長にばったりと会わないに気をつけていても、同じ兵舎にいるし訓練をつけてくれるから顔を会わせる機会はある。
適切な距離を取っているが、仕事上避けられない時もある。
目の前の兵長に視線を合せても兵長より遠くへ意識を持っていくことも得意になってきた。
もうちょっと、もう少しだけ時間が経てば私に戻れるはず。よく言うじゃない。
日にち薬って。どんな事もいつかは。もしも、日にち薬でも、駄目だったとしても。誰か新しい出会いがあればきっと笑って過去になる。
眠れない。食事の味がしない。
日に日に濃くなる隈と食の細さを指摘されて、自分でもまずいな。と感じて改善しようとしても上手くいかない。
「お願いだから、これ!飲んで少しでも寝て!」
「ハンジさんの栄養剤も飲んどけ」
心配かけてごめんなさい。謝まるなら寝てよ!栄養つけろよ!
二人のほうが泣きそうな顔をして瓶を開け、飲むのを見守る。
青い錠剤と白い錠剤。コクリと飲むと安心したのかイリアは私の部屋に寝るまでいるようになった。
おかげで睡眠も体の怠さもだいぶ良くなってきた。
一時しのぎだから医者に診てもらうのがいい。と勧められても記録に残るのが嫌で頑なに断っている。
兵士の症状は記録に載り、上官に伝えられる。
つまらない意地を捨てられない。
大丈夫、大丈夫。
ざわざわとする空気に、ああ。くるりとまわり、もと来た廊下を歩くが遅かった。
フワッと花の香りが近づいている。
無視するわけにもいかず、端によって敬礼をすべきだが、あいにく両手は各分隊へ届ける紐綴りの書類で塞がっている。
仕方なしに軽く頭を下げるとコツンコツンと二人分の靴音が次第に遠ざかっていく。
詰めていた息を吐き出し、足早にその場から離れても柔らかな残り香は感じられた。
「おい!」
「俺が連れてくっ!」
ふわり、体の重さが消え、首と膝に差し込まれた誰かの体温が心地いい。
「だから無理する───」
そこでプツリと意識が黒く途切れた。
「睡眠が浅く食が細いか。まあ、体を壊すのは当たり前だ。念の為今晩はここで様子をみよう」
呑気な医者の言葉に「今すぐなんとかしてくれ!」と大きな声を出すと医者は顔を顰め、「静かにしろ」と口に人差し指をたて窘められた。
「とりあえずお前さんは訓練に戻れ、あと楽な服を女性に持ってくるよう伝えておいてくれ」
「カズサはっ!」
「医務室で見てもらってる。カズサの服、持って来いって」
「私が持ってく。訓練は早めに終わったしネイトも着替えて」
カズサが倒れ、訓練に集中できないのを見越した上官は訓練を切り上げたとイリアから聞いた。
その後はカズサが倒れた話でもちきりになったが多くは訓練が早く終わって良かった、と若干喜んでいる。
イリアは汗を流し、着替えを持っていったらしく、俺も大勢がシャワーを浴びているなか、早めに体を汚れを落として医務室へ行った。
兵団服と違うゆったりとした服の腕が見え、普段着に着替えたのかイリアが付き添っている。
「イリア、お前もカズサが寝付くまで毎晩いただろ。俺が見ておくから休んでこい」
嫌だ。とイリアは言ってたが渋々折れて、あとで来るから。と医務室から出ていった。
医者が言うには「休んでおけば問題ない」と机にむかってさらさらと書き物をしている。
イリアもだいぶ疲れていたらしく夕食の時間になっても来ていない。
カズサは深く寝ている。
無防備なカズサの前髪を除けて額にソッと唇を落とす。カサついた肌がカズサの今を表しているようで切なくなった。
────
side Levi
まとわりつく香水が不快で仕方ない。
引き剥がしたいのを仕事だと言い聞かせ、女の好きなようにさせれば、上機嫌な女は資金援助の上乗せを餌に兵舎まで押しかけてくる始末。
エルヴィン、ミケやハンジ達も俺の負担を減らそうと、女の気を逸らそうとするが一向に俺から離れようとしない。
しまいには兵舎の視察を言い出した。
いろんな理由をつけ断るが押し通すのは得意で引き下がるどころか、興味を煽ってしまった。
この女は見かけと違う。
綺麗に整えられた外見やドレス、控えめな服飾品で飾りつけて儚げに振る舞っていてもそれは見せかけで中身は腐っている。
忌々しい出会いとなった夜会でも、要注意人物と近づかないようにしていたが向こうから馴れ馴れしく接し、資金援助を申し出た。
やんわりと固辞しても女の経済力と人脈をわざとらしく披露し、拒めばどうなるのかを匂わせてきた。
いつだって思い通りにしてきた強かな女の申し出を拒否することは端からみれば痛くもない腹を探られることだろう。
それから何が良いんだか俺に纏わり付く。
兵舎内を歩けば男どもが浮き足だって羨望の眼差しで見てくる。
それで満足する女なら扱いやすいが、俺達が女の裏側を調べるのと同じように女も俺達を調べている。
この女は欲しいものを思い通りにする為なら手を汚すのも躊躇わない。ただ信奉者に不満とも言えない不満を漏らすだけ。
勝手にそいつらが動き、結果は女の望むとおり。とんだ女狐だ。
自分の欲求は当たり前で巻き込まれる人間の気持ちは気にかける価値もない。邪魔になるなら壊せばいい。
本気でそう思っている。
俺に執着している女に万が一にも俺とカズサとの関係を知られたらカズサに危害を加える可能性が高い。
だから何も知らないカズサに傷つける言葉と態度で突き放した。
以降、顔をあわせてもカズサの視線はどこにあるのか、わからない。俺に知る資格も権利も、もうない。
女には付きまとわれるまま、心に空いたものを知られないように味気ない日々を過ごすだけ。
ふと、窓の外ををみればカズサが教官に話しかけ、メモを取っている姿が目に入った。つい目を向けると蛇のように腕を絡ませる女は何が面白いのか「ふふっ」と優雅な笑みを浮かべカズサを見定めるような目で見ているのが胸糞悪い。
「腰の機械?立体……、何とかって女の子も腰に着けてるのね。重くないのかしら?」
内心で立体機動装置を取り扱えなきゃ兵士になれねえよ。特にてめえはな。
しばらくは兵舎をうろつくことで満足していたが、今度は訓練をみたいと言い始めた。
さすがにエルヴィンと説得するが兵士長がついてるなら危険はないでしょう。と笑顔で切り返しやがる。
裏を返せば、このくらい出来ないなんて無能ね。と遠回しに言ってる訳だ。
表向き、怪我しないようにかろうじて訓練が見え、邪魔にならない場所を選んだ。
気合のはいった声は訓練が見える範囲なら風に運ばれ流れてくる。
眉をひそめる女は何を期待してたのやら。
まさか曲芸が見れるとでも思ってたのか。湧き上がる怒りを腹に沈めて兵舎に戻ると甘ったるい声でリヴァイに耳打ちする。
「今日は疲れたわ。邸で気分直しをしましょう?」
仲間が鍛錬している姿を見ているだけで疲れた、と宣う女からの誘いに吐き気がする。
「準備もあるから、そうね。夕食前には間に合わせてね」
乗ってきた馬車までエスコートするとカタコトと動き出し、つかの間の開放感に執務室への足取りも軽くなる。
ああ。あの女の邸に行く前に受け取っておこう。
医務室には壮年の医者が一人書物をしているがリヴァイの姿を見るとスッと奥の扉を開き入るように促す。
独特な薬品臭い部屋に長居するつもりはなく目的の薬を手に入れたらすぐに出ていくつもりだった。
「いつも言ってるが常用すると子種がなくなるぞ」
「忠告は有り難いが、ガキは好きじゃねぇ」
肩を竦め、鍵のかかった引き出しを開けると色ごとに分けられた包みを受け取る。
「最近は頻度が多いな。そうだ、ついでに団長の分も持って行ってくれるか」
無言で受け取ると「本来は非常時用に作ったんだがなぁ」と愚痴を零す。
それに答えず、用は済んだと兵士が使うベッドが並ぶ医務室を静かに出ていこうと前を見たとき、妙な感じに使用中のベッドのカーテンの隙間をソッと覗けば顔色の悪いカズサとカズサの額に口付ける男の横顔が目についた。
サッと目を逸らして医務室を出る際にしたり顔の医者が「若いってなあ、いいもんだな」とニヤニヤするのに答えず真っ直ぐエルヴィンがいる団長室へ行き、人払いをしてから受け取った包みを机に無言で置いた。
「ひどい顔だな」
「……」
包みを引き出しに入れたエルヴィンが正面から見据えてくる。
「これ以上の無理はしなくていい」
「そういう訳にもいかねえだろ」
「すぐに、とは言っていない。彼女の好みと嫌いな男のタイプはわかった。嫌いな男になれば自然と離れるだろう」
ククッと自嘲する笑みがこぼれる。
「あの女の嫌いな男はあいつが侍らせてる信奉者の男だ。お前は俺に歯の浮くような言葉と態度が取れると思ってんのか」
苦虫を噛み潰すエルヴィンに「用は済んだ」と言い残し団長室から自分の執務室の椅子にドサっと座った。
カズサに愛おしさを込めた男。俺が何度も口付けたカズサの額に違う男が口付けていた。
首を椅子に凭れかけ顔半分を手で覆い深呼吸を繰り返す。
(突き放したのは、俺だ。傷つくように愛想つかすように仕向けたのは俺だ)
あのとき泣くまいと瞳に力を込め、震える体を抑え出ていった後ろ姿。
追いかけ、抱きしめて、そうじゃないと囁きたかった。
ハッ。終わった事だ。カズサに懸想する男がいたって不思議じゃない。カズサだって……待て。カズサはなぜベッドで寝てた?
怪我をしたのか?
一刻も早く確認したいが、どの面下げて行く?
「カズサ」
一人の時だけは想いを込め彼女の名を呼ぶ。
本当にこんな形がカズサを守っているのか?
もっと違う……
トントン。さまよう思考を切り替え、入室の許可を出すと先程の医者が何枚かの書類を差し出してきた。
普段から不調のある兵士の様子は逐一報告させている。
(ちょうど良かった)
ペラペラと捲りながら何人か気になる兵士について観察と治療を頼む。
その中にカズサの報告も含まれていた。
「ああ、その子はだいぶ無理をするタチのようでね。不眠と食欲不振がたたって、弱っている。当面は要観察だねぇ」
「具体的にどう対応するんだ?」
「訓練は休んでまずは良質な睡眠、しかしなぁ」
「しかし、なんだ」
「睡眠薬を常用していたらしい。薬を飲まなくなった反動で不眠が続いてた可能性がある。栄養は少しずつ食べて量を増やせば問題ない」
「薬の入手経路は?」
「何人かが自分の名で入手していた」
もう一度、書類に目をやれば複数名が同じ時期に不眠を訴え睡眠薬の処方を受けている。
「こっちの管理不足だ。申し訳ない」
手のひらを医者にむけ、止める。
不足といえばそうだが、仕方ない。
調査兵団の兵士なら悲惨な記憶で眠れなくなるのはよくあること。
その夢から逃れたくて処方を希望する者は多い。
処方された後、どうなるかまで管理するのは無理がある。
「過ぎた事より、今後どうするかだ。不正な処方希望した奴らは、こっちで言い聞かせる。様子がおかしいやつには一旦処方は止めてくれ」
「わかった。できるだけ配慮してほしい」
パタン。扉が閉まると静かさが戻ってくる。
「カズサ……」
手渡されたリストを眺め、これからの事を考えエルヴィンの執務室へ向かった。
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